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[G04-P01] 地磁気異常の縞模様を観察できる「海底磁化モデル」の製作と解析
キーワード:地磁気異常, 縞模様, 海洋底拡大説, 教育, 高校
大陸移動説が「プレートテクトニクス」へ発展する過程で,Vine&Mathews(1963)らによる海底地磁気異常の縞模様の解釈(いわゆるテープレコーダーモデル)の果たした役割は大変大きく,高校地学の教科書でも大きく取り上げられてきた.しかしその肝心の地磁気異常の内容にまで詳しく踏み込んだ解説はあまり見られない.これがせっかく地球科学における重要な仮説としての「大陸移動説」の学問的な進化を教室で実感を持って捉える場合のネックになっていると筆者らは考えた.そこで,この地磁気異常の縞模様を再現するための,教室の机上で観察可能な「海底磁気モデル」を安価で身近な材料を用いて製作したので,報告する.モデルは発泡スチロール板(600x900x30mm)とその表面に整列させて刺した多数の磁化させた釘からなる.釘はあらかじめ手持ちの永久磁石で,正逆方向に磁化させておきそれぞれを離しておく.発泡スチロール板に縞模様を作るために,左右対称に養生テープを離して張る.この中央海嶺近くの海底を模した板に,上記の釘を規則的に格子状に整列させて挿していく.当然縞模様に沿って2種類の釘を使い分ける.次にこのモデルの上方に透明アクリル板を置き,地磁気を測定する海上を模したものとする.地磁気が測定できる精度の「テスラメータ(ガウスメータ)」のセンサを透明アクリル板の上方から垂直に下ろし,アクリル板上でモデルの一方向にゆっくりと移動させながら,中央海嶺上を横断して行われる船による地磁気の全磁力(あるいは鉛直成分)測定の再現観察を行う.測定結果を生徒と確認し,実際の測定データが載っている元論文の図などと比較し,どこが同じでどこが異なるかを議論する.このモデルでは,磁化された釘による磁界が地磁気に加わり,地磁気と同じ方向に磁化させた釘の上方部分では地磁気が強まり逆に磁化させた釘の部分では地磁気が弱まることが,数値と波形の両方で容易に観察され,教材として大変効果的であることが確認できた.またテスラメータは高価であるために,代替品としてスマートフォンに搭載された地磁気センサと無料配布の地磁気測定アプリを使用してみたが,教材として充分な精度で測定が可能であることもわかった.講演当日は詳細なデータ解析の紹介と教材の実物を用いた測定のデモンストレーションを実施する予定である.