14:45 〜 15:00
[SVC47-14] 有珠山・外輪山溶岩のマグマプロセス
キーワード:有珠山, 外輪山溶岩, マグマプロセス, 下部地殻
有珠火山の主要な山体は、今から1~2万年前に活動した玄武岩~安山岩質の外輪山溶岩によって形成された。そしてその後の長い休止期を経て、1663年以降、珪長質な火山活動が断続的に起きている。有珠山のマグマプロセスについては、例えばTomiya and Takahashi (1995) やMatsumoto and Nakagawa (2010) などによって歴史時代の珪長質マグマを対象とした研究は数多く行われている一方で、外輪山溶岩については、有珠火山のマグマ供給系やその変遷の理解に重要であるにもかかわらず、あまり検討されていない。これらの中で、大場 (1964) やFujimaki (1986) はマグマプロセスについての検討を行い、結晶分化作用が支配的であったと結論づけている。しかしながら、これらの研究では解析試料数が限られており、また放射性同位体の制約に基づく検討はほとんど行われていない。そこで本研究では、外輪山溶岩を対象として岩石学的・地球化学的解析を詳細に行うことにより、マグマプロセスを明らかにすることを目的とする。
本研究では、外輪山から約90個の試料を採取して全岩主要元素組成の分析を行い、さらにそれらのうちの約40試料、および下部地殻物質として新たに一ノ目潟から採取した角閃石岩試料について、微量元素濃度分析と鉛同位体比分析を行った。外輪山試料の全岩SiO2量は49.6-54.9 wt.%であり、それらは大きく玄武岩組成(SiO2<52.0 wt.%)のものと安山岩組成(SiO2>52.4 wt.%)のものに分けられる。斑晶量は10-35%程度であり、玄武岩と安山岩試料の斑晶組み合わせは、それぞれカンラン石+単斜輝石+斜方輝石+斜長石、および単斜輝石+斜方輝石+斜長石である。鉛同位体比は一部の試料を除いてP2O5に代表される液相濃集元素の濃度と負の相関がある。また、一ノ目潟の下部地殻捕獲岩の鉛同位体比は、有珠山の外輪山溶岩よりも有意に低い206Pb/204Pb比や208Pb/204Pb比をもつ。
まず、マグマの進化においてどのようなプロセスが関与していたのかを検討するため、外輪山溶岩の全岩主要元素組成の全データを対象に、主成分分析(PCA)を行った。その結果、PC1ではSiO2やP2O5などを含む複数の元素が重要な要素である一方、PC2ではAl2O3とCaOの2元素のみが支配的に重要な要素となっていた。PC1とPC2の寄与率はそれぞれ58%、24%であり、この2成分で80%以上を占める。PC1は鉛同位体比やLa/Yb比と非常に良い正の相関を示す。PC2は鉛同位体比とは有意な相関を示さないが、斜長石の斑晶量と非常に良い相関を示す。これらのことから、PC1は鉛同位体比の異なった2つの端成分物質の混合プロセスを、PC2は斜長石斑晶の分離や集積といったプロセスを反映していると考えられる。
PC1はP2O5量や鉛同位体比と良い相関を示すことから、低P2O5量側の端成分としては、相対的に未分化な玄武岩質マグマが考えられる。もう一方の端成分は、P2O5量が高いという分化した特徴をもちながらも、206Pb/204Pbや208Pb/204Pb比が低いという特徴をもつことから、下部地殻の部分溶融メルトが有力である。このことは、実際に一ノ目潟の下部地殻物質の鉛同位体比が、鉛同位体の組成空間内において、外輪山溶岩が示すトレンドの低206Pb/204Pb側への延長線上にほぼプロットされることと調和的である。
以上の検討結果から、有珠山外輪山溶岩のマグマは、まずモホ面、もしくは下部地殻内において相対的に未分化な玄武岩マグマと下部地殻の部分溶融メルトが混合し、その後さらに結晶分化作用と斜長石を主とする斑晶の分離・集積が起きながら進化したと考えられる。
本研究では、外輪山から約90個の試料を採取して全岩主要元素組成の分析を行い、さらにそれらのうちの約40試料、および下部地殻物質として新たに一ノ目潟から採取した角閃石岩試料について、微量元素濃度分析と鉛同位体比分析を行った。外輪山試料の全岩SiO2量は49.6-54.9 wt.%であり、それらは大きく玄武岩組成(SiO2<52.0 wt.%)のものと安山岩組成(SiO2>52.4 wt.%)のものに分けられる。斑晶量は10-35%程度であり、玄武岩と安山岩試料の斑晶組み合わせは、それぞれカンラン石+単斜輝石+斜方輝石+斜長石、および単斜輝石+斜方輝石+斜長石である。鉛同位体比は一部の試料を除いてP2O5に代表される液相濃集元素の濃度と負の相関がある。また、一ノ目潟の下部地殻捕獲岩の鉛同位体比は、有珠山の外輪山溶岩よりも有意に低い206Pb/204Pb比や208Pb/204Pb比をもつ。
まず、マグマの進化においてどのようなプロセスが関与していたのかを検討するため、外輪山溶岩の全岩主要元素組成の全データを対象に、主成分分析(PCA)を行った。その結果、PC1ではSiO2やP2O5などを含む複数の元素が重要な要素である一方、PC2ではAl2O3とCaOの2元素のみが支配的に重要な要素となっていた。PC1とPC2の寄与率はそれぞれ58%、24%であり、この2成分で80%以上を占める。PC1は鉛同位体比やLa/Yb比と非常に良い正の相関を示す。PC2は鉛同位体比とは有意な相関を示さないが、斜長石の斑晶量と非常に良い相関を示す。これらのことから、PC1は鉛同位体比の異なった2つの端成分物質の混合プロセスを、PC2は斜長石斑晶の分離や集積といったプロセスを反映していると考えられる。
PC1はP2O5量や鉛同位体比と良い相関を示すことから、低P2O5量側の端成分としては、相対的に未分化な玄武岩質マグマが考えられる。もう一方の端成分は、P2O5量が高いという分化した特徴をもちながらも、206Pb/204Pbや208Pb/204Pb比が低いという特徴をもつことから、下部地殻の部分溶融メルトが有力である。このことは、実際に一ノ目潟の下部地殻物質の鉛同位体比が、鉛同位体の組成空間内において、外輪山溶岩が示すトレンドの低206Pb/204Pb側への延長線上にほぼプロットされることと調和的である。
以上の検討結果から、有珠山外輪山溶岩のマグマは、まずモホ面、もしくは下部地殻内において相対的に未分化な玄武岩マグマと下部地殻の部分溶融メルトが混合し、その後さらに結晶分化作用と斜長石を主とする斑晶の分離・集積が起きながら進化したと考えられる。