17:00 〜 17:15
[BCG28-13] pH 2-4 、5 - 55 ℃における鉄(水)酸化物生成の速度論的研究
キーワード:速度論, 鉄水酸化物, 活性化エネルギー
地球表層環境中には、鉄(水)酸化物が広く分布しており、その生成過程や吸着特性、鉄(水)酸化物を介した物質移動等が注目されている。鉄(水)酸化物は、岩石鉱物中のFe2+やFe3+の溶出、酸化(Fe2+ → Fe3+)、水和、結晶化などの過程を経て生成する。本研究では、溶存Fe3+から鉄水酸化物が生成する過程について、溶存陰イオン種の違いやpHの違い(pH 2‐4)が反応速度に及ぼす影響を調べた。
まず、塩酸系での反応速度を調べるために、FeCl3を純水に溶解させ、Fe3+ 100 ppmの溶液を作成した。この溶液を、15, 25, 35, 45, 55 ℃で反応させた。25 ℃においては、作成直後の溶液のpH は2.7であったが、時間の経過と共に2.2まで減少した。このようなpH の変化は、溶存Fe3+ の水和(H+ の放出)→溶存Fe(OH)3 →固体Fe(OH)3 という反応が進むことにより生じるとされている(Grundl and Delwiche, 1993)。したがって、溶液のpH の時間変化を調べることにより、鉄水酸化物の生成速度に関する情報が得られる。pH の時間変化傾向から、核生成に関連すると推定される溶存Fe(OH)3 濃度の変化が小さい(固体生成が遅い)期間を経た後、一次反応的な溶存Fe(OH)3 濃度の減少が起こり、さらに時間が経つと一次反応的な挙動からずれていく様子が見られた。反応中期を[溶存Fe(OH)3 →固体Fe(OH)3]の一次反応と仮定して得られた各温度における反応速度定数は3.3 × 10-5‐1.1 × 10-2 s-1 であり、アレニウスプロット上においてよい直線性が認められた。この直線の傾きから、活性化エネルギーEa = 118 ± 5 kJ/mol を得た。
次に、塩酸系、硝酸系、硫酸系での反応速度を比較するために、Fe(NO3)3 9水和物、Fe2(SO4)3 n水和物を用いてそれぞれFe3+ 100 ppmの溶液を作成した。これらの溶液を、硝酸系は15, 25, 35, 45 ℃で反応させ、硫酸系は25, 35, 45, 55 ℃で反応させた。25 ℃においては、作成直後のpH は、硝酸系は2.9、硫酸系は2.7であったが、時間の経過と共に両方とも2.5まで減少した。反応速度定数を算出すると、硝酸系は2.7 × 10-5‐3.6 × 10-3 s-1 、硫酸系は6.7 × 10-5‐5.9 × 10-3 s-1 となり、どちらもアレニウスプロット上においてよい直線性が認められた。これらの結果から、硝酸系Ea = 122 ± 4 kJ/mol 、硫酸系Ea = 119 ± 4 kJ/mol が得られ、三つの陰イオンの種類に関わらずEaが誤差の範囲で一致した。
最後に、pH 3-4の範囲での反応速度を調べるために、FeCl3を純水に溶解させ、Fe3+ 10 ppmの溶液を作成した。この溶液を、5, 15, 25 ℃で反応させた。25 ℃においては、作成直後の溶液のpH は3.8であったが、時間の経過と共に3.3まで減少した。反応速度定数は2.7 × 10-5‐2.9 × 10-3 s-1 となり、25 ℃においてはpH 2.2‐2.7の値と比較すると約16倍大きくなった。また、Ea = 162 ± 3 kJ/mol が得られ、pH 2.2‐2.7で得られたEa(118 ± 5 kJ/mol)よりも大きくなった。
まず、塩酸系での反応速度を調べるために、FeCl3を純水に溶解させ、Fe3+ 100 ppmの溶液を作成した。この溶液を、15, 25, 35, 45, 55 ℃で反応させた。25 ℃においては、作成直後の溶液のpH は2.7であったが、時間の経過と共に2.2まで減少した。このようなpH の変化は、溶存Fe3+ の水和(H+ の放出)→溶存Fe(OH)3 →固体Fe(OH)3 という反応が進むことにより生じるとされている(Grundl and Delwiche, 1993)。したがって、溶液のpH の時間変化を調べることにより、鉄水酸化物の生成速度に関する情報が得られる。pH の時間変化傾向から、核生成に関連すると推定される溶存Fe(OH)3 濃度の変化が小さい(固体生成が遅い)期間を経た後、一次反応的な溶存Fe(OH)3 濃度の減少が起こり、さらに時間が経つと一次反応的な挙動からずれていく様子が見られた。反応中期を[溶存Fe(OH)3 →固体Fe(OH)3]の一次反応と仮定して得られた各温度における反応速度定数は3.3 × 10-5‐1.1 × 10-2 s-1 であり、アレニウスプロット上においてよい直線性が認められた。この直線の傾きから、活性化エネルギーEa = 118 ± 5 kJ/mol を得た。
次に、塩酸系、硝酸系、硫酸系での反応速度を比較するために、Fe(NO3)3 9水和物、Fe2(SO4)3 n水和物を用いてそれぞれFe3+ 100 ppmの溶液を作成した。これらの溶液を、硝酸系は15, 25, 35, 45 ℃で反応させ、硫酸系は25, 35, 45, 55 ℃で反応させた。25 ℃においては、作成直後のpH は、硝酸系は2.9、硫酸系は2.7であったが、時間の経過と共に両方とも2.5まで減少した。反応速度定数を算出すると、硝酸系は2.7 × 10-5‐3.6 × 10-3 s-1 、硫酸系は6.7 × 10-5‐5.9 × 10-3 s-1 となり、どちらもアレニウスプロット上においてよい直線性が認められた。これらの結果から、硝酸系Ea = 122 ± 4 kJ/mol 、硫酸系Ea = 119 ± 4 kJ/mol が得られ、三つの陰イオンの種類に関わらずEaが誤差の範囲で一致した。
最後に、pH 3-4の範囲での反応速度を調べるために、FeCl3を純水に溶解させ、Fe3+ 10 ppmの溶液を作成した。この溶液を、5, 15, 25 ℃で反応させた。25 ℃においては、作成直後の溶液のpH は3.8であったが、時間の経過と共に3.3まで減少した。反応速度定数は2.7 × 10-5‐2.9 × 10-3 s-1 となり、25 ℃においてはpH 2.2‐2.7の値と比較すると約16倍大きくなった。また、Ea = 162 ± 3 kJ/mol が得られ、pH 2.2‐2.7で得られたEa(118 ± 5 kJ/mol)よりも大きくなった。