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[PEM27-P15] S-520-29号機観測ロケットによる電波伝搬特性解析
キーワード:観測ロケット, 電波伝搬, ドップラーシフト, スポラディックE層
2014年8月17日19時10分(JST)に鹿児島県内之浦宇宙空間観測所でS-520-29号機観測ロケット実験が行われた.本観測ロケット実験は,電離圏下部高度100km付近に出現するスポラディックE層を立体的に観測することが目的である.そのために,3つの手法を用いて観測が行われた.1つ目は,光学的な観測による手法でスポラディックE層中の鉄イオンやマグネシウムイオンなどの金属イオンが太陽光を受け,共鳴散乱により発する紫外光をイメージャにより観測する. 2つ目は,電波を用いる手法で地上から送信される様々な電波のうち中波帯および長波帯の電波をロケットで受信する.そこで得られた強度変化から電波伝搬特性や垂直方向の電子密度分布を推定する.3つ目は,ラングミューアプローブとインピーダンスプローブを用いた手法でロケット近傍の電子密度測定を行う.本研究では,2つ目の電波観測を担当した.本観測ロケットには,2つ目の手法である長・中波帯電波の観測を目的として,長・中波帯電波受信機(LMR)を搭載し,ロケット飛翔中の長・中波帯電波の受信強度を観測した.LMRのアンテナには3 軸のループアンテナを使用している.LMRは,地上から873kHz(NHK 熊本第2 放送),666kHz(NHK大阪第1放送),60kHz(標準電波)の3周波数電波の受信を行った.873kHz電波,60kHz電波はロケットの飛翔経路に対して北側から,666kHz電波はロケットの飛翔経路に対して東側から到来している.このように伝搬経路の異なる電波を同時観測することにより,スポラディックE層の位置と大きさについても調査を行うことが出来る.観測ロケット実験においてLMRは正常に動作し,受信強度観測を無事完了した.電波伝搬特性の解析は,周波数解析により受信電波を特性波に分離し,分離したデータからドップラーシフトを計算することにより行う.観測ロケットが受信する電波は,地球磁場の向きと偏波の旋性およびロケットスピンによってドップラーシフトを受ける.このため周波数解析により受信した電波を特性波に分離することで,ドップラーシフトを計算することが可能である.ここで得られたドップラーシフトからbookerの方程式を用いて電子密度の高度分布を推定する.周波数解析による特性波の分離観測の結果,873kHz,666kHz電波は電離層で完全反射され,60kHz電波はモード変換により,ホイッスラーモードとなって観測ロケット最高高度まで伝搬していることが判明した.その後,それぞれの電波強度から計算したドップラーシフトを用いて電子密度推定を行った.本発表では,観測ロケット実験の観測結果と解析結果について速報を報告する.