日本地球惑星科学連合2015年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-TT 計測技術・研究手法

[S-TT54] 合成開口レーダー

2015年5月25日(月) 09:00 〜 10:45 201A (2F)

コンビーナ:*山之口 勤(一般財団法人 リモート・センシング技術センター)、小林 知勝(国土交通省国土地理院)、宮城 洋介(防災科学技術研究所)、座長:山之口 勤(一般財団法人 リモート・センシング技術センター)、小林 知勝(国土交通省国土地理院)

10:00 〜 10:15

[STT54-12] DInSAR手法を用いた南極氷床の流動速度推定における精度向上の取組み

*白水 薫1土井 浩一郎2青山 雄一2 (1.総合研究大学院大学、2.国立極地研究所)

キーワード:差分干渉合成開口レーダー, 南極氷床, 氷流速度, 数値標高モデル

差分干渉合成開口レーダー(DInSAR)は南極氷床の緩やかな氷流を高分解能に測定するのに有用な手法の一つである.しかしながら,DInSAR手法による氷流速度推定の精度評価に関する研究はあまりなされておらず,その精度評価は重要な課題である.
DInSAR手法による氷流速度推定では,解析処理においてDigital Elevation Model(DEM;数値標高モデル)を2回適用する.1回目は2時期のSARデータから作成した初期干渉画像に含まれる地形縞を除去する際に使用し,2回目はDInSAR画像から推定した氷流速度を衛星の視線方向(Line-Of-Sight;LOS)から実際の流動方向へ射影する際に使用する.しかしながら,極域でDInSAR手法に使用可能なDEMは少なく,通常使用されるASTER-GDEMは氷床上に多くの異常値を含む.したがって,氷流速度推定にDEMの精度が与える影響は大きいと考えられる.
本研究では,ALOS/PRISMデータを用いて新たに作成したDEM(以下,PRISM-DEMと呼ぶ)をDInSAR手法に適用し,ASTER-GDEMの場合と比較することで氷流速度推定の精度向上を図った.また,南極域の露岩は衛星の回帰周期(ALOSの場合46日間)では変動するとは考えにくいことから,DInSAR画像での露岩域の変動は誤差と考えられる.そこで,この露岩での変動量を指標としてDInSAR画像で得られた変位の誤差評価を行った.
研究対象地域は東南極宗谷海岸南部のスカーレン周辺(昭和基地から南方90kmの地域)とした.DInSAR画像を作成するために使用したALOS/PALSARデータは,2007 年11 月23 日から2011 年1 月16 日の間に観測された13 シーン(Path633,Row5710-5720)である.また,PRISM-DEMはALOS/PRISMの直下視・後方視画像(観測日:2009年1月18日,Path187,Row直下視5020-5030,後方視5075-5085)のステレオ視差から作成した.
PRISM-DEMを用いた場合にはASTER-GDEMの場合に比べ,実際の流動方向の氷流速度推定結果に異常な値は見られなかった.また,露岩はASTER-GDEMを使用した場合には平均1.65cm,PRISM-DEMの場合には平均0.74cmとなった.
以上の結果から,PRISM-DEMを使用することで氷流速度の推定精度とDInSAR画像に含まれる誤差の改善が出来たと言える.本講演では,氷流速度推定結果について示すと共に,PRISM-DEMの精度検証についても議論を行う.