日本地球惑星科学連合2015年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS26] 生物地球化学

2015年5月28日(木) 11:00 〜 12:45 104 (1F)

コンビーナ:*楊 宗興(東京農工大学)、柴田 英昭(北海道大学北方生物圏フィールド科学センター)、大河内 直彦(海洋研究開発機構)、山下 洋平(北海道大学 大学院地球環境科学研究院)、座長:高野 淑識(海洋研究開発機構)、長尾 誠也(金沢大学環日本海域環境研究センター)、渡邉 泉(東京農工大学大学院農学研究院)、横尾 頼子(同志社大学理工学部)

12:30 〜 12:45

[MIS26-14] 野生生物の微量元素レベルを決める要因は何か?

*渡邉 泉1 (1.東京農工大学)

キーワード:微量元素, 重金属類, 野生生物, 種特異性, 元素特異性

野生生物の微量元素(重金属)濃度におけるバックグラウンド・レベルを把握することは、生態影響評価を行う上でも重要となる。つまり、野生生物の化学物質蓄積および感受性には種間差があることが知られ、特殊な超濃縮現象も知られている。これらの正確な把握なしには、生態系における化学物質の影響評価において、誤った結論を導き出してしまう可能性がある。このルールは重金属類を含む微量元素にも当てはまる。むしろ、多くの元素で必須性が疑われる生体微量元素および重金属類においては、最適濃度範囲の変動によって、より複雑になることも予想される。
 本報では、とくに野生動物体内の微量元素レベルに着目し、どのような要因が種の組織・器官における濃度を決定するか、幾つかのケースを用いて検討した結果を報告する。それらは、餌生物に代表される生息環境の微量元素レベルに加え、種および分類グループがもつ特異性や、行動や生理が影響を受ける生息環境の要因、元素間関係なども関与している可能性を示唆している。
 このような野生生物における微量元素蓄積の精確な把握は、生態影響評価の分野のみならず、生物の“化学進化”解明にも新しいヒントをもたらす可能性がある。つまり、生物と環境の相互作用のみならず、生物進化の本質にも迫れる可能性も期待され、今後の本分野における野心的な展開が期待される。