09:20 〜 09:40
★ [PPS01-16] JUNOによる木星探査と地上からのサポート観測
キーワード:Juno, Jupiter, imaging, spectroscopy, astronomy
NASAのJUNO探査機は2011年に打ち上げられ,2013年の地球フライバイによる増速を経て2016年7月に木星に到着する計画である。木星到着後は近木点が放射線帯の内側に入る離心率の高い楕円軌道に入り,木星を約30回周回する。JUNOミッションの主な目的は木星大気深層の水分子の分布の計測,惑星近辺の重力場の解析,そして磁気圏環境の探査の3点である。これらの計測により木星内部の構造,組成,そして対流循環を三次元的に解析することが可能になる。また,それにより惑星表層の大気現象を木星の内部循環と結びつけて理解することも可能になる見込みである。これらの研究により,木星の形成と進化の過程を明らかにし,ガス惑星形成について総合的な理解を深めることも重要な目的である。
JUNO探査機に搭載される観測機器は,電磁圏環境のin-situ計測機器と,広範な周波数帯にわたって木星のリモート・センシング観測を行う機器の2つに分けられる。リモートセンシング機器が観測する波長帯はUltraviolet Spectrometer (UVS)が70-205 nm,Juno IR Auroral Mapper (JIRAM)が2-5 μm,そしてMicrowave Radiometer (MWR)が1.3-50 cmとなっている。それに加え,可視光カメラJunoCamがRGBフィルターと890 nmメタン吸収帯フィルターを用いてアウトリーチ用画像を撮影する計画である。JUNOは木星を30回以上周回する予定であり,観測機器は連続的に運用されるが,リモートセンシング観測を優先して行うのは,最初の軌道と,軌道3~8だけであるため(残りの軌道は重力場観測優先),表面構造の同時観測を行うためには地上からのサポートが不可欠であり,また,Juno観測機器にカバーされない周波数帯のスペクトル観測についても,地上からのサポートが重要になる。JunoCamは可視光画像を撮影するものの,撮像用CCDは厳密な測光観測を行うのに十分な精度でキャリブレーション行うことができないため,対流圏雲構造の解析を行うには地上からの0.3-2.0μm波長でのワイドバンド・ナローバンド観測が必要になる。また,地上からの近赤外線高スペクトル解像度観測により大気の微量成分の吸収線を測ることで,JIRAMデータからは測定できない鉛直成分の風速の推定も可能になる。JUNO探査機は波長>5μmの中赤外線帯を観測する機器を搭載していないため,この波長で地上から観測を行うことにより対流圏と成層圏の温度分布と大気微量成分および高度1 bar以上の雲構造の分析も必要である。
地上観測のもう一つの重要点は,JUNOのリモートセンシング観測データは木星のごく限られた地域のみをカバーするため,地上から取れる木星全球データなしには,リモートセンシングデータを時系列に当てはめて理解することができない点である。このためには,2016年中期の木星の衝までに木星表面にある事象とそのタイムスケールを理解し,JUNOによる観測に今から備える必要がある。地上からの観測により追跡観測が必要な大気事象の例として,大赤斑,Oval BA,Brown Barges,そしてその他の渦構造や,青灰色がかった大気凝結成分の密度が低いことが知られている地域がある。これらの観測を地上から行うことにより,JUNOの軌道修正のタイミングや観測機器のポインティングなどについて,大気事象に合わせて能動的な運用する予定である。こういったサポートを行うため,JUNOチームはプロとアマチュアによる木星の国際共同観測を呼びかけている。
(JUNOプロジェクトとその研究活動はNASAからの助成を受けて行われています。)
JUNO探査機に搭載される観測機器は,電磁圏環境のin-situ計測機器と,広範な周波数帯にわたって木星のリモート・センシング観測を行う機器の2つに分けられる。リモートセンシング機器が観測する波長帯はUltraviolet Spectrometer (UVS)が70-205 nm,Juno IR Auroral Mapper (JIRAM)が2-5 μm,そしてMicrowave Radiometer (MWR)が1.3-50 cmとなっている。それに加え,可視光カメラJunoCamがRGBフィルターと890 nmメタン吸収帯フィルターを用いてアウトリーチ用画像を撮影する計画である。JUNOは木星を30回以上周回する予定であり,観測機器は連続的に運用されるが,リモートセンシング観測を優先して行うのは,最初の軌道と,軌道3~8だけであるため(残りの軌道は重力場観測優先),表面構造の同時観測を行うためには地上からのサポートが不可欠であり,また,Juno観測機器にカバーされない周波数帯のスペクトル観測についても,地上からのサポートが重要になる。JunoCamは可視光画像を撮影するものの,撮像用CCDは厳密な測光観測を行うのに十分な精度でキャリブレーション行うことができないため,対流圏雲構造の解析を行うには地上からの0.3-2.0μm波長でのワイドバンド・ナローバンド観測が必要になる。また,地上からの近赤外線高スペクトル解像度観測により大気の微量成分の吸収線を測ることで,JIRAMデータからは測定できない鉛直成分の風速の推定も可能になる。JUNO探査機は波長>5μmの中赤外線帯を観測する機器を搭載していないため,この波長で地上から観測を行うことにより対流圏と成層圏の温度分布と大気微量成分および高度1 bar以上の雲構造の分析も必要である。
地上観測のもう一つの重要点は,JUNOのリモートセンシング観測データは木星のごく限られた地域のみをカバーするため,地上から取れる木星全球データなしには,リモートセンシングデータを時系列に当てはめて理解することができない点である。このためには,2016年中期の木星の衝までに木星表面にある事象とそのタイムスケールを理解し,JUNOによる観測に今から備える必要がある。地上からの観測により追跡観測が必要な大気事象の例として,大赤斑,Oval BA,Brown Barges,そしてその他の渦構造や,青灰色がかった大気凝結成分の密度が低いことが知られている地域がある。これらの観測を地上から行うことにより,JUNOの軌道修正のタイミングや観測機器のポインティングなどについて,大気事象に合わせて能動的な運用する予定である。こういったサポートを行うため,JUNOチームはプロとアマチュアによる木星の国際共同観測を呼びかけている。
(JUNOプロジェクトとその研究活動はNASAからの助成を受けて行われています。)