日本地球惑星科学連合2015年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-PS 惑星科学

[P-PS21] 惑星科学

2015年5月24日(日) 09:00 〜 10:45 A02 (アパホテル&リゾート 東京ベイ幕張)

コンビーナ:*黒澤 耕介(千葉工業大学 惑星探査研究センター)、濱野 景子(東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻)、座長:濱野 景子(東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻)、黒澤 耕介(千葉工業大学 惑星探査研究センター)

10:33 〜 10:36

[PPS21-P02] 鉄質天体の衝突破壊に関する実験的研究:破壊の温度依存性

ポスター講演3分口頭発表枠

*小川 諒1中村 昭子1 (1.神戸大学大学院理学研究科)

キーワード:鉄隕石, 衝突, ラブルパイル

はじめに: 鉄隕石はFeとNiからなる合金であり、いくつかはウィドマンシュテッテン構造といった特異な構造を持ち、また低温下では金属特有の延性が弱まり脆性的な振る舞いを見せる。こういった鉄隕石物質は分化天体のコアとして形成されると考えられており、鉄隕石物質は分化天体の形成、特に惑星形成の重要な手がかりとなると思われる。鉄隕石物質は分化天体内で形成されるものであるが、分化天体の大規模な衝突があれば宇宙空間へ放出され、小さな鉄質の天体になると考えられる。しかしそういった鉄質小天体の存在はまだはっきり確かめられていない。その候補天体とされるM型小惑星では近年の観測から、低密度なものがあることがわかってきた。
こういった背景から、鉄質小天体は一枚岩だけではなく、鉄破片の集合体“鉄質ラブルパイル天体”の形態をとる可能性もある。そのため、鉄隕石物質が衝突破壊によって再集積可能なのか調べる必要がある。そこで本研究では、ラブルパイル形成に関する衝突破壊の基礎データ収集を目的とし、破壊の程度と破片の放出速度の温度依存性を調べるために標的温度が298Kと150~170Kの場合の衝突破壊の様子を比較した。
 
実験方法: 標的には円柱形のSS400または鉄隕石、弾丸には円柱形のSUSまたはナイロン球を使用した。弾丸の射出には一段式縦型火薬銃と二段式軽ガス銃を用いた。前者はSUSを速度600~1200m/sで、後者はナイロン球を速度6800~7300m/sで標的に衝突させた。また二段式軽ガス銃の実験については室温標的でのみ行い、火薬銃の実験では室温298Kの標的と、液体窒素を用いて低温150~170Kにした標的で衝突実験を行った。破壊後、破片速度分布・破片質量累積分布・エネルギー密度と最大破片質量割合の関係を比較し、温度が及ぼす影響を調査した。破片速度は高速度カメラの画像から求めた。そして、温度だけでなく標的(SS400)のアスペクト比(高さ/直径)を0.37,1と変化させ、その破壊への影響についても調べた。

結果: 測定した破片速度は20~900m/sであり、温度によらず130m/s(鉄質小天体の有力候補Psycheの脱出速度)を超えない破片が多数存在するという結果になった。また、“破片質量累積分布”、“エネルギー密度と最大破片質量割合の関係”については温度による違いが見られた。
破片質量累積分布に関して、元の標的質量の1%未満の破片の占める割合を調べたところ室温では0.0012~0.18、低温では0.024~0.25と、低温で小さな破片の占める割合が大きくなった。また、アスペクト比が0.37の場合、破壊に必要な単位標的質量あたりのエネルギーは低温の方が小さくなるという結果が得られ、これは先行研究では見られなかった結果である。