日本地球惑星科学連合2015年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-TT 計測技術・研究手法

[S-TT53] 地震観測・処理システム

2015年5月24日(日) 16:15 〜 18:00 202 (2F)

コンビーナ:*中村 洋光(防災科学技術研究所)、座長:木村 武志(防災科学技術研究所)、松岡 英俊(気象庁地震火山部)

17:48 〜 17:51

[STT53-P06] 2011年東北地方太平洋沖地震前のF-netとHi-netの稼働状況の相違

ポスター講演3分口頭発表枠

*末 芳樹

キーワード:F-net, Hi-net, 地震計, 稼働率, 地震観測網

1.はじめに
主題地震前の地震観測網の挙動に関しては、広帯域地震観測網F-netの連続波形画像の欠測数が増加したことを既に報告した(末, 2013)。
地震調査研究推進本部の資料にF-netと高感度地震観測網Hi-netの稼働率が同時に示されている。そこで、この資料により更なる調査を行った。

2.調査結果
図1に2009年4月より2012年3月までのF-netとHi-netの稼働率の推移を示す。図は以下の変化を示している。
・ 2009年4月より2010年11月までの1年半以上の期間に於いて、F-netの稼働率は多少低下する期間はあったものの100%に近かった。
・ 2010年12月より継続的な低下を示し、2011年1月に極小値をとった。
・ その後、上昇したが従来より低い値で推移した。
・ 2011年2月より低下し、2度目の極小値をとった。
・ その後、上昇したが従来より低い値であり、この状態で3月11日の本震(以降3.11地震)に遭遇した。
・ 2011年5月頃に従来の状態に戻った。
・ Hi-netはこの期間、3.11地震の当日及びひと月後を除いて一定の値であった。

3.問題点の抽出
上記に関し注目すべき点は以下の通りである
・ なぜ1年半以上に亘り安定していたF-netの稼働率が、3.11地震の凡そ3ヶ月前から継続的に低下したのか?
・ なぜF-netの稼働率の低下の最中にその値が上下したのか?
・ さらに、なぜF-netとHi-netの稼働率に差があるのか?

4.推論
マグニチュード=9.0の巨大地震の数ヶ月前から地表面に何らかの動きが発生した。この動きに関しては、振動あるいは変位と推測する。F-netとHi-netの挙動に差が生じたのは、F-netを構成する地震計の固有周期が360秒(STS-1型)および120秒(STS-2型)であり広帯域の動きに反応するのに対し、Hi-netの地震計のそれは1秒であり比較的早い動きに反応するという特性上の違いがあり、地震の前にはゆっくりした動きのみが存在した為にF-netのみが反応したと推測している。F-netの欠測情報によると、欠測の主な理由は、electric power supply troubleであった。
尚、図に示されているF-netの稼働率は、論者作成のF-netの連続波形画像の欠測状況の図(末、2013)と同様の様態である。この理由は、稼働率に著しい影響を与えるのは、連続波形画像の欠測として示される観測点の長期欠測であり、両者が本質的に同じ状態量を観測している為と推測している。


謝辞: 本研究には、防災科学技術研究所のF-netおよびHi-netのデータを使用しました。記して感謝いたします。

参考文献:
末芳樹, 2013, 2011年東北地方太平洋沖地震に先行したF-net連続波形画像の欠測増加, JpGU2013 SSS30 P01.

地震調査研究推進本部政策委員会, 2013, 第62回調査観測計画部会議資料 計62-(5), 防災科学技術研究所の地震観測網. http://www.jishin.go.jp/main/seisaku/hokoku13k/k62-5.pdf




図の説明
図1 F-netとHi-netの稼働率(出典 防災科学技術研究所の地震観測網)
F-netの稼働率は、2011年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震の凡そ3ヶ月前から地震後まで継続して低下している。Hi-netにはその様な変化は見られない。