日本地球惑星科学連合2015年大会

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口頭発表

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[U-07] 連合は環境・災害にどう向き合っていくのか?

2015年5月28日(木) 14:15 〜 15:45 103 (1F)

コンビーナ:*田中 賢治(京都大学防災研究所)、作野 裕司(広島大学大学院工学研究院)、後藤 真太郎(立正大学地球環境科学部環境システム学科)、座長:田中 賢治(京都大学防災研究所)、作野 裕司(広島大学大学院工学研究院)、後藤 真太郎(立正大学地球環境科学部環境システム学科)

15:00 〜 15:15

[U07-15] 災害対応を支える空間表現の新技術

*宇根 寛1 (1.国土地理院)

キーワード:地理空間情報技術, 災害対応, ウェブマッピング, 3Dモデリング, モバイル機器, リスクコミュニケーション

近年の地理空間情報技術のめざましい発達により、地理空間情報は災害対応の現場に不可欠な情報となってきている。ウェブマッピング技術の発展により、さまざまな情報を地理院地図などのウェブ上の地図で自由に重ね合わせ、任意の情報を抽出して表示、出力することが可能となった。また、SfM(Structure from Motion)やMVS(Multi View Stereo)を応用した画像処理方法が実用化し(内山ほか、2014;飛田ほか、2014)、安価な画像処理ソフトウェアが普及したことで、十分な標定要素の得られない斜め写真や地上写真からでも容易にある程度の精度を持つ3Dモデルや正射画像が作成できるようになった。さらに、詳細なDEMの整備が進み、地理院地図に地図を立体的に表示する機能が実装され(高桑ほか、2014)、3Dプリンタの普及と相まって、地形を誰もが「手にとるように」理解することが可能となった。これらの新技術はただちに災害の現場に応用され、災害発生直後のさまざまな地理空間情報が迅速に現場で救助、復旧活動に従事する担当者に届けられるようになった。
また、阪神・淡路大震災や東日本大震災を通じて、大規模災害時の自治体などの行政による救助、支援に限界があることが明らかとなり、住民自らが状況に応じた判断を行い適切な避難行動を行うことや、地域コミュニティでの相互の助け合いなどの重要性が指摘され(内閣府、2014)、そのために住民や地域コミュニティに防災に関する的確な情報を伝達する手段としてハザードマップなどの地図やモバイル機器を活用した地理空間情報技術が重要となってきている。例えば住民の的確な避難行動を支援するための防災アプリや、地域レベルのリスクコミュニケーションの手段として道路ネットワーク解析などの地理空間情報技術を活用した「避難地形時間地図(逃げ地図)」の取組みなど、防災のあらゆるステージにおいて地理学、地図学の成果が拡がりを見せている。
本発表では、最新の空間表現技術の防災・減災への応用の事例、特に広島の土砂災害について、それを現場の地理学的災害調査に応用した事例を紹介し、連合に参加するさまざまな学問領域の成果を災害対応の実務に結びつける空間表現の役割についての議論を提起したい。