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[SSS29-11] 南海付加体内部の粘弾性特性: 掘削カッティングス試料を用いたインデンテーション試験による解析
キーワード:粘弾性, 付加体, インデンテーション試験, IODP, 第348次研究航海
沈み込み帯地震の発生場である付加体を構成する堆積物の粘弾性的挙動は,プレート境界および付加体内部での地震ひずみエネルギーの蓄積過程を規定している可能性がある.IODP NanTroSIEZE第348次研究航海では,超深度ライザー掘削孔Site C0002において,熊野海盆及びその下部に位置する中新世付加体について海底面下3058m(以下,mbsf)まで掘削に成功し,カッティングス試料とコア試料が採取された.本研究では,本航海より採取されたカッティングス試料を用いて,南海付加体の堆積物の粘弾性的性質(応力歪み曲線・弾性率・降伏応力・応力緩和係数等)が深度方向約2kmにわたって連続的にどのように変化するのかをインデンテーション試験から調べた.
インデンテーション試験は,直径4mmのサファイアの球状圧子を用いて,載荷速度は秒速0.5N,最大荷重は180Nとした.試験は,室温・大気圧下において,人工海水で飽和させた試料について排水条件下でおこなった.試料は,SiteC0002において870mbsf~3058 mbsfで得られたカッティングス試料の中から,固結したもののみを取り出したhand-picked intact cuttings試料を用いた.試験の結果,Site C0002におけるヤング率は,870mbsf~2000mbsfにかけて0.1GPaから1.5GPa程度まで増加し,その後3000mbsfまで1.5GPa程度とほぼ値が変わらないことが明らかになった.また得られた荷重―軸変位曲線より,堆積物は1200mbsf程度までは降伏応力が数MPa程度であり延性的な挙動をするのに対し,深くなるにつれて降伏応力が3000mbsfでは40MPa程度まで増加し,2000mbsf以深では降伏後の破壊に伴って顕著な応力降下が観察された.間隙圧も海底面では60%を示すものが,深くなるにつれて1500-2000mbsfでは30%程度,3000mbsfでは18%まで減少することから,力学挙動の変化は主に堆積物の圧密によるものであると考えられる.このような力学的性質は,南海付加体では地下1kmから2kmの間に,塑性―脆性遷移帯が存在する可能性を示唆している.南海地震の歪みは,このような地下2km以深の脆性域で蓄積されていると考えられる.
インデンテーション試験は,直径4mmのサファイアの球状圧子を用いて,載荷速度は秒速0.5N,最大荷重は180Nとした.試験は,室温・大気圧下において,人工海水で飽和させた試料について排水条件下でおこなった.試料は,SiteC0002において870mbsf~3058 mbsfで得られたカッティングス試料の中から,固結したもののみを取り出したhand-picked intact cuttings試料を用いた.試験の結果,Site C0002におけるヤング率は,870mbsf~2000mbsfにかけて0.1GPaから1.5GPa程度まで増加し,その後3000mbsfまで1.5GPa程度とほぼ値が変わらないことが明らかになった.また得られた荷重―軸変位曲線より,堆積物は1200mbsf程度までは降伏応力が数MPa程度であり延性的な挙動をするのに対し,深くなるにつれて降伏応力が3000mbsfでは40MPa程度まで増加し,2000mbsf以深では降伏後の破壊に伴って顕著な応力降下が観察された.間隙圧も海底面では60%を示すものが,深くなるにつれて1500-2000mbsfでは30%程度,3000mbsfでは18%まで減少することから,力学挙動の変化は主に堆積物の圧密によるものであると考えられる.このような力学的性質は,南海付加体では地下1kmから2kmの間に,塑性―脆性遷移帯が存在する可能性を示唆している.南海地震の歪みは,このような地下2km以深の脆性域で蓄積されていると考えられる.