17:49 〜 17:52
[HDS06-P05] 鉛直振動下における斜面崩壊の小型実験
ポスター講演3分口頭発表枠
キーワード:斜面崩壊, 地震, 振動実験, 粉粒体, 加速度, 周波数
土砂から成る斜面は地震によって土砂崩れが誘発される。地震動の代表的なパラメータとして加速度、周波数、継続時間があり、これらのパラメータに崩壊現象が依存するはずである。振動による斜面崩壊の実験は土木工学の分野で多く行われてきた。近年では粉粒体物理学の観点からも、振動実験が行われている(Rubin et al. 2006, Katz and Aharonov, 2006)。しかしパラメータを数桁変えて、それらに対する依存性を詳しく調べたモデル実験は少ない。本研究では粒子斜面のモデルを用いて加速度と周波数をそれぞれ2、3桁変えた振動実験を行い、崩壊の臨界加速度、崩壊の速度、崩壊様式のパラメータ依存性を調べ、粉粒体物理学の観点から斜面崩壊現象を理解することを目的とする。
実験はホッパーを取り付けたアクリル容器に、ガラスビーズを封入した実験セルと、振動台を用いて行う。ホッパー内部に溜められたビーズは隙間から勢い付かずに流れ落ち、再現性の良い斜面を容器内壁に形成することができる。加速度センサーをアンプを介してオシロスコープにつなぐ。振動調節機の周波数、加速度を設定して60秒間の鉛直振動を加える。実験パラメータとして、周波数は10Hz、100Hz、1000Hz、5000Hzの4通り、また振動加速度の重力加速度に対する比である無次元数Γ=a⁄g(a:振動加速度(m⁄s2)、g=9.8(m⁄s2))を0.08~5の範囲で変えて行う。崩壊の様子はカメラによって動画を撮影し、画像解析を行う。
斜面の初期形成角度はθ=23.4°±0.5°(平均値±標準偏差)であった。ガラスビーズの安息角が約24°であるため、およそ安息角に近い値である。実験を行ったところ、加速度依存性と周波数依存性の両方を認めることができた。加速度を変えることによる斜面の振る舞いは周波数によって異なり、「静止」、「崩壊」、「対流」、「跳躍」の4つのレジームに分けることが出来る。100Hzでは崩壊が急激で短時間で停止する。一方、1000Hzでは崩壊が少しずつ進行し、長時間持続する。観察される崩壊様式と0~5(sec)における傾斜変化((dθ⁄dt))の値を用いてレジームダイアグラムを作成した。ここで振動開始から60秒後における傾斜変化が0.02°以上の場合を「崩壊」と定義した。(dθ⁄dt)は0~5(sec)の間は臨界加速度が約100Hzで極小値となるが、時間の経過に伴い、極小となる周波数が約1000Hzへシフトする。レジームダイアグラムにおける臨界加速度の極小値を説明するために、振動1周期あたりのエネルギーであるShaking Strength(S)と、振動が粒子に与える力の変化であるJerk(J)という2つの無次元数を導入する(Yasuda & Sumita, 2014)。S=(A^2 (2πf)^2)⁄gd 、J=(A(2πf)^3)⁄(g⁄(2d⁄g)^(1⁄2) ) であり、ここでAは最大振幅(m)、fは周波数(Hz)、dは粒径(m)である。崩壊開始の臨界加速度Γが~100Hzで極小となることは、顕著な崩壊が起きるためにはΓ>0.3、S>3.0×10^(-5)とJ>0.3の3つの条件が必要であると考えると説明ができる。次に「跳躍」レジームを考える。粒子が振動台から上方向に跳躍した時の振動台に対する最大変位z’を計算すると高Γ、低fで大きくなることが分かる。「跳躍」レジームはz'>10dによって説明できる。
以上の結果から、粉粒体斜面の崩壊様式と崩壊速度は加速度ばかりでなく、周波数・継続時間に強く依存することが分かった。地震の周波数は0.1~10Hz程度の幅を持つ。実験と同様に卓越周波数によって多様な崩壊が起き、また崩壊が起きるための臨界加速度が最小になる周波数帯が存在する可能性がある。多様性の一つとして見つかった「跳躍」レジームは地震動の非対称な上下動の原因として提案された「トランポリン効果」(Aoi et al. 2008)と対応している可能性がある。また本実験は周波数が異なれば、より低加速度であっても最終的な崩壊による傾斜変化が大きくなる可能性があることを示唆している。地震による斜面崩壊の危険性を評価する際には可能な地震の周波数範囲すべてを考慮することが大切である。
文献
Aoi et al. (2008). Science, 322, 727-730.
