日本地球惑星科学連合2015年大会

講演情報

ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-TT 計測技術・研究手法

[S-TT54] 合成開口レーダー

2015年5月25日(月) 18:15 〜 19:30 コンベンションホール (2F)

コンビーナ:*山之口 勤(一般財団法人 リモート・センシング技術センター)、小林 知勝(国土交通省国土地理院)、宮城 洋介(防災科学技術研究所)

18:15 〜 19:30

[STT54-P06] 中央アジア・天山山脈北部地域における山岳永久凍土の空間分布

*山村 祥子1奈良間 千之2冨山 信弘3田殿 武雄4 (1.新潟大学大学院自然科学研究科、2.新潟大学理学部自然環境科学科、3.財団法人リモート・センシング研究センター、4.宇宙航空研究開発機構)

キーワード:差分干渉SAR解析, 山岳永久凍土, 岩石氷河, 天山山脈

天山山脈は中央アジアの乾燥・半乾燥地域における重要なウォータータワーとして知られており,山脈内には山岳氷河や山岳永久凍土という形で水資源が存在している.これらの水貯蔵量を見積もる上で,山岳氷河や山岳永久凍土の現状把握は不可欠であるが(Sorg et al., 2012),天山山脈北部地域においては山岳永久凍土の空間分布の把握は未だ不十分である.そこで本研究では,山岳永久凍土の存在指標となる岩石氷河の空間分布・形態分類・流動から,天山山脈北部キルギス・アラトー山脈の山岳永久凍土環境を明らかにした.
現地調査・空中写真判読を用いて形態的特徴を基に認定した岩石氷河に差分干渉SARを適用し,その地表面の変動から,岩石氷河を内部に永久凍土を持つ現成型・停滞型岩石氷河と化石型岩石氷河に分類した.上記の地表面変動解析の検証として,2013-2014年夏季に現地でGPS定点観測を実施し,氷河起源タイプの岩石氷河上で平均流速75cm/yrの斜面下方への地表面流動が観測された.観測サイトは,地温・気温条件から見ても,永久凍土が存在しうる環境であるといえる.
現成型・停滞型岩石氷河の分布高度およびそれらの流動から,キルギス・アラトー山脈では不連続な永久凍土帯が山脈北面2900m以上,山脈南面3400m以上に分布していることが明らかになった.加えて,夏季三ヶ月以内の短期間差分干渉SAR解析から,岩石氷河内部の山岳永久凍土の近年の融解に伴う局所的な沈降を山脈北面3300-3500m付近で確認した.さらに,現成型・停滞型と認定した岩石氷河のうち約半数が,氷河起源タイプの岩石氷河だった.当日は,これら氷河起源タイプの岩石氷河の形成条件に関しても報告をおこなう予定である.