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[SGL40-05] 三浦半島南端部三崎層中のデュープレックスと地質構造再訪
キーワード:城ケ島, 三崎層, デュープレックス, スラストシステム, 断層伝播褶曲
神奈川県の三浦半島南端部に位置する城ケ島の地質構造は、小玉(1968)の歴史的な論文以来、多くの人々によって研究されてきた。筆者らはこの40年来その周辺部を含む三浦層群三崎層相当層を調査してきた(Ogawa & Taniguchi 1988; Hanamura & Ogawa, 1993; Yamamoto et al., 2009ほか)が、今般独自に再訪し、多くのデュープレックスなどの地質構造を観察した。論点は以下のようである。
1)剱崎付近の背斜向斜は、そのまま城ケ島(通り矢)へ伸びるわけではなく、北西方へ杉型雁行状に配列する。それらの背斜は南翼が急傾斜、北翼が緩傾斜であり、雁行状配列とともに、南海トロフの付加体先端部付近の地質構造(Kawamura et al., 2009; Anma et al., 2011)に類似する。
2)通り矢背斜は南へ大きく転倒し、逆断層(地層が水平時の形成を仮定)が南北両翼に数多く発達する。背斜南翼からさらにその南方への向斜へかけての安房崎では多くのデュープレックスや逆断層が発達し、大規模な断層伝播褶曲(fault-propagation fold)ととらえられ、Yamamoto et al. (2005)の浅間スラストに比せられる。
3)城ケ島の西部、浜諸磯、宮川などでは、多くのスラストデュープレックスが発達する。しかし、すべてが南フェルゲンツとは限らず、北フェルゲンツのものもあり、これも南海トロフ付加体先端部に類似する。また、地層に低角の共役逆断層群も多い。それらのP軸は見かけ上北西方を向き、地層が水平時の形成を仮定すると、ほぼ水平面上にある(Ogawa & Horiuchi, 1978)。
4)いくつかのデュープレックスは、三崎層の付加体形成の際のbasal decollementから分岐するスラストに沿う、地層にほぼ平行なスリップによるものと考えられが、それ以前に、スランプあるいは液状化堆積物ないし泥ダイアピルとの関連で発達するものもあり、デュープレックスの起源にはテクトニック以外のものも考えられる。
5)安房崎では、三崎層が上位の初声層の土石流堆積物によって、斜交不整合状に300 m以上も削られている。ただし、地層に中庸で斜交する逆断層は、この削り込みをもずらしている。初声層は、安房崎の一部では急傾斜であるが、基本的に緩傾斜、浅海での堆積を示す(Stow et al., 1998)。しかし、下位層の三崎層がすでに30度以上の傾斜をしていたことから、通り矢背斜と関連する構造形成は、初声層堆積当初から始まっていたことが分かる。
6)全体に、N-SないしN30E 方向の左ずれの断層群がこれらの構造を切っており、三浦半島から相模トロフへかけての全体の構造に一致し、東京湾の形成(森ほか, 2010)も、それに関連する。以上のように、三浦半島南端部は、房総半島南端部でのテクトニクス同様(Yamamoto, 2005; Yamamoto et al., 2009; Michiguchi and Ogawa, 2011)、南海トロフ付加体との類似で議論される。
(文献)Anma et al. 2011 Springer Solid Earth 8, 169-196; Kawamura et al. 2009 GSAB 121, 1629-1646 doi: 10.1130/B26219.1; Hanamura & Ogawa 1993 IA 3, 126-141; 小玉,1968地質学雑誌74, 265-278; Michiguchi & Ogawa 2011 Springer Solid Earth 8, 229-246; 2009; GSASP480 249-262, doi:10.1130/2011.2480(12); 森ほか 2010 地学雑誌119, 585-614; Ogawa & Horiuchi 1978 Jour. Phys. Earth, 26, Suppl., S321-336; Michiguchi & Ogawa 2011 GSASP 480480, 249-262; Ogawa & Taniguchi 1988 Modern Geol. 12, 147-168; Stow et al. 1998 Sediment. Geol. 115, 351-381; Yamamoto et al. 2000 Tectonoph 325, 133-144; Yamamoto et al. 2005 Tectonics, 24, TC5008, doi:10.1029/2005TC001823; Yamamoto et al. 2009 Island Arc 18, 496-512.
