日本地球惑星科学連合2015年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-EM 固体地球電磁気学

[S-EM34] 地磁気・古地磁気・岩石磁気

2015年5月24日(日) 14:15 〜 16:00 102A (1F)

コンビーナ:*望月 伸竜(熊本大学大学院先導機構)、松島 政貴(東京工業大学大学院理工学研究科地球惑星科学専攻)、座長:松島 政貴(東京工業大学大学院理工学研究科地球惑星科学専攻)、清水 久芳(東京大学地震研究所)

15:30 〜 15:45

[SEM34-16] 回転球殻中の磁気対流により引き起こされるアルフベン波の外側安定成層中の伝播

*竹広 真一1 (1.京都大学数理解析研究所)

キーワード:地球外核, 水星外核, アルフベン波, 核マントル境界, ダイナモ, 地磁気永年変動

最近の地震波観測とその解析は地球の核マントル境界直下に厚さオーダー 100km の安定成層が存在することを示唆している. 深部対流運動の外側安定成層への貫入の程度はダイナモ過程通じての磁場生成ならびに磁気永年変導の成因を考える上で重要な問題のひとつである. Takehiro and Lister (2001) は磁場がない場合に柱状対流の安定成層への貫入厚さを理論的に導出し, 貫入厚さが惑星の自転角速度に比例し, 安定成層のブラントバイサラ振動数ならびに擾乱の水平波数に反比例することを示した. しかしながら磁場の影響下での貫入厚さのスケーリングはいまだ知られていない. ここでは, 安定成層下の対流運動によって引き起こされる安定成層中の流体運動と磁場擾乱を理論的に調べる.

Takehiro and Lister (2001) の理論モデルを磁気流体へと拡張する. 下面境界からの流体運動と磁気擾乱が鉛直方向半無限空間に存在する密度成層した磁気流体中へと貫入する. 系の回転軸は鉛直軸から傾いている. 粘性と拡散の効果を無視し, 安定成層が十分に強く基本場磁場が弱いことを仮定すると, 磁気流体運動が 2 つの磁気流体波動に分類されることが線形解析からわかる. ひとつは速いモードであり, コリオリ力・浮力およびローレンツ力が足しあわさって波の復元力がもたらされている. もう一つは遅いアルフベン波であり, 流体運動が水平方向に制限されている. 下面から与えられる擾乱の振動数が十分小さければ, 速いモードは安定成層を伝わることができず, その貫入距離は磁場のない場合のものに帰着する. これに対して遅いモードは, 与えられる擾乱の振動数がどんなに小さくても安定成層中を伝播することができる. その伝播(貫入)距離はアルフベン速度と拡散係数及び擾乱の全波数の比で表される.

伝播距離の理論的なスケーリングの正当性を評価するために, 一様磁場中に埋めこまれた上層に安定成層を伴う高速に回転する球殻中の磁気熱対流の線形解析を行った. 強い安定成層を与えると, 基本場磁場を強めていくにつれて, 安定成層下に閉じ込められていた中立モードの柱状流体運動と磁気擾乱が次第に安定成層へ貫入していく. 得られた中立モードの貫入距離は理論的スケーリングと良くあっている.