Katz and Aharonov(2006). Earth Planet. Sci. Lett. 247 280?294
Rubin et al(2006). Phys. Rev. E 74, 051307
Yasuda and Sumita(2014). Prog. Earth Planet. Sci. 1:13.
実験はホッパーを取り付けたアクリル容器に、ガラスビーズを封入した実験セルと、振動台を用いて行う。ホッパー内部に溜められたビーズは隙間から勢い付かずに流れ落ち、再現性の良い斜面を容器内壁に形成することができる。加速度センサーをアンプを介してオシロスコープにつなぐ。振動調節機の周波数、加速度を設定して60秒間の鉛直振動を加える。実験パラメータとして、周波数は10Hz、100Hz、1000Hz、5000Hzの4通り、また振動加速度の重力加速度に対する比である無次元数Γ=a⁄g(a:振動加速度(m⁄s2)、g=9.8(m⁄s2))を0.08~5の範囲で変えて行う。崩壊の様子はカメラによって動画を撮影し、画像解析を行う。
斜面の初期形成角度はθ=23.4°±0.5°(平均値±標準偏差)であった。ガラスビーズの安息角が約24°であるため、およそ安息角に近い値である。実験を行ったところ、加速度依存性と周波数依存性の両方を認めることができた。加速度を変えることによる斜面の振る舞いは周波数によって異なり、「静止」、「崩壊」、「対流」、「跳躍」の4つのレジームに分けることが出来る。100Hzでは崩壊が急激で短時間で停止する。一方、1000Hzでは崩壊が少しずつ進行し、長時間持続する。観察される崩壊様式と0~5(sec)における傾斜変化((dθ⁄dt))の値を用いてレジームダイアグラムを作成した。ここで振動開始から60秒後における傾斜変化が0.02°以上の場合を「崩壊」と定義した。(dθ⁄dt)は0~5(sec)の間は臨界加速度が約100Hzで極小値となるが、時間の経過に伴い、極小となる周波数が約1000Hzへシフトする。レジームダイアグラムにおける臨界加速度の極小値を説明するために、振動1周期あたりのエネルギーであるShaking Strength(S)と、振動が粒子に与える力の変化であるJerk(J)という2つの無次元数を導入する(Yasuda & Sumita, 2014)。S=(A^2 (2πf)^2)⁄gd 、J=(A(2πf)^3)⁄(g⁄(2d⁄g)^(1⁄2) ) であり、ここでAは最大振幅(m)、fは周波数(Hz)、dは粒径(m)である。崩壊開始の臨界加速度Γが~100Hzで極小となることは、顕著な崩壊が起きるためにはΓ>0.3、S>3.0×10^(-5)とJ>0.3の3つの条件が必要であると考えると説明ができる。次に「跳躍」レジームを考える。粒子が振動台から上方向に跳躍した時の振動台に対する最大変位z’を計算すると高Γ、低fで大きくなることが分かる。「跳躍」レジームはz'>10dによって説明できる。
以上の結果から、粉粒体斜面の崩壊様式と崩壊速度は加速度ばかりでなく、周波数・継続時間に強く依存することが分かった。地震の周波数は0.1~10Hz程度の幅を持つ。実験と同様に卓越周波数によって多様な崩壊が起き、また崩壊が起きるための臨界加速度が最小になる周波数帯が存在する可能性がある。多様性の一つとして見つかった「跳躍」レジームは地震動の非対称な上下動の原因として提案された「トランポリン効果」(Aoi et al. 2008)と対応している可能性がある。また本実験は周波数が異なれば、より低加速度であっても最終的な崩壊による傾斜変化が大きくなる可能性があることを示唆している。地震による斜面崩壊の危険性を評価する際には可能な地震の周波数範囲すべてを考慮することが大切である。
文献
Aoi et al. (2008). Science, 322, 727-730.
Katz and Aharonov(2006). Earth Planet. Sci. Lett. 247 280?294
Rubin et al(2006). Phys. Rev. E 74, 051307
Yasuda and Sumita(2014). Prog. Earth Planet. Sci. 1:13.