18:15 〜 19:30
[G02-P03] 津波からの避難先とルートを直感的に探すツールとしての詳細標高段彩図
キーワード:津波, 防災教育, 詳細標高段彩図, 宮城県, 東日本大震災
本講演では津波から身を守る避難先やルートを探すため、児童や一般住民でも短時間の学習で、直感的に取り扱うことのできる新しい手法(仮称「詳細標高段彩図」:赤色立体地図+標高段彩図)と、その活用について、実際の被災例を交えながら紹介する。
津波からの避難行動について
東日本大震災からまる4年が過ぎた。あの3.11の日、被災沿岸部の各地では様々な危機的状況が生まれ、必死の避難行動がとられた。その結果、避難に成功した事例もあれば、児童生徒を含め多くの犠牲者をだした悲劇的事例も生まれた。
避難行動の成否に関しては事前学習を含めた準備体制、避難先と避難ルートの選定、そして決断のタイミングなど多様な視点での検討が必要であろう。地学を学ぶ者としてのこれに関連した素朴な一つの疑問は、「どうして、もっと身近にある自然の地形などを有効活用した避難ができなかったのか」、と言う点である。宮城県において多くの犠牲者を出した例として気仙沼市の「杉ノ下高台」、石巻市の「大川小学校」、東松島市の「特養不老園」、山元町の「常磐山元自動車学校」などのケースが、避難に成功した例としては石巻市の「門脇小学校」、東松島市の「手作り避難所佐藤山」、仙台市の「荒浜小学校」、山元町の「中浜小学校」など多くのケースが挙げられる。これら避難行動の成否のキーポイントとして、ここでは特に“臨機応変な判断力”と“身近な自然地形などの判読とその活用”をあげたい。
津波からの避難のための自然地形などの判読とそのためのツール
前者の臨機応変な判断力については、立場によってはその後の責任問題があり実行が難しい面もあると思われるが、もし、後者の情報に確信が持てるなら、思い切った判断と行動もより容易に行えるのではないだろうか?しかし経験がない初心者には、資料として周囲の正確な地形図や空中写真が与えられたとしても、現地状況の判読とその後の判断は難しい。
そこで私たちは、最低限の学習の後、避難場所やそこへの安全なルートを直感的に探すことのできる新しい手法「詳細標高段彩図」を作成した。基本的地形データは国土地理院による、東日本大震災直後の被災沿岸部の航空レーザー測量による数値標高モデル(DEM)を用いた。仕様は1~2mメッシュ、高さの精度は±15cm程度と高精度であり、海岸平野のように低く平坦な地域であっても、そこを覆う津波に関連する状況を充分にトレースすることが可能である。これらの標高データは千葉達郎(2006)によって開発された起伏の多い地域で威力を発揮する赤色立体地図と、標高が低く起伏の少ない地形でも威力を発揮する段彩図とを組み合わせた図「詳細標高段彩図」に整理した。段彩図における標高ごとの色分けは-1m、+1m、+3mと+5m以上の4段階などとした。+5m以上は赤色立体地図となっている。製作した図はKMZファイルとして整理され、Google Earthの上で任意地域の検討を行うことができ、拡大と縮小、そしてオーバーレイ機能を使って道路や地名なども入れることができる。作成した詳細標高段彩図は岩手県釜石市~宮城県全域~福島県新地町までをカバーしている。
詳細標高段彩図に基づく避難行動の評価と今後の応用
本講演では避難行動の結果を問わず、実際時に選択された避難場所とルートの評価(ただしここでは身近な自然地形の活用という視点のみで評価する)、避難に成功したとしてもそれ以外の選択肢はなかったのかどうか、を議論したい。取り上げる具体例としては、気仙沼市波路上杉ノ下高台、石巻市大川小学校と山元町中浜小学校の3ケースに絞る。
