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[SVC47-08] 草津白根火山殺生溶岩の斑晶化学組成と微細構造から推定されるマグマ混合と安山岩形成プロセス
キーワード:溶岩, 輝石温度計, 結晶サイズ分布, 安山岩, 噴火, 活火山
本研究では、草津白根山殺生溶岩の斑晶組成と微細構造を用いて、草津白根山の安山岩マグマの形成・結晶化プロセスの考察を行った。本研究の対象とした草津白根火山は群馬県に位置し、約57万年前に活動を開始した活火山である(早川・由井、1989)。殺生溶岩は約5000年前に本白根山から噴出したと推定されている(吉本ほか、 2013)、SiO2含有量60?63 wt。 %の安山岩溶岩である (上木・寺田、 2012など)。本研究では、噴火前の単独のマグマだまりの物理化学環境を制約するために、明らかに一連のイベントで噴出したことが明確であり、噴出時期が明らかになっている殺生溶岩を対象として、一連の噴出物の微細構造の分析を行った。
殺生溶岩に含まれる斑晶鉱物は、斜長石+単斜輝石+斜方輝石+磁鉄鉱±かんらん石であった。かんらん石のFo値は80前後と、母岩とは非平衡な組成を示し、反応縁を持っていた。このかんらん石と同一のサンプルから、磁鉄鉱と斜方輝石のラメラ状組織を持つシンプレクタイトが確認された。このシンプレクタイトは一般的には、かんらん石の急激な酸化によって生成されると推定されている(たとえばGoode、 1974)。 このシンプレクタイト内の斜方輝石は、通常の斜方輝石より屈折率が低い特徴を示した。
単斜輝石と斜方輝石ペアのリム組成と輝石温度計 (Lindsley、 1983) を用いて推定した温度は、700~800℃および1000℃となった。1枚の薄片の中でも異なる温度を示す輝石のペアが見られた。1000℃を示した斜方輝石と単斜輝石の全主要元素を他の輝石と比較した結果、1000℃を示す輝石のリム部分はAl含有量などで他の輝石とは異なる組成を示す一方、コア部分は低温の輝石とほぼ同じ値を示した。このことから、高温の輝石は、マグマ噴出直前まで温度も化学組成も周囲の輝石とは異なるマグマ内で成長したことがわかる。
EPMAによる組成累帯構造の分析、SEMと偏光顕微鏡による構造と外形の観察に基づいて、斜長石は4種類に分類された。タイプ1の斜長石は自形でAn値が55?65のクリアなコアを持つ。タイプ2の斜長石は自形で、An値が50?80のオシラトリーゾーニングを示すコアを持つ。タイプ3の斜長石は汚濁帯からなるAn値が80~90のコアと、丸みを帯びた外形を持つ。タイプ4の斜長石はAn値が55?80のオシラトリーゾーニングを示すクリアーなコアを、汚濁帯からなるAn値が80~90のマントル部が取り囲む構造を示す。すべての斜長石は厚さ~50μmでAn値が60~80のリムを持つ。このリムは石基の微斑晶斜長石と同様の組成を持っており、噴火時の急冷減圧で結晶化した部分だと推定される。タイプ3とタイプ4の汚濁帯部分は他の部分やタイプ1、2と比べて高いMgOとFeO含有量を持ち、これらの元素の含有量が高いマグマから結晶化したことを示す。タイプ1とタイプ2の斜長石の長軸の長さは~1。5 mmであり、タイプ3、4(~1mm)と比べて大きかった。結晶サイズ分布 (CSD) を測定した結果、この境界付近に変曲点が存在することから、タイプ1、2とタイプ3、4の斜長石は異なる物理条件で結晶化したことが示唆される。クリアな斜長石(タイプ1)は低温で分化したマグマでの結晶化を、汚濁帯からなる斜長石(タイプ3)は高温で比較的未分化なマグマでの結晶化を表していると推定される。オシラトリーゾーニング(タイプ2)やダスティなマントル部(タイプ4)、高温の輝石のリムの存在は、高温マグマとこれらの斑晶が直接反応していたことを示すと考えられる。