1)剱崎付近の背斜向斜は、そのまま城ケ島(通り矢)へ伸びるわけではなく、北西方へ杉型雁行状に配列する。それらの背斜は南翼が急傾斜、北翼が緩傾斜であり、雁行状配列とともに、南海トロフの付加体先端部付近の地質構造(Kawamura et al., 2009; Anma et al., 2011)に類似する。
2)通り矢背斜は南へ大きく転倒し、逆断層(地層が水平時の形成を仮定)が南北両翼に数多く発達する。背斜南翼からさらにその南方への向斜へかけての安房崎では多くのデュープレックスや逆断層が発達し、大規模な断層伝播褶曲(fault-propagation fold)ととらえられ、Yamamoto et al. (2005)の浅間スラストに比せられる。
3)城ケ島の西部、浜諸磯、宮川などでは、多くのスラストデュープレックスが発達する。しかし、すべてが南フェルゲンツとは限らず、北フェルゲンツのものもあり、これも南海トロフ付加体先端部に類似する。また、地層に低角の共役逆断層群も多い。それらのP軸は見かけ上北西方を向き、地層が水平時の形成を仮定すると、ほぼ水平面上にある(Ogawa & Horiuchi, 1978)。
4)いくつかのデュープレックスは、三崎層の付加体形成の際のbasal decollementから分岐するスラストに沿う、地層にほぼ平行なスリップによるものと考えられが、それ以前に、スランプあるいは液状化堆積物ないし泥ダイアピルとの関連で発達するものもあり、デュープレックスの起源にはテクトニック以外のものも考えられる。
5)安房崎では、三崎層が上位の初声層の土石流堆積物によって、斜交不整合状に300 m以上も削られている。ただし、地層に中庸で斜交する逆断層は、この削り込みをもずらしている。初声層は、安房崎の一部では急傾斜であるが、基本的に緩傾斜、浅海での堆積を示す(Stow et al., 1998)。しかし、下位層の三崎層がすでに30度以上の傾斜をしていたことから、通り矢背斜と関連する構造形成は、初声層堆積当初から始まっていたことが分かる。
6)全体に、N-SないしN30E 方向の左ずれの断層群がこれらの構造を切っており、三浦半島から相模トロフへかけての全体の構造に一致し、東京湾の形成(森ほか, 2010)も、それに関連する。以上のように、三浦半島南端部は、房総半島南端部でのテクトニクス同様(Yamamoto, 2005; Yamamoto et al., 2009; Michiguchi and Ogawa, 2011)、南海トロフ付加体との類似で議論される。
(文献)Anma et al. 2011 Springer Solid Earth 8, 169-196; Kawamura et al. 2009 GSAB 121, 1629-1646 doi: 10.1130/B26219.1; Hanamura & Ogawa 1993 IA 3, 126-141; 小玉,1968地質学雑誌74, 265-278; Michiguchi & Ogawa 2011 Springer Solid Earth 8, 229-246; 2009; GSASP480 249-262, doi:10.1130/2011.2480(12); 森ほか 2010 地学雑誌119, 585-614; Ogawa & Horiuchi 1978 Jour. Phys. Earth, 26, Suppl., S321-336; Michiguchi & Ogawa 2011 GSASP 480480, 249-262; Ogawa & Taniguchi 1988 Modern Geol. 12, 147-168; Stow et al. 1998 Sediment. Geol. 115, 351-381; Yamamoto et al. 2000 Tectonoph 325, 133-144; Yamamoto et al. 2005 Tectonics, 24, TC5008, doi:10.1029/2005TC001823; Yamamoto et al. 2009 Island Arc 18, 496-512.