日本地球惑星科学連合2015年大会

講演情報

インターナショナルセッション(ポスター発表)

セッション記号 S (固体地球科学) » S-IT 地球内部科学・地球惑星テクトニクス

[S-IT05] Hard-Rock Drilling: Oceanic Lithosphere to Island Arc Formation and Beyond

2015年5月26日(火) 18:15 〜 19:30 コンベンションホール (2F)

コンビーナ:*田村 芳彦(海洋研究開発機構 海洋掘削科学研究開発センター)、Yildirim Dilek(マイアミ大学)、森下 知晃(金沢大学理工研究域自然システム学系)、佐野 貴司(国立科学博物館地学研究部)、阿部 なつ江(独立行政法人海洋研究開発機構海洋掘削科学研究開発センター)、海野 進(金沢大学理工研究域自然システム学系)、高澤 栄一(新潟大学理学部地質科学科)、小野 重明(独立行政法人海洋研究開発機構)、道林 克禎(静岡大学理学研究科地球科学専攻)

18:15 〜 19:30

[SIT05-P01] スピネルメルト包有物から得られた初生的無人岩マグマの成因

*金山 恭子1北村 啓太朗2海野 進1田村 明弘1石塚 治3荒井 章司1 (1.金沢大学理工研究域、2.金沢大学大学院自然科学研究科、3.産業技術総合研究所 活断層・火山研究部門)

キーワード:無人岩, メルト包有物, 微量元素組成, 沈み込み帯, 島弧, 初生マグマ

小笠原群島の火山岩年代・層序は,約50Maの伊豆―小笠原―マリアナ沈み込み帯の形成直後に発生したマグマ組成がプレート沈み込みの進行に伴って徐々に変化したことを示している。ここでは,48Maから46Maにかけて希土類元素などに著しく乏しい無人岩(ボニナイト)(高枯渇無人岩)が活動し,その後低枯渇な無人岩(~45Ma)にとってかわった。その後40Maには無人岩活動は終息し,島弧ソレアイトおよびカルクアルカリ岩マグマを噴出する通常の島弧火山活動に移行した(Ishizuka et al., 2006, 2011; 海野・中野, 2007; Kanayama et al., 2012)。マントルと平衡であった初生マグマ組成の時空間分布とその成因を明らかにすることで,沈み込み開始から定常的な島弧―海溝系として確立するまでに島弧下マントルウエッジが辿った温度組成構造の進化,すなわちマントル流動履歴を解明することができる。Umino et al. (2015, Geology) は,無人岩のクロムスピネルから初生的なメルトを捕獲・凍結したメルト包有物を見出し,小笠原群島の初生無人岩マグマ組成を報告した。本公演では,それらの初生マグマの成因を検討する。
 高枯渇無人岩メルト包有物(48-46Ma)には,高SiO2(SiO2 > 54.7 wt%, MgO < 23.3 wt%)および低SiO2(SiO2 > 54.6 wt%, MgO < 17.7 wt%)タイプが存在する。これらは皿型からV字型の希土類元素 (REE) パターンを示し,V字型の方がLILE/La比が高い傾向にある。V字型REEパターンを示す無人岩は小笠原群島から報告されておらず,メルト包有物に特有である。低枯渇無人岩メルト包有物(~45Ma)は,低SiO2含有量(SiO2 > 53.5 wt%, MgO < 18.9 wt%)で,フラットなREEパターンを示す。
各タイプの最も初生的(高MgO含有量)な無人岩メルト包有物について,その起源物質を微量元素を用いたモデリング (Kimura et al., 2010) によって検討した。高枯渇無人岩メルトは,10~20%程度のメルトを分別したMORB起源かんらん岩 (DMM, Workman and Hart, 2005) が,エクロジャイトと平衡なスラブ流体の付加により部分溶融することにより生じた。LILE/Laのバリエーションはスラブ流体成分組成の違いに依存すると考えられるが,これはスラブ直上かんらん岩の脱水の寄与程度,すなわちマントルウェッジの温度の違いを反映している可能性がある。低枯渇無人岩は起源マントルの枯渇度が小さく(DMM ? 4~8%程度),堆積物の寄与が大きい。
各タイプ内のメルト包有物の主要・微量元素組成バリエーションは,高MgOメルト包有物と珪長質(SiO2=65-70程度)メルトの混合によって説明できる。マントル中を上昇する無人岩マグマと珪長質メルトの混合によりスピネルの安定領域にマグマがおかれた結果 (Arai and Yurimoto, 1994),高い過冷却度で核形成・成長したスピネルに幅広い組成のメルトが包有されたと考えられる。
無人岩の全岩組成は,メルト包有物とは異なる組成バリエーションを示す。これらは,マントルで生成された未分化無人岩マグマが浅部での脱ガスを経て,スピネルやカンラン石,斜方輝石の結晶分別,分化マグマや異なるタイプの無人岩マグマとの混合の結果,形成された。