日本地球惑星科学連合2015年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS23] ジオパーク

2015年5月25日(月) 16:15 〜 18:00 101B (1F)

コンビーナ:*尾方 隆幸(琉球大学教育学部)、渡辺 真人(産業技術総合研究所地質情報研究部門)、有馬 貴之(帝京大学 経済学部 観光経営学科)、平松 良浩(金沢大学理工研究域自然システム学系)、大野 希一(島原半島ジオパーク協議会)、藁谷 哲也(日本大学大学院理工学研究科)、植木 岳雪(千葉科学大学危機管理学部)、座長:藁谷 哲也(日本大学大学院理工学研究科)、有馬 貴之(帝京大学 経済学部 観光経営学科)

16:15 〜 16:30

[MIS23-08] ジオパーク、ジオヴァンダリズム、ジオエシックスに関するIUGSの動向

*小川 勇二郎1 (1.なし)

キーワード:IUGS, ジオパーク, ジオヴァンダリズム, ジオエシックス, 国立公園運動

IUGS(国際地質科学連合)の理事会では、ユネスコの事業であるIGCPがIGGP(International Geoscience and Geoparks Programme)へと拡大したことを受けて、その支援を今後とも続ける決定をした。かねてから、IGCPの一環として自らの研究や教育を行ってきた日本の地質研究者・教育者は多いと思われるが、その成功と成果を引き継ぐ形で拡大することになった。ただし、今後はより広い研究者を途上国から含めるべきであるとしている。一方、近年ジオパーク運動が、各国で盛んとなっており、ジオと名の付く事業も日常的に耳にする。関係者の成功へむけての努力は大きい。また、世界ジオパーク運動も盛んである(特に中国)。これと、世界遺産(ユネスコ;世界地質遺産も数少ないながらある)、国立公園(日本では環境庁)、天然記念物(日本では文化庁や各地方公共団体)などは、事業者からみると厳然とした差異があるのであろうが(規模、予算、規制など)、地質的なものに限ってみても対象とするものの多くが重複するため、世間一般から見るとそれらの間の区別は小さいように思われる(重要な差異はロゴの使用であって、しかも重要なポイントでもある)。世界でも、アメリカ合衆国の国立公園や同記念物、またイギリスでは市民団体による自主的な自然保護の取り組みであるナチュラル・トラスト(運動)による保護された自然なども、日本のジオパークと外面的にはなんら違いはない。それぞれに地域的には人口に膾炙し、倫理やモラルは厳重に守られており、国民に浸透している。特に、アメリカ合衆国では、家族を挙げての国立公園・同記念物への旅行が自然とモラルの教育の一環とも考えられている。その延長に日本で盛んであった「進論」に相当するものが、アメリカでは ”summer camp”、イギリスでは ”mapping project”として意義付けられている。こうして、米英では、家庭や大学での自然教育、地質露頭教育は大いに浸透している。日本の国立公園が規制に関する手続きの多いことや、世界遺産やジオパークがともすると地元の発展のための政策(地域振興)に利用されがちな点とは格段の違いがある。イギリスのトラスト運動も、市民(国民)が主体となって運営されている自主性こそが大いに支持されている理由といえる。各国はそれぞれの考えで行動してよいので、上位機関や周辺がとやかく言うことはないだろうが、よい芽をつむようなことのないようにしたい。ひところ、地球(環境や資源)や生物の保護が大いに謳われ、市民運動も盛り上がった時期があったが、最近の動向として世界の地質科学のリーダーや関連する諸機関は、依然として経済発展の流れの中に自らを置こうとしている面も強い。それはIGC(万国地質学会)が4回続けて(つまり12年以上も)安定大陸、資源大国での開催が続いていることからも分かる。地質学をことさら世界や自国経済の発展や企業への貢献に向けている傾向があるといえる。ユネスコや自然保護団体が、基礎教育の充実や環境問題への提言を連綿として志向していることとは異なる方向性もあるようにも思われる。自然の中での人間の位置づけを考え、それを行動に移すのがこれらジオパークやそのほかの運動ではないか。一方、ジオヴァンダリズムは、狭義には露頭の破壊(サンプリング、工事などをも含む)、広義には自然破壊、環境破壊を意味する。多くは、不注意あるいは過失、あるいは無関心によってもたらされる露頭破壊である。 我々も、どうしても破壊しなくては研究を進められない場合、どう行動するかの判断に迷うことも多い。こうして、はやり始めたジオ00や地球科学の浸透にも倫理(エシックス)を求めよう、それを自然保護、財産保護、遺産の継承などにも広げよう、との大きなうねりが世界でも始まっている。国際組織であるジオエシックスの学会も二つあり(www.iapg.geoethics.org/, www.icog.es/iageth)、アメリカ、ヨーロッパを中心に盛り上がりを見せており、日本からの研究者の活躍も見られる。特に、自然災害の多い沈み込み帯での地質学的な取り組みも強調されている(Episodes, 2014 Vol. 37 No. 4 自然災害特集号 ダウンロード自由www.episodes.co.in;特にその中のGonzalez et al.) これらの流れの中心は、要するに我々の地球科学の専門性を、社会特に世界市民の教育に活かすべきだ、ということであり、IUGSもGlobal Geoscience Professionalismなる委員会を設けて活動している。さらに、ジオパークもジオヴァンダリズムも、ジオエシックスの中で議論すべきであろう。