日本地球惑星科学連合2015年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-SS 地震学

[S-SS31] 地殻変動

2015年5月25日(月) 14:15 〜 16:00 304 (3F)

コンビーナ:*太田 雄策(東北大学大学院理学研究科附属地震・噴火予知研究観測センター)、村瀬 雅之(日本大学文理学部地球システム科学科)、座長:大園 真子(山形大学理学部)、日置 幸介(北海道大学大学院理学研究院自然史科学部門)

15:15 〜 15:30

[SSS31-05] ダイク貫入時における非地震性横ずれ滑りの検出:2007年タンザニア北部

*姫松 裕志1古屋 正人1 (1.北海道大学大学院理学院)

キーワード:InSAR, ダイク貫入, 非地震性すべり, 東アフリカ地溝帯

2007年7月にナトロン湖(Lake Natron)周辺で群発地震が発生し,およそ2か月にわたって続いた.震源域の近くに位置するOldoinyo Lengai山は,群発地震が起こる1か月前である2007年6月に穏やかな噴火を始めたが,終息しつつあった9月になってから爆発的な噴火が起こるようになった.この爆発的な噴火は,2008年4月まで続いた.
Calais et al. (2008), Baer et al. (2008), Biggs et al. (2009,2013) では,この群発地震に伴う地殻変動をInSARを用いて検出したことを報告している.彼らは主にENVISAT/ASAR(C-band) のDescendingのみのデータを用いていた.しかしながら波長が短いC-bandでは位相のアンラッピングが難しく,変位の勾配が大きな領域ではデータの欠落が生じる.またDescendingのみのデータでは,1つの衛星視線方向の変位量しか手に入れることができないため,詳細な変動量を求めることができない.そこで,より長波長のALOS/PALSAR(L-band)のAscendingとDescendingのデータを用いる上に,Azimuth offsetのデータを加えることで異なる3方向の変位量が求められた.これらのデータを用いることで,群発地震に伴う3次元の地殻変動を求めることができた.
求められた3次元変位は,全体的にはグラーベン構造のような変位を示した.これは一般的なリフト帯における地震に伴う地殻変動の変動パターンである.しかし,明らかに他と異なる点は,中央の沈降した領域がおよそ48cmも水平方向に変動したことである.これらの変動を詳細に説明する為に断層モデルの推定を試みた.断層モデルの結果からは,横ずれ成分が全体の解放されたモーメント量のおよそ20%を占めていることが明らかになった.一連の群発地震のCMT解は,いずれも正断層型を示していることから非地震性の滑りが生じたと推察した.ダイクの貫入によって生じた応力変化(ΔCFF)もまた,地表付近で断層すべりを促進する値を示した.