日本地球惑星科学連合2015年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-GD 測地学

[S-GD22] GGOS(全球統合測地観測システム)

2015年5月28日(木) 14:15 〜 16:00 303 (3F)

コンビーナ:*松坂 茂(公益社団法人 日本測量協会)、大坪 俊通(一橋大学)、座長:福田 洋一(京都大学大学院理学研究科地球惑星科学専攻地球物理学教室)、大坪 俊通(一橋大学)

15:15 〜 15:30

[SGD22-05] ITRF realization とプレート境界域が抱えている課題

*島田 誠一1 (1.防災科学技術研究所)

キーワード:世界測地座標系, Realization of ITRF, GNSS, 巨大地震, プレート境界域

現代測地学において,地球の形とその時間変化は,宇宙測地技術観測点のITRF(国際地心座標系)による精密な座標値として与えられる.
GNSS(全地球航法衛星システム)観測も,例えばIGS(国際GNSS機構)のグローバルな連続観測網による観測結果がITRFモデル確立に寄与しているが,GNSS観測技術の現代測地学における最も重要な役割は,ITRF realization(ITRF座標値の実現)である.地球上のどこでも,比較的安価なGNSS受信機でGNSS衛星電波を観測して,ITRF精密座標値が精度よく求められている近くのGNSS座標基準点の観測データとともに解析することにより,正確なITRF座標値を求めることができる.これが現代測地技術におけるITRF realizationである.
このように,宇宙測地技術によってITRFモデルを確立することと,GNSS受信機によって地球上のどこでも精密なITRF座標値が得られること(ITRF realization)とが,現代測地学において車の両輪の役割を果たしている.
本講演では,ITRF realizationの障害となるもっとも大きな問題である巨大地震による地震時及び地震後の変動についても取り上げる.地震時及び地震後の変動は,特にプレート境界域にあるGNSS座標基準点の,任意の時点における精密座標値を与えることを非常に困難にする.
例えば,2011年東日本大地震では日本周辺のIGS座標基準点であるTSKB(つくば)・MTKA(三鷹)・YSSK(ユジノサハリンスク)・DAEJ(韓国・大田)・SUWN(韓国・水原)が地震時及び地震後に非常に大きく変動し,その座標値は急激にしかも大きく変動した.特にTSKB観測点は長年IGS観測網の重要なコアサイトの一つであったが,1m近い変動を記録した.このため,東アジアにおいては東日本大地震後に広い範囲でITRF座標基準点の空白域が生じた.
もう一つの例として,2004年スマトラ沖地震についても取り上げる.この地震では当時インドシナ地域における唯一のIGS座標基準点であったシンガポールにあるNTUS観測点が地震時及び地震後に非常に大きく変動したために,この観測点をITRF座標基準点として利用することができなくなった.地震後の変動は10年後の現在もまだ顕著に続いており,このためにいまだにインドシナ地域はITRF座標基準点の空白域となっている.