ここで作成した詳細標高段彩図はパソコンなどで容易に閲覧でき、土地の起伏も直感的に判断でき、津波被害の解析に、そして今後の津波対策、とりわけ児童や一般向けの防災教育に活用することができるものと考えている。また、今後、東海・東南海・南海など巨大地震とそれに伴う大津波の襲来が予想されている地域では、沿岸地域に沿って同様な図を事前に作成し、後悔の少ない避難対策の立案に生かすべきだと考えている。
津波からの避難行動について
東日本大震災からまる4年が過ぎた。あの3.11の日、被災沿岸部の各地では様々な危機的状況が生まれ、必死の避難行動がとられた。その結果、避難に成功した事例もあれば、児童生徒を含め多くの犠牲者をだした悲劇的事例も生まれた。
避難行動の成否に関しては事前学習を含めた準備体制、避難先と避難ルートの選定、そして決断のタイミングなど多様な視点での検討が必要であろう。地学を学ぶ者としてのこれに関連した素朴な一つの疑問は、「どうして、もっと身近にある自然の地形などを有効活用した避難ができなかったのか」、と言う点である。宮城県において多くの犠牲者を出した例として気仙沼市の「杉ノ下高台」、石巻市の「大川小学校」、東松島市の「特養不老園」、山元町の「常磐山元自動車学校」などのケースが、避難に成功した例としては石巻市の「門脇小学校」、東松島市の「手作り避難所佐藤山」、仙台市の「荒浜小学校」、山元町の「中浜小学校」など多くのケースが挙げられる。これら避難行動の成否のキーポイントとして、ここでは特に“臨機応変な判断力”と“身近な自然地形などの判読とその活用”をあげたい。
津波からの避難のための自然地形などの判読とそのためのツール
前者の臨機応変な判断力については、立場によってはその後の責任問題があり実行が難しい面もあると思われるが、もし、後者の情報に確信が持てるなら、思い切った判断と行動もより容易に行えるのではないだろうか?しかし経験がない初心者には、資料として周囲の正確な地形図や空中写真が与えられたとしても、現地状況の判読とその後の判断は難しい。
そこで私たちは、最低限の学習の後、避難場所やそこへの安全なルートを直感的に探すことのできる新しい手法「詳細標高段彩図」を作成した。基本的地形データは国土地理院による、東日本大震災直後の被災沿岸部の航空レーザー測量による数値標高モデル(DEM)を用いた。仕様は1~2mメッシュ、高さの精度は±15cm程度と高精度であり、海岸平野のように低く平坦な地域であっても、そこを覆う津波に関連する状況を充分にトレースすることが可能である。これらの標高データは千葉達郎(2006)によって開発された起伏の多い地域で威力を発揮する赤色立体地図と、標高が低く起伏の少ない地形でも威力を発揮する段彩図とを組み合わせた図「詳細標高段彩図」に整理した。段彩図における標高ごとの色分けは-1m、+1m、+3mと+5m以上の4段階などとした。+5m以上は赤色立体地図となっている。製作した図はKMZファイルとして整理され、Google Earthの上で任意地域の検討を行うことができ、拡大と縮小、そしてオーバーレイ機能を使って道路や地名なども入れることができる。作成した詳細標高段彩図は岩手県釜石市~宮城県全域~福島県新地町までをカバーしている。
詳細標高段彩図に基づく避難行動の評価と今後の応用
本講演では避難行動の結果を問わず、実際時に選択された避難場所とルートの評価(ただしここでは身近な自然地形の活用という視点のみで評価する)、避難に成功したとしてもそれ以外の選択肢はなかったのかどうか、を議論したい。取り上げる具体例としては、気仙沼市波路上杉ノ下高台、石巻市大川小学校と山元町中浜小学校の3ケースに絞る。
ここで作成した詳細標高段彩図はパソコンなどで容易に閲覧でき、土地の起伏も直感的に判断でき、津波被害の解析に、そして今後の津波対策、とりわけ児童や一般向けの防災教育に活用することができるものと考えている。また、今後、東海・東南海・南海など巨大地震とそれに伴う大津波の襲来が予想されている地域では、沿岸地域に沿って同様な図を事前に作成し、後悔の少ない避難対策の立案に生かすべきだと考えている。