日本地球惑星科学連合2015年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS21] 南大洋・南極氷床が駆動する全球気候・生態系変動

2015年5月27日(水) 14:15 〜 16:00 301A (3F)

コンビーナ:*池原 実(高知大学海洋コア総合研究センター)、野木 義史(国立極地研究所)、大島 慶一郎(北海道大学低温科学研究所)、座長:池原 実(高知大学海洋コア総合研究センター)

15:36 〜 15:39

[MIS21-P03] 固体地球と氷床の相互作用

ポスター講演3分口頭発表枠

*福田 洋一1土井 浩一郎2青山 雄一2菅沼 悠介2奥野 淳一2 (1.京都大学大学院理学研究科、2.国立極地研究所)

キーワード:氷床, 海水準変動, GIA, 氷床融解史, 東南極, 粘弾性構造

南極氷床は、海水準上昇や海洋循環を通して全球的環境変動と密接に関係した、将来環境予測に不可欠な地球システムの構成要素である。しかしながら、従来から実施されている地形学的・地質学的調査、測地観測や衛星重力・高度計データに基づく氷床変動の研究では、氷床荷重に対する固体地球の粘弾性応答(Glacial Isostatic Adjustment: GIA)の不確定性が大きいため、今後の研究進展にとってGIAの影響を正確に知ることが、喫緊の最重要課題の一つとなっている。一方、GIAは、地球内部の粘弾性的構造を知るための貴重な情報を与えてくれるものであり、氷床変動に対する固体地球のレスポンスとしてGIAの影響を観測的に知ることは、地球の内部構造の研究にとっても重要な貢献となる。このようにGIAをキーワードとした固体地球と氷床の相互作用の研究は、環境変動予測といった実生活に直結した問題解決とともに、地球の深部構造の探究といった純粋に科学的な興味からも重要な研究テーマである。
本研究では、以上の点に鑑み、GIAモデルを拘束する地上データに乏しい東南極の内陸山地地域や沿岸地域で、広範な地形地質調査や測地観測を実施するとともに、SLR(Satellite Laser Ranging)やVLBI(Very Long Baseline Interferometer)など昭和基地での高精度な宇宙測地観測を実施し、GIA に伴う固体地球の応答や海水準変動の高精度な計測を試みる。また、ROV(Remotely operated Vehicle)やAUV(Autonomous Underwater Vehicle)など新技術を取り入れた大陸棚海底での観測、海底掘削で得られる海底コア解析や衛星データ解析、各種のモデル計算などと連携することにより、高精度なGIAモデルを構築し、最終氷期以降の氷床融解史や地球内部の粘弾性構造を解明する。
これらの目的を達成するための具体的な研究項目としては、以下を計画している。
(1)東南極でこれまで調査の及ばなかったやまと山脈での現地氷河地形や地質調査、重力やGNSS(Global Navigation Satellite System)による測地観測、
(2)既存の現地調査データに加え、衛星データ解析などにより近年あらたに整備されつつあるDEMデータを利用した、セール・ロンダーネ山地、ベルジカ山地、およびやまと山脈における氷河地形の再評価、
(3)昭和基地での海水位も含めた測地観測の継続実施、
(4)宗谷海岸およびプリンスオラフ海岸、やまと山脈の複数の露岩上での絶対重力測定とGNSS観測、
(5)沿岸露岩地域での、無人ヘリを用いた詳細航空測量による微小氷河地形解析、
(6)基盤岩ボーリング・モレーン試料の表面露出年代測定による風化を考慮した氷床後退過程復元の高精度化、
(7)InSAR、衛星重力、高度計データ処理により、現在の氷床変動、海水準変動等の精密モニタリング。
最終的には、これらの観測やデータ解析と各種のモデリングを組み合わせることにより、過去数100 万年間の氷床変動史の復元や未来の全球的環境変動予測モデルの精度向上を目指している。
講演では、関連研究のレビューならびに今後の研究計画の概要について報告する。