10:40 〜 10:43
[BBG21-P01] 西表島網取湾におけるサンゴ分布の多様性指数とその物理環境との関係
ポスター講演3分口頭発表枠
キーワード:サンゴ, 多様性指数, 波高, 土粒子, 中間擾乱仮説
西表島網取湾におけるサンゴ分布と物理環境との関係を調べた。網取湾は西表島の北西部に位置し、湾内にはサンゴが広範囲に分布し、そのサンゴの形態、大きさ、種は場所により異なっている。加えて、網取湾には、湾に至る陸路がなく、周辺にはひとが住んでいない。それゆえ、小さい湾ではあるが、人工的影響のない多様な自然環境が維持されており、サンゴ分布と物理環境との関係を調べるには最適の場所のひとつである。
まず、サンゴ分布、海水温、塩分、河川流量のデータを得るために観測調査を行い、波高と土粒子の時空間分布を得るために、それらの物理環境の観測データを利用して、海洋、波浪、土粒子追跡モデルによる数値実験を行った。解析結果は、サンゴの形態と大きさが、物理環境の異なる湾内の場所により著しく異なることを示した[Shimokawa et al, 2014]。
次に、これらの観測と数値実験の結果から、サンゴ分布の多様性指数とその物理環境との関係を計算した。多様性指数DIは、次のように定義される[Shannon, 1948; MacArthur and MacArthur, 1961, Clark & Warwick, 2001, McCune and Grace, 2002]。
DI=-∑ ci log2 ci,
ここで、ciは全体に対するi番目の型の割合を表す。DIは、あるデータセットにおける異なる型を含む程度の定量的な表現であり、熱力学におけるエントロピーの概念に関係している。DIの値は、型の数とその均一性が増加すると増加する。つまり、型の数が一定の場合、DIの値は、すべての型が等しく存在するとき最大になる。解析結果は、サンゴの形態の多様性指数の平均は、湾口と湾奥の方が湾全体より小さく、湾中間で最大であることを示した。この結果は、環境擾乱が強すぎることも弱すぎることもないときに、生物の種の多様性は最大となるという中間擾乱仮説[Connell, 1978]と整合的である。
参考文献:
Clarke, K. R. and R. M. Warwick (2001), Changes in marine communities: an approach to statistical analysis and interpretation, 2nd ed., PRIMER-E, Plymouth, pp. 176.
Connell, J. H. (1978), Diversity in Tropical Rain Forests and Coral Reefs, Science, 199, 1302-1310.
MacArthur, R. H. and J. W. MacArthur (1961), On bird species diversity, Ecology, 42, 594-598.
McCune, B. and J. B. Grace. (2002), Analysis of Ecological Communities, MjM Software Design, Oregon, pp.300.
Shannon, C. E. (1948), A mathematical theory of communication. The Bell System Technical Journal, 27, 379-423 and 623-656.
Shimokawa S., T. Murakami, A. Ukai, H. Kohno, A. Mizutani and K. Nakase, 2014, Relationship between coral distributions and physical variables in Amitori Bay, Iriomote Island, Japan, J. Geophys. Res.: Oceans, 119, 8336-8356 (doi: 10.1002/2014JC010307).
まず、サンゴ分布、海水温、塩分、河川流量のデータを得るために観測調査を行い、波高と土粒子の時空間分布を得るために、それらの物理環境の観測データを利用して、海洋、波浪、土粒子追跡モデルによる数値実験を行った。解析結果は、サンゴの形態と大きさが、物理環境の異なる湾内の場所により著しく異なることを示した[Shimokawa et al, 2014]。
次に、これらの観測と数値実験の結果から、サンゴ分布の多様性指数とその物理環境との関係を計算した。多様性指数DIは、次のように定義される[Shannon, 1948; MacArthur and MacArthur, 1961, Clark & Warwick, 2001, McCune and Grace, 2002]。
DI=-∑ ci log2 ci,
ここで、ciは全体に対するi番目の型の割合を表す。DIは、あるデータセットにおける異なる型を含む程度の定量的な表現であり、熱力学におけるエントロピーの概念に関係している。DIの値は、型の数とその均一性が増加すると増加する。つまり、型の数が一定の場合、DIの値は、すべての型が等しく存在するとき最大になる。解析結果は、サンゴの形態の多様性指数の平均は、湾口と湾奥の方が湾全体より小さく、湾中間で最大であることを示した。この結果は、環境擾乱が強すぎることも弱すぎることもないときに、生物の種の多様性は最大となるという中間擾乱仮説[Connell, 1978]と整合的である。
参考文献:
Clarke, K. R. and R. M. Warwick (2001), Changes in marine communities: an approach to statistical analysis and interpretation, 2nd ed., PRIMER-E, Plymouth, pp. 176.
Connell, J. H. (1978), Diversity in Tropical Rain Forests and Coral Reefs, Science, 199, 1302-1310.
MacArthur, R. H. and J. W. MacArthur (1961), On bird species diversity, Ecology, 42, 594-598.
McCune, B. and J. B. Grace. (2002), Analysis of Ecological Communities, MjM Software Design, Oregon, pp.300.
Shannon, C. E. (1948), A mathematical theory of communication. The Bell System Technical Journal, 27, 379-423 and 623-656.
Shimokawa S., T. Murakami, A. Ukai, H. Kohno, A. Mizutani and K. Nakase, 2014, Relationship between coral distributions and physical variables in Amitori Bay, Iriomote Island, Japan, J. Geophys. Res.: Oceans, 119, 8336-8356 (doi: 10.1002/2014JC010307).