日本地球惑星科学連合2015年大会

講演情報

ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-GL 地質学

[S-GL39] 地球年代学・同位体地球科学

2015年5月24日(日) 18:15 〜 19:30 コンベンションホール (2F)

コンビーナ:*田上 高広(京都大学大学院理学研究科)、佐野 有司(東京大学大気海洋研究所海洋地球システム研究系)

18:15 〜 19:30

[SGL39-P01] ジルコン中のアルファリコイルトラック観察の試み

*長谷部 徳子1小坂 明弓1伊藤 健太郎1福間 剛志1松木 篤1 (1.金沢大学)

キーワード:放射線損傷, 原子間力顕微鏡, アルファリコイルトラック, フィッショントラック, ジルコン

重元素が放射壊変する際に結晶中に残される放射線損傷を利用する放射年代測定にフィッショントラック(FT)法やアルファリコイルトラック(ART)法がある。ARTは238U,235U,232Thやその娘核種がα線を放出した際に残った原子核がその反動で動くためにできる損傷である。FTに比してサイズが小さいためその観察は難しく,これまでは主として雲母類での観察例があるのみであった。ウラン濃度の高いジルコンでART法が確立できれば数千年オーダーの第四紀試料の年代測定を可能にできる。
原子間力顕微鏡を利用し,ジルコン表面を観察したところ,約33MaのFT年代を示す試料で,FT以外にも10ナノ程度の深さの凹みが多数存在し,表面に波状の高低差が生じていた。この波状構造は試料を600℃で1時間アニーリングしてもなくならないが,1000℃でアニーリングすると消失した。また現世の火山噴出物から分離したジルコンの表面にも,少数であるが,同様のサイズの凹みが観察された。これらは観察条件を変化させても同じ地点に存在し,測定のノイズではなく確かに凹みであった。これら凹みがARTであるかどうかを確認するために,さらに約6万年の年代の火山岩から分離したジルコンの観察を進めた。このジルコンにも同様のサイズの凹みが存在し,エッチングを進めると場所によっては凹みの数が増加した。これらのことからこの凹みがARTである可能性が高いと思われる。