これらの斑晶に基づく観察から、草津白根山の殺生溶岩をもたらしたマグマだまりでは複数回のマグマ混合プロセスが起きていたことが示唆される。結晶化が進んだマグマだまりに、かんらん石や高An値の斜長石を含む高温マグマが複数回貫入することで、不均質で、結晶に富んだ安山岩質マグマが生成されたと考えられる。
殺生溶岩に含まれる斑晶鉱物は、斜長石+単斜輝石+斜方輝石+磁鉄鉱±かんらん石であった。かんらん石のFo値は80前後と、母岩とは非平衡な組成を示し、反応縁を持っていた。このかんらん石と同一のサンプルから、磁鉄鉱と斜方輝石のラメラ状組織を持つシンプレクタイトが確認された。このシンプレクタイトは一般的には、かんらん石の急激な酸化によって生成されると推定されている(たとえばGoode、 1974)。 このシンプレクタイト内の斜方輝石は、通常の斜方輝石より屈折率が低い特徴を示した。
単斜輝石と斜方輝石ペアのリム組成と輝石温度計 (Lindsley、 1983) を用いて推定した温度は、700~800℃および1000℃となった。1枚の薄片の中でも異なる温度を示す輝石のペアが見られた。1000℃を示した斜方輝石と単斜輝石の全主要元素を他の輝石と比較した結果、1000℃を示す輝石のリム部分はAl含有量などで他の輝石とは異なる組成を示す一方、コア部分は低温の輝石とほぼ同じ値を示した。このことから、高温の輝石は、マグマ噴出直前まで温度も化学組成も周囲の輝石とは異なるマグマ内で成長したことがわかる。
EPMAによる組成累帯構造の分析、SEMと偏光顕微鏡による構造と外形の観察に基づいて、斜長石は4種類に分類された。タイプ1の斜長石は自形でAn値が55?65のクリアなコアを持つ。タイプ2の斜長石は自形で、An値が50?80のオシラトリーゾーニングを示すコアを持つ。タイプ3の斜長石は汚濁帯からなるAn値が80~90のコアと、丸みを帯びた外形を持つ。タイプ4の斜長石はAn値が55?80のオシラトリーゾーニングを示すクリアーなコアを、汚濁帯からなるAn値が80~90のマントル部が取り囲む構造を示す。すべての斜長石は厚さ~50μmでAn値が60~80のリムを持つ。このリムは石基の微斑晶斜長石と同様の組成を持っており、噴火時の急冷減圧で結晶化した部分だと推定される。タイプ3とタイプ4の汚濁帯部分は他の部分やタイプ1、2と比べて高いMgOとFeO含有量を持ち、これらの元素の含有量が高いマグマから結晶化したことを示す。タイプ1とタイプ2の斜長石の長軸の長さは~1。5 mmであり、タイプ3、4(~1mm)と比べて大きかった。結晶サイズ分布 (CSD) を測定した結果、この境界付近に変曲点が存在することから、タイプ1、2とタイプ3、4の斜長石は異なる物理条件で結晶化したことが示唆される。クリアな斜長石(タイプ1)は低温で分化したマグマでの結晶化を、汚濁帯からなる斜長石(タイプ3)は高温で比較的未分化なマグマでの結晶化を表していると推定される。オシラトリーゾーニング(タイプ2)やダスティなマントル部(タイプ4)、高温の輝石のリムの存在は、高温マグマとこれらの斑晶が直接反応していたことを示すと考えられる。
これらの斑晶に基づく観察から、草津白根山の殺生溶岩をもたらしたマグマだまりでは複数回のマグマ混合プロセスが起きていたことが示唆される。結晶化が進んだマグマだまりに、かんらん石や高An値の斜長石を含む高温マグマが複数回貫入することで、不均質で、結晶に富んだ安山岩質マグマが生成されたと考えられる。