日本地球惑星科学連合2015年大会

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セッション記号 G (教育・アウトリーチ) » 教育・アウトリーチ

[G-03] 地球惑星科学のアウトリーチ

2015年5月24日(日) 18:15 〜 19:30 コンベンションホール (2F)

コンビーナ:*植木 岳雪(千葉科学大学危機管理学部)、小森 次郎(帝京平成大学)

18:15 〜 19:30

[G03-P04] 数種類の隕石を用いた体験学習

*はしもと じょーじ1山下 勝行1 (1.岡山大学大学院自然科学研究科)

キーワード:隕石, アウトリーチ

岡山大学では教育用として隕石をいくつか購入し,学習者が隕石を直接手にとって観察することを中心にした教育プログラムを実施している.これまでに小学生,高校生,大学生,を対象にしてプログラムを実施してきたが,隕石という地球外物質を手にとる経験は通常なかなかないことでもあり,どの年齢層にあっても興味深くプログラムに取り組んでもらえた.例えばコンドライト隕石中に含まれる,Ca-Alに富む包有物(CAI)を観察し,その形成プロセスや年代(45.67億年)について解説することで,目の前にある石を太陽系という大きな世界へと結びつけることができる.このような動機付けは年齢層に依らないものと考えられ,これまで対象にした以外の年齢層に対しても本プログラムは有効であると思われる.

 実物を手にとって観察することは科学の基本であるといえる.本プログラムでは,隕鉄,石鉄隕石(パラサイト),炭素質コンドライト,普通コンドライト(H, L),エコンドライトを用意し,参加者は自分の目でこれらの隕石の特徴を記載し,それぞれの判断によって隕石の分類を試みてもらう.特別な道具を用いずとも,ただ手に持って目で見るだけで多くの情報を引き出すことができ,かなり的確に隕石を分類することができる.例えば,石質隕石と鉄隕石の違いは,ほぼ瞬間的に多くの参加者が理解する.見た目だけでなく,手に持ったときの密度の違いも多くの参加者が気づく.さらには石質隕石を切った断面にはキラキラ光る粒を見つけ,これが金属鉄であることを見抜く参加者もいる.そして同じ石質隕石であっても金属鉄の粒の量に違いがあることを発見する参加者もいる.なお,大学内での教育プログラムを行う際には,さらに詳細な観察を行うために偏光顕微鏡を使った実習も行っている.

 発見はさらなる学習への動機付けにもなる.隕鉄にウィドマンシュテッテン構造を見つけた者は,それがなんであるのか,なぜそのようなものがあるのか,普段目にする鉄にもそのような構造があるのか(ないのはなぜか),といった疑問を持つ.また,隕石表面のフュージョンクラストに気づいた者は,焦げた理由を知りたがる.そうした自発的な疑問に応答していくことで,自然に科学の話を広げていくことができる.

 直接手にとって重さを感じ,見て,光にかざして,匂いを嗅ぐ,こういった科学の基本を実践してもらう上で,数種類の隕石を使った学習プログラムは非常に有効であると考えられる.地球外物質に触れることはただ素敵な体験であるだけでなく,科学に興味を持ってもらう入り口としても有効なものであると考えられる.