18:15 〜 19:30
[PEM08-P02] Van Allen Probes 衛星観測結果に基づく小規模磁気嵐における放射線帯電子フラックス変動のエネルギー依存性についての研究
キーワード:放射線帯, 磁気嵐, Van Allen Probes, ホイッスラーモード・コーラス
本研究は Van Allen Probes 衛星によるその場観測結果に基づいて、小規模磁気嵐時における放射線帯電子の位相空間密度の時空間変動とその物理過程について議論する。
地球の内部磁気圏には、放射線帯と呼ばれる、相対論的なエネルギーを持つ粒子が地球の磁場に捕捉された領域が存在する。特に電子の放射線帯については、相対論的電子フラックスの典型的な動径分布が、1.5 RE(RE は地球半径) でフラックスが最大となる内帯と、4.0 RE 付近で最大となる外帯とに分けられ、二つのベルト構造を成している。放射線帯外帯電子フラックスは磁気嵐の発生により大きく変動し、磁気嵐の主相においてフラックスは減少することが明らかとなっている。その一方で、回復相でのフラックスの変動に関しては、磁気嵐前より増大する場合、減少する場合、あるいは磁気嵐前と同程度まで回復する場合など、磁気嵐によって異なる様相を示すことが明らかとなっている[Reeves et al., 2003]。主相におけるフラックスの減少は、磁気圏の圧縮に伴う磁気圏界面からの惑星間空間への流出や、プラズマ波動との共鳴によりピッチ角散乱を受けることに起因した大気への降下と消失により説明される。また、回復相でのフラックスの増大は、磁気圏夜側からの動径方向輸送とそれに伴う断熱加速過程と、放射線帯領域で発生するプラズマ波動による非断熱加速過程によると考えられている。これらの過程による相対論的電子フラックスの変動は磁気嵐が小規模(Dst~-50nT)である場合にも観測されており、小規模な磁気嵐における変動の特徴をより詳しく解析することで、放射線帯全体の変動を理解する上で重要な知見が得られると期待される。
本研究では、2013年4月24日に発生した磁気嵐での放射線帯電子の変動を議論する。対象とする期間におけるDst指数の最小値は-50nTである。解析には Van Allen Probes 衛星に搭載された Relativistic Electron-Proton Telescope(REPT)[Baker et al., 2012]とMagnetic Electron Ion Spectrometer(MagEIS)[Blake et al., 2012]による電子フラックス、ならびにElectric and Magnetic Field Instrument Suite and Integrated Science(EMFISIS)[Kletzing et al., 2012] によるプラズマ波動と背景磁場の観測結果、そして位相空間密度の解析に用いる第二断熱不変量Kと第三断熱不変量L*はECTのScience Operation Centerで提供されている値を用いた。まず、解析対象とした期間における位相空間密度の動径方向分布について、異なる第一断熱不変量(μ)ごとに解析を行った。次に、プラズマ波動磁場成分の強度をホイッスラーモード・コーラス放射の典型的な発生周波数範囲であるサイクロトロン周波数の0.1倍から0.5倍(0.1fce~0.5fce)の帯域で積分し、波動強度の時間・空間変化と位相空間密度の分布との対応を解析した。その結果、磁気嵐の主相から回復相の初期において、波動強度と位相空間密度の空間分布に対応が見られていることが明らかとなった。また、μが3000 MeV/G以上の値を持つ粒子について、位相空間密度の分布が回復相の中盤(4/26~)に顕著な変動が見出された。変動量を定量的に検討した結果、L*=4.6~4.9において、回復相初期(4/24 22:00~4/25 02:00)では1 MeV程度(μ≦600)の粒子の位相空間密度は磁気嵐前と比較して10倍以上の値を示しているのに対して、2 MeV以上の粒子の位相空間密度は磁気嵐前より低い値を示しており、しばらく緩やかに増加し、4/26 04:00~09:00の間で10倍程度の急激な増加を示していることが示された。この増加過程を理解するために、イベント発生時の内部磁気圏のプラズマ環境の詳細と、プラズマ波動のスペクトル強度を解析し、特に相対論的電子の加速過程に寄与していると考えられるコーラス放射の波動強度と位相空間密度の対応を議論する。
