11:45 〜 12:00
[PPS21-36] 月惑星探査における年代その場計測を目指した開発
月や火星に残された地質記録の絶対年代を決定することができれば、惑星進化に関する重要な知見が得られるに違いない。発表者らはこれまで、惑星着陸探査において岩石のカリウム・アルゴン年代をその場計測することを目指し、原理の実証実験を進めてきた。一方で、惑星探査機に計測器を搭載するには、装置の小型軽量化や熱設計を含む工学面の開発が不可欠である。そこで本発表では、探査機搭載を目指して行ってきた開発の進捗について報告する。
第一に、年代計測装置パッケージの構成と各機器の配置を決定し、全体の重量や消費電力、および計測手順を明確化した。
第二に、試料採取と受け渡しに関する機構を決定した。直線移動を避け、回転移動のみを用いるようにした。また、真空系へのダストの侵入を防止するような配置を考案した。
第三に、以下に述べる真空シール部の課題に重点的に取り組んだ。岩石から抽出される微量のアルゴンガスを計測するためには、試料を真空容器に入れ、これを高真空に保つ必要がある。そのような計測は、実験室では金属製のガスケットを用いて行われており、NASAの火星探査車Curiosityに搭載されたSAM(Sample Analysis at Mars)でも、銅のガスケットが使用されている。しかし、重量や電力が大きく制限される惑星探査において、金属の塑性変形に必要なトルクを発生させることは容易なことではない。もし、ゴム製のOリングを使ったアルゴン分析が可能になれば、真空容器の開閉が非常に容易になる。そのような機構は「ひさき」を含む地球周回衛星で既に実用化されているため、技術的な実現可能性が飛躍的に高まることとなる。そこで本研究では、金属ガスケットの代わりにバイトンおよびNexus SLT(低温耐性のあるOリング)を使って、アルゴンのブランク計測を行った。質量分析装置は、従来の原理実証実験で使われてきたものを用いた。その結果、周囲が真空である月では、事前に充分なベーキングを施しておけば、バイトンゴムを使っての計測が可能であることが分かった。また、周囲が約6 hPaの火星でも、ダブルOリングを用いた差動排気を用いることで、充分にアルゴンのブランクを低くできることが明らかになった。
以上の三つの開発を通じて、探査機搭載に向けた年代計測装置の姿が見えてくるとともに、ガス分析に関連する大きな技術課題の一つが克服された。
第一に、年代計測装置パッケージの構成と各機器の配置を決定し、全体の重量や消費電力、および計測手順を明確化した。
第二に、試料採取と受け渡しに関する機構を決定した。直線移動を避け、回転移動のみを用いるようにした。また、真空系へのダストの侵入を防止するような配置を考案した。
第三に、以下に述べる真空シール部の課題に重点的に取り組んだ。岩石から抽出される微量のアルゴンガスを計測するためには、試料を真空容器に入れ、これを高真空に保つ必要がある。そのような計測は、実験室では金属製のガスケットを用いて行われており、NASAの火星探査車Curiosityに搭載されたSAM(Sample Analysis at Mars)でも、銅のガスケットが使用されている。しかし、重量や電力が大きく制限される惑星探査において、金属の塑性変形に必要なトルクを発生させることは容易なことではない。もし、ゴム製のOリングを使ったアルゴン分析が可能になれば、真空容器の開閉が非常に容易になる。そのような機構は「ひさき」を含む地球周回衛星で既に実用化されているため、技術的な実現可能性が飛躍的に高まることとなる。そこで本研究では、金属ガスケットの代わりにバイトンおよびNexus SLT(低温耐性のあるOリング)を使って、アルゴンのブランク計測を行った。質量分析装置は、従来の原理実証実験で使われてきたものを用いた。その結果、周囲が真空である月では、事前に充分なベーキングを施しておけば、バイトンゴムを使っての計測が可能であることが分かった。また、周囲が約6 hPaの火星でも、ダブルOリングを用いた差動排気を用いることで、充分にアルゴンのブランクを低くできることが明らかになった。
以上の三つの開発を通じて、探査機搭載に向けた年代計測装置の姿が見えてくるとともに、ガス分析に関連する大きな技術課題の一つが克服された。