日本地球惑星科学連合2015年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-GC 固体地球化学

[S-GC50] 固体地球化学・惑星化学

2015年5月25日(月) 14:15 〜 16:00 102A (1F)

コンビーナ:*下田 玄(産業技術総合研究所地質調査総合センター)、鈴木 勝彦(独立行政法人海洋研究開発機構・地球内部ダイナミクス領域)、山下 勝行(岡山大学大学院自然科学研究科)、座長:鈴木 勝彦(独立行政法人海洋研究開発機構・海底資源研究開発センター)、下田 玄(産業技術総合研究所地質調査総合センター)

15:00 〜 15:15

[SGC50-04] 地球全ケイ酸塩のハフニウム同位体進化:隕石ジルコンからの証拠

*飯塚 毅1山口 能央1日比谷 由紀1アメリン ユーリー2 (1.東京大学、2.オーストラリア国立大学)

キーワード:地球全ケイ酸塩, ジルコン, ハフニウム同位体, 地殻ーマントル分化, ユークライト, 初期太陽系

176Lu-176Hf放射壊変系列は,地球の地殻ーマントル分化の時間スケールやメカニズムを制約するのに広く用いられている.しかし,Lu-Hf同位体データを正確に解釈するには,地球のケイ酸塩部分全体(Bulk Silicate Earth: BSE)のHf同位体進化を知る必要がある.LuとHfは共に難揮発性かつ親石性元素であるため,BSEのHf同位体進化曲線は,未分化隕石コンドライトの現在の176Hf/177Hf及び176Lu/177Hfから推定されてきた.しかし,変成作用時のLuとHfの再分配により,コンドライト中のこれらの同位体比は非常に大きな変動を示すため,現在用いられているBSEモデルの176Hf/177Hf及び176Lu/177の値の妥当性を検証する必要がある.さらに近年,太陽系初期に光励起を介した176Lu壊変の加速がコンドライト中で進んだとする仮説が提唱されており,この仮説が正しければコンドライト隕石のLu-Hf同位体組成はBSEのそれを反映しない.
 本研究では,隕石中に含まれるジルコン鉱物の高精度Lu-Hf同位体分析を行った.ジルコンは変成作用の影響を受けづらく,非常に低いLu/Hfをもつために,結晶化時のHf同位体組成を保持できる.そこで本研究では,ユークライト隕石に含まれる初期太陽系に結晶化したジルコンを用いて,太陽系の初生176Hf/177Hfを決定した.また我々は,この太陽系初生176Hf/177Hfを用いて,コンドライト中の176Lu壊変率が太陽系史を通して一定であったことを示し,さらに,太陽系形成時のLu-Hf同位体組成を保持している最も初生的なコンドライト隕石を同定することに成功した.本研究で得られた新しいBSEのLu-Hf組成(176Hf/177Hf = 0.282793 +/- 11; 176Lu/177Hf = 0.0338 +/- 1)から,地球の冥王代ジルコンのHf同位体組成は45億年前以前の地球ケイ酸塩分化イベントを反映していることが明らかになった.