地球の内部磁気圏には、放射線帯と呼ばれる、相対論的なエネルギーを持つ粒子が地球の磁場に捕捉された領域が存在する。特に電子の放射線帯については、相対論的電子フラックスの典型的な動径分布が、1.5 RE(RE は地球半径) でフラックスが最大となる内帯と、4.0 RE 付近で最大となる外帯とに分けられ、二つのベルト構造を成している。放射線帯外帯電子フラックスは磁気嵐の発生により大きく変動し、磁気嵐の主相においてフラックスは減少することが明らかとなっている。その一方で、回復相でのフラックスの変動に関しては、磁気嵐前より増大する場合、減少する場合、あるいは磁気嵐前と同程度まで回復する場合など、磁気嵐によって異なる様相を示すことが明らかとなっている[Reeves et al., 2003]。主相におけるフラックスの減少は、磁気圏の圧縮に伴う磁気圏界面からの惑星間空間への流出や、プラズマ波動との共鳴によりピッチ角散乱を受けることに起因した大気への降下と消失により説明される。また、回復相でのフラックスの増大は、磁気圏夜側からの動径方向輸送とそれに伴う断熱加速過程と、放射線帯領域で発生するプラズマ波動による非断熱加速過程によると考えられている。これらの過程による相対論的電子フラックスの変動は磁気嵐が小規模(Dst~-50nT)である場合にも観測されており、小規模な磁気嵐における変動の特徴をより詳しく解析することで、放射線帯全体の変動を理解する上で重要な知見が得られると期待される。
本研究では、2013年4月24日に発生した磁気嵐での放射線帯電子の変動を議論する。対象とする期間におけるDst指数の最小値は-50nTである。解析には Van Allen Probes 衛星に搭載された Relativistic Electron-Proton Telescope(REPT)[Baker et al., 2012]とMagnetic Electron Ion Spectrometer(MagEIS)[Blake et al., 2012]による電子フラックス、ならびにElectric and Magnetic Field Instrument Suite and Integrated Science(EMFISIS)[Kletzing et al., 2012] によるプラズマ波動と背景磁場の観測結果、そして位相空間密度の解析に用いる第二断熱不変量Kと第三断熱不変量L*はECTのScience Operation Centerで提供されている値を用いた。まず、解析対象とした期間における位相空間密度の動径方向分布について、異なる第一断熱不変量(μ)ごとに解析を行った。次に、プラズマ波動磁場成分の強度をホイッスラーモード・コーラス放射の典型的な発生周波数範囲であるサイクロトロン周波数の0.1倍から0.5倍(0.1fce~0.5fce)の帯域で積分し、波動強度の時間・空間変化と位相空間密度の分布との対応を解析した。その結果、磁気嵐の主相から回復相の初期において、波動強度と位相空間密度の空間分布に対応が見られていることが明らかとなった。また、μが3000 MeV/G以上の値を持つ粒子について、位相空間密度の分布が回復相の中盤(4/26~)に顕著な変動が見出された。変動量を定量的に検討した結果、L*=4.6~4.9において、回復相初期(4/24 22:00~4/25 02:00)では1 MeV程度(μ≦600)の粒子の位相空間密度は磁気嵐前と比較して10倍以上の値を示しているのに対して、2 MeV以上の粒子の位相空間密度は磁気嵐前より低い値を示しており、しばらく緩やかに増加し、4/26 04:00~09:00の間で10倍程度の急激な増加を示していることが示された。この増加過程を理解するために、イベント発生時の内部磁気圏のプラズマ環境の詳細と、プラズマ波動のスペクトル強度を解析し、特に相対論的電子の加速過程に寄与していると考えられるコーラス放射の波動強度と位相空間密度の対応を議論する。