日本地球惑星科学連合2015年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-GD 測地学

[S-GD23] 重力・ジオイド

2015年5月27日(水) 16:15 〜 18:00 102A (1F)

コンビーナ:*西島 潤(九州大学大学院 工学研究院 地球資源システム工学部門)、青山 雄一(国立極地研究所)、座長:西島 潤(九州大学大学院)、宮崎 隆幸(国土交通省国土地理院)

16:15 〜 16:30

[SGD23-01] 重力地震学~人工衛星GRACEが描く新しい地震像~

*田中 優作1日置 幸介1松尾 功二2 (1.北海道大学大学院理学院、2.国土地理院)

キーワード:GRACE, 地震後重力変化, 地震時重力変化, アフタースリップ, 粘弾性緩和, 深発地震

2002年に打ち上げられた重力衛星GRACEは地球科学の様々な分野に新しい知見を齎し続けている.その内,地震に関連しては,2004年スマトラ-アンダマン地震を始め,2010年マウレ地震,2011年東北沖地震などが引き起こした地震時や地震後の重力変化について報告されている.今回は,この地震に伴う重力変化の研究に関して,話題を三つに分けて講演する.尚,話題1が先行研究の紹介,話題2と話題3が本研究による発見である.

(1)話題1:2004年スマトラ-アンダマン地震,2010年マウレ地震,そして2011年東北沖地震の地震時の重力変化.これらの超巨大逆断層型地震は,震央の背弧側で大きな負の重力変化が観測された.そのメカニズムは,おそらく地中での密度変化によるものであろうと,先行研究で既に分かっている.

(2)話題2:2004年スマトラ-アンダマン地震,2010年マウレ地震,そして2011年東北沖地震の地震後の重力変化.2012年に公開されたGRACEのデータを用いて,2010年マウレ地震と2007年に報告された2004年スマトラ-アンダマン地震の地震後重力変化を解析した結果,地震後重力変化は二段階で進む事が見出された.この傾向は,2011年東北沖地震の地震後重力変化にも見られた.この二つの段階は,それぞれアフタースリップと粘性緩和に起因する現象であろうと推測される.ここでは,その観測結果と,推測されるメカニズムについて紹介し,GRACEがアフタースリップと粘性緩和を分離して捉え得る新しい手段であることを説明する.

(3)話題3:2013年オホーツク深発地震の地震時重力変化.深発地震では,重力変化は地表の鉛直変位に起因する事がGRACEの観測から示された.これは深発地震に伴う地殻変動が,GRACEを用いる事によって面的に捉えられる事を示唆している.

以上の事から,GRACEは,浅発地震では地震時に地下の密度変化を,地震後にアフタースリップと粘性緩和を分離して捉え得る事に加え,深発地震では地震時の地殻変動を面的に捉える手段として使える,現状唯一の方法だと言う事が出来る.