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[SEM34-04] 動的磁化の時間/周波数領域測定と岩石磁気への応用
キーワード:動的磁化, 岩石磁気, 磁気緩和, 周波数スペクトル, フーリエ変換
交流磁化率の広帯域周波数スペクトルから、SP/SD境界以下の微細磁性粒子のサイズ分布を推定する方法を、典型的な気候変動研究試料の中国黄土試料に適用したところ、古環境変化に対応した粒子サイズ変化を復元することができた(Kodama et al., 2014).同様の方法で火山岩試料を測定した結果、SPからMDにわたる磁性鉱物のサイズ分布や磁区構造を反映した周波数スペクトルが得られた(Kodama, 2013)。これらのパターンは基本的にデバイ型周波数スペクトルで表され、そのパターンは磁性粒子集団の諸性質(サイズ・保磁力・磁区構造など)を反映すると考えられる。一般に、このような周波数スペクトルを示す物理系は、時間領域でも測定することができる。例えば、試料に強いパルス磁場をかけて励起した磁化が自由減衰する過程を測定すればよい。岩石試料の場合、この減衰の時定数は磁化緩和時間に対応すると考えられる。線形応答理論によれば、時間領域のパルス応答と周波数領域のスペクトルは、フーリエ変換によって相互に変換可能である。したがって、磁化の自由減衰データから周波数スペクトルを計算し、逆に磁化率周波数スペクトルから磁場遮断後の自由減衰磁化を計算することもできる。本研究では、パルス後の自由減衰磁化を測定するために開発した装置(Kodama, 2015)を用いて代表的な火山岩試料を測定し、その結果を離散フーリエ変換することによって間接的に周波数スペクトルを求めた。この"パルス法"ならば、一回の測定に約10-3 sec、多数回繰り返してもスペクトル測定よりはるかに測定時間は短い。こうして得られたスペクトルのパターンや分散から、磁性粒子の磁区構造・サイズ分布・磁壁移動などを推定する方法を提案する。さらに、スペクトル法とパルス法それぞれの長所・短所、岩石磁気への応用などを議論する。