日本地球惑星科学連合2015年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-EM 太陽地球系科学・宇宙電磁気学・宇宙環境

[P-EM27] 大気圏・電離圏

2015年5月26日(火) 14:15 〜 16:00 A01 (アパホテル&リゾート 東京ベイ幕張)

コンビーナ:*大塚 雄一(名古屋大学太陽地球環境研究所)、津川 卓也(情報通信研究機構)、川村 誠治(独立行政法人 情報通信研究機構)、座長:川村 誠治(独立行政法人 情報通信研究機構)、大塚 雄一(名古屋大学太陽地球環境研究所)

14:30 〜 14:45

[PEM27-19] 地震により生じた中性大気波動のシミュレーションによる伝搬特性解析

*吉川 晃平1清水 友貴1中田 裕之1鷹野 敏明1松村 充2 (1.千葉大学大学院工学研究科、2.国立極地研究所)

キーワード:地震, 中性大気波動, 数値シミュレーション, 電離圏擾乱

地震発生時に発生する音波や大気重力波が電離圏擾乱を引き起こしていることがHFドップラやGPSを利用した全電離圏粒子数(TEC)の観測によって明らかになっている。本研究では数値シミュレーションを用いて中性大気波動の伝搬メカニズムを明らかにし、地面の変動と電離圏擾乱の関連を明らかにすることが目的である。本研究では中性大気の支配方程式を数値的に解くことによって中性大気波動の時間発展の計算を行った。
まず、シミュレーションで用いている人工粘性が与える影響の検討を行った。圧縮性流体では音速を超えると衝撃波が発生する。衝撃波は数値的には不連続な面であるが、実際は分子の自由行程程度の厚さがある。シミュレーションで数値粘性を加えずそのまま計算を行うと数値発散が発生するため、Von-Neumann型の人工粘性を加えることによって数値発散を抑えている。人工粘性を加えるにあたり、人工粘性係数を適切な値に設定する必要があるため、エネルギー密度保存則から減衰を引くことによって求められる理論式(Chum et al., 2012)と人工粘性係数を変化させた場合のシミュレーション結果との比較を行った。その結果、この人工粘性を大きくするとシミュレーション結果の振幅は小さくなった。また、入力として与えている地震動の周期によって理論式と一致した人工粘性係数は異なり、人工粘性係数を変化させる必要があることが分かった。次に、音波が伝搬する先端部分に長波長の部分が存在し、その部分は理論式よりも振幅が大きく、定常状態の波よりも高い高度(>300 km)まで減衰していないことが分かった。音波の伝搬する波の先端部分に長波長の部分が存在し、高い高度まで減衰しない原因を検討するため、時間波形の検討を行った。高高度では入力周波数よりも低い周波数成分があることが分かった。用いた理論式の高度毎の周波数特性を検討すると、低域通過特性があり、高度があがるにつれ減衰し始める周波数が徐々に低周波側に移動していることから、高高度では低周波成分が支配的となっていると考えられる。エネルギー密度保存則から高高度では振幅が大きくなるが、高周波成分は粘性や熱伝導などの原因により減衰するためこのような特性となる。
これらの検討により、入力の地震動の周期によって適切な人工粘性係数の値を設定する必要があることが分かった。また、音波が伝搬する先端部分に、長波長の部分があり、その部分では入力の周波数成分よりも低周波の成分が存在した。その低周波成分と大気の低域通過特性により、振幅が理論式よりも大きくなり、定常状態よりも高い高度まで伝搬していることが分かった。