日本地球惑星科学連合2015年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-CG 固体地球科学複合領域・一般

[S-CG57] 変動帯の構造・進化とダイナミクス

2015年5月27日(水) 14:15 〜 16:00 A06 (アパホテル&リゾート 東京ベイ幕張)

コンビーナ:*竹下 徹(北海道大学大学院理学院自然史科学専攻)、佐藤 比呂志(東京大学地震研究所地震予知研究センター)、尾鼻 浩一郎(海洋研究開発機構 地震津波海域観測研究開発センター)、西村 卓也(京都大学防災研究所)、深畑 幸俊(京都大学防災研究所)、加藤 愛太郎(名古屋大学大学院環境学研究科)、武藤 潤(東北大学大学院理学研究科地学専攻)、佐藤 活志(京都大学大学院理学研究科地球惑星科学専攻)、小平 秀一(海洋研究開発機構 地球内部ダイナミクス領域)、鷺谷 威(名古屋大学減災連携研究センター)、石山 達也(東京大学地震研究所)、松原 誠(防災科学技術研究所)、池田 安隆(東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻)、座長:蔵下 英司(東京大学地震研究所)

15:33 〜 15:36

[SCG57-P03] 海底地震計を用いた房総沖プレート沈み込み帯の地震波速度構造

*河野 昭博1佐藤 利典1篠原 雅尚2望月 公廣2山田 知朗2植平 賢司3眞保 敬3町田 祐弥4日野 亮太5東 龍介5 (1.千葉大学大学院理学研究科、2.東京大学地震研究所、3.防災科学技術研究所、4.海洋研究開発機構、5.東北大学大学院理学研究科)

キーワード:房総沖, 速度構造, フィリピン海プレート

房総半島沖合には南に相模トラフ、東に日本海溝があり、太平洋プレート(PAC)、フィリピン海プレート(PHS)、北米プレート(NA)が互いに接する三重会合点が南東に位置している。PACはNA・PHSの下へ沈み込み、PHSはNAの下へ沈み込んでいる。この2つの海洋プレートの沈み込みによって、関東地方周辺では1677年の延宝房総沖地震や、1703年の元禄関東地震、1923年の大正関東地震、房総沖スロースリップイベントなどの様々な地震学的イベントが発生している。これらイベントを理解するためには関東周辺の地下構造を知る必要があり、自然地震、人工地震を用いて関東地方の地下構造を推定した研究が過去に数多く行われてきた。
自然地震を用いた手法では、地震計の大半が陸域に設置されているという事と、房総沖合における地震活動が低調であるため、詳細な地下の構造を推定するには限界がある。また、人工地震を用いた構造探査も実施されているが、依然として明らかになっていない領域が多いのが現状である。この状況を改善するため、2009年7月30日から8月4日にかけて、房総半島南東沖に長さおよそ200㎞の測線、およびその測線上に海底地震計(OBS)が設置され、地震波構造探査が行われた。
本研究では、取得されたエアガン発震データを漸進的モデル改良法(Sato and Kenett, 2000)、屈折波初動トモグラフィー(FAST)(Zelt and Barton, 1998)を用いて2次元地震波速度構造を求めた。
これまでのPHSに関する研究ではPHS上面のP波速度が5 km/s程度と推定されているので、それを参考に本研究結果ではおよそ5.0 km/sの所にPHS上面を表す線を引いた。その結果PHS上面が東に緩やかに傾斜している様子が見られると共に、房総半島南端付近、海水面からの深さ4 ㎞において、東西幅およそ35 ㎞の、P波速度が周囲よりも速い領域が見られた。
フィリピン海プレート上面の深さはNakahigashi et al.(2012), Kimura et al.(2009) において求められたものとも調和的であった。更にフィリピン海プレート上面の深さを同海域において推定した他の先行研究の結果と本研究結果を比較したところ、房総半島沖合では深さ10 ㎞の上面は相模トラフにほぼ沿うように分布している一方で、15 ㎞の上面はおおよそ東西方向に、20 ㎞の上面は房総半島北東沖に分布しているように見える。この事から、フィリピン海プレートは陸側から房総半島の沖合にかけて、徐々に沈み込む傾斜が緩やかになっていると推察される。
P波速度が大きい領域の東西幅、およびその位置は、Tsumura et al.(2009)で存在が指摘されていたフィリピン海プレート上面の盛り上がり(Bump)のものと概ね一致する。このBumpの中心部ではP波速度が6 km/sを超えており、これは潜り込んだ海山を示すと考えられ、Tsumura et al.(2009) の結果を支持するものとなった。

謝辞
本研究の遂行にあたり、2009年7月から8月にかけて実施された洋上構造探査に白鳳丸を使用させて頂きました。船長以下乗組員の方々に感謝いたします。またその翌年OBSの回収を行った(株)新日本海事(現(株)深田サルベージ建設)の新潮丸の船長以下乗組員の方々にも心から御礼申し上げます。
また、本研究は文部科学省による「地震及び火山噴火予知のための観測計画」の支援を受けました。