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[HDS25-03] 北アルプス上高地,長塀尾根の二重山稜間の線状凹地を埋積する堆積物の層相と年代
キーワード:山体重力変形地形, 二重山稜, 長塀尾根, 上高地
北アルプス南部,上高地北東の徳沢から蝶ヶ岳に至る長塀尾根上には多くの二重山稜地形があり,その多くは山体重力変形地形であると解釈される.これらの地形の発達過程を明らかにするために,二重山稜間の線状凹地を埋積する堆積物をハンドオーガ―ボーリングにより掘削し,層相の記載と年代の推定を行なった.主たる掘削地点は,登山道沿いの標高約2000mのA地点と約2050mのB地点で,長塀尾根下部の樹林帯に位置する.両地点とも多重山稜地形をなし,その間には凹地あるいは堆積物で埋積された平坦面が認められ,ボーリング掘削は堆積物が最も厚いと推定される平坦面で行い,A, B両地点で長さ80?160cmの計9本のコアを得た.得られたコアの層相は,腐植土・有機質泥層からなる上部層と黄褐色シルト層(一部礫質)からなる下部層,およびそれらに挟まれる灰色泥?シルト層からなる点で概ね共通しているが,それぞれの層の厚さは掘削地点により異なる.A, B両地点で掘削されたそれぞれ1本のコアについて,テフラ分析を行なった.粒径62-200 マイクロメーターのフラクションの組成は,砕屑粒子,植物片,火山起源と思われる自形性結晶,火山ガラスなどからなる.火山ガラスはバブルウォール型とパミス型が混在しているが,バブルウォール型火山ガラスはA地点の長さ160cmのコアでは深度87-92cm付近から,B地点の長さ150cmコアでは深度62-72cm付近から出現する.これらの火山ガラスの屈折率は1.510付近に集中し,鬼界アカホヤテフラの屈折率と一致する.含まれる植物遺体については,現在,放射性炭素同位体年代を測定中で,発表では報告できる予定である.