日本地球惑星科学連合2015年大会

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インターナショナルセッション(口頭発表)

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-DS 防災地球科学

[H-DS07] Natural hazards impacts on the society, economics and technological systems

2015年5月25日(月) 11:00 〜 11:45 203 (2F)

コンビーナ:*ELENA PETROVA(Lomonosov Moscow State University, Faculty of Geography)、Hajime Matsushima(Research Faculty of Agriculture, Hokkaido University)、座長:松島 肇(北海道大学大学院農学研究院)

11:00 〜 11:15

[HDS07-05] 河口形態の違いによる植生形成と放射能蓄積の違い

野原 精一1、*金子 是久2 (1.独立行政法人 国立環境研究所、2.公益財団法人 日本生態系協会)

キーワード:放射性核種, 河口形態, 空間線量率, 植物群落, バイオマス, 塩分

1.はじめに
2011年3月11日に発生した東京電力福島第一原子力発電所の事故により、大量の放射性核種(131I、134Cs、137Cs等)が環境中に放出された。特に、河口部おいては、流域全体からの集水により土砂の堆積、放射能物質の蓄積が生じやすく、河口形態の違いによる影響を受けると考えられる。しかし、これらについて詳細に検討した例は少ない。
本研究では、河口形態の異なる真野川と新田川を対象に、堤外地における主要な植物群落の生育環境(群落構成種、土壌、空間線量率)、137Cs吸収特性を調査し、植物の放射能汚染に及ぼす影響について明らかにすることを目的とする。

2.調査地および調査方法
調査地は、福島県南相馬市に位置する2級河川の新田川(河口閉塞型)、真野川(河口開放型)とした。調査範囲は、両河川とも河口、中流、上流(可動堰の上流)に分布する各植物群落を対象とした。調査は、植物の繁茂期である2013年6月に実施した。
調査方法については、代表群落ごとに5方形区をダンポールでマークし、GPS測量を行った。各方形区内は、空間線量を測定し、その後、底質コアを表層から約30cmの深さまで塩ビパイプで採取して層状態を維持したまま密栓して持ち帰り、コアの穴の間隙水の塩分(電気伝導度)、pHを測定した。地上部現存量は、各方形区において(0.5m*0.5m)の地上部植物を刈り取り、計量した。

3.結果および考察
主要な植物群落(ヨシ、ヒメガマ、オギ)のバイオマス量は、河口付近では新田川の方が高かった。両河川の各群落内の空間線量率を比較すると、ヨシ群落は新田川の方が河口側で高く、ヒメガマ群落は大きな違いは見られず、オギ群落は新田川の方が全体的に高かった。新田川は、河口閉塞による海水溯上の抑制で淡水性感潮域となり、上流から供給された土砂の堆積により土壌中の栄養塩が高くなり、ヨシ、オギが成長したと考えられる。それと同時に放射能物質も蓄積したことで、植物群落内の空間線量率が高くなったと考えられる。一方、真野川は河口閉塞がなく洪水時には土砂が流出しやすい。満潮時に海水が溯上するため、塩分抑制によりヨシ群落の密度が低下し土砂堆積が少なく、空間線量率が新田川に比べて低いと考えられる。ヒメガマ群落は、ヨシ群落に比べて群落密度が低く、河川流速が低下することなしに土砂堆積が少なく、群落内における空間線量の蓄積量がヨシ群落、オギ群落に比べて低かったと考えられる。