日本地球惑星科学連合2015年大会

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セッション記号 A (大気水圏科学) » A-HW 水文・陸水・地下水学・水環境

[A-HW25] 都市域の地下水・環境地質

2015年5月27日(水) 18:15 〜 19:30 コンベンションホール (2F)

コンビーナ:*安原 正也(独立行政法人 産業技術総合研究所)、林 武司(秋田大学教育文化学部)、浅田 素之(清水建設株式会社)、滝沢 智(東京大学大学院工学系研究科都市工学専攻)、鈴木 弘明(日本工営株式会社 中央研究所 総合技術開発部)、西田 継(山梨大学大学院医学工学総合研究部)

18:15 〜 19:30

[AHW25-P03] 首都圏における地下温度の経年的な上昇とその要因

*宮越 昭暢1林 武司2川合 将文3川島 眞一3国分 邦紀3濱元 栄起4八戸 昭一4 (1.独立行政法人産業技術総合研究所、2.秋田大学教育文化学部、3.東京都土木技術支援・人材育成センター、4.埼玉県環境科学国際センター)

キーワード:地下温度, 地下水流動, 地下温暖化, 都市化, 首都圏

筆者らは,都市域における長期の地下水利用や都市特有の熱環境変化,地球温暖化に伴う気候変動が地下環境に及ぼす長期的な影響を検討するため,首都圏に位置する東京都および埼玉県を対象として,地下温度の観測を継続的に実施している。これまでに,両都県に整備されている地盤沈下・地下水位観測井網を活用して2000年から2014年まで地下温度プロファイルを複数回測定し,過去5~15年間の地下温度分布の変化を把握した。また,2007年(埼玉県内4地点)および2012・2013年(東京都内6地点)から地下温度モニタリングを実施し,地下温度の連続的かつ微細な変化と,深度による変化傾向の差異を把握した。本発表では,それらの観測結果と,温度変化の要因に関する検討結果を報告する。
筆者らの先行研究(宮越他,2010など)により,本地域の地下温度には明瞭な地域差が認められ,都心において郊外よりも相対的に高温であることが明らかとなっている。本研究では,2013~2014年の調査によって得られた地下温度分布と2004~2005年時の地下温度分布の比較により,過去9~10年間で地下浅部に広く温度上昇が生じていることが明らかとなった。また,温度の上昇量は郊外よりも都心で大きく,両地域の温度差が増加していることが明らかとなった。さらに,地下温度の上昇は時間の経過とともに,より深部でも確認され,地下温暖化が地下深部に向かって拡大していることが示された。
より詳細に見ると,地下温度の上昇傾向は地域や深度により異なっており,各地域の地下地質構造(層相)の違いや地下水流動の違い,土地利用の違いによる都市排熱量の違いなど,様々な要因を反映していると考えられた。例えば地下温度のモニタリング結果では,都心の武蔵野台地東縁に位置する観測井において,地表付近よりも地下30~50mにおいて温度上昇率が大きいことが明らかとなった。この温度上昇部の形成深度付近の地質はシルト~粘土質層であり,地下水の流動は小さいと考えられる。このことから,本地点では,都市化に伴う地表面温度上昇の影響だけでなく,地下構造物からの地下への排熱の影響を受けて地下温度が上昇していることが示唆された。これに対して,荒川低地南部の住宅地に位置する観測井では,温度上昇率は地下深部よりも浅部で大きく,地下温度の上昇は地下浅部の厚いシルト~粘土質層を含む沖積層内において明瞭である。この地点における水理水頭の鉛直分布をみると,水理水頭は沖積層より下位の深度100m付近で最も低いが,沖積層中の地質条件を考慮すると,地下浅部の地下水の流動は小さいと考えられる。また,周辺には,大規模な地下構造物は存在しない。これらの点から,本地点における地下温度の上昇は,主に地表面からの熱の伝導によって生じていると考えられる。本研究により,各観測地点で観測された地下温度の変化を,地下地質構造や地下水流動と併せて解析することで,地下温暖化のメカニズムを明らかにできると考えられる。
本研究は,東京都土木技術支援・人材育成センター-秋田大学-産業技術総合研究所,ならびに埼玉県-秋田大学-産業技術総合研究所による共同研究の一部として実施された。また,本研究はJSPS科研費25871190の助成を受けた。