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[SSS28-26] 2014年長野県北部の地震に伴い出現した地表地震断層における地中レーダ探査
キーワード:2014年長野県北部の地震, 神城断層, 地表地震断層, 地中レーダ探査, 地下浅部構造
2014年11月22日に発生した,長野県北部を震源とする地震(M6.7)(以下,「2014年長野県北部の地震」という)では,糸魚川-静岡構造線の北部を構成する神城断層周辺において,長さ9km以上に及ぶ地表地震断層が出現した(廣内ほか,2014;近藤ほか,2014;岡田ほか,2014など).地表地震断層は,白馬村北部の白馬村北城地区塩島においては約90cm,白馬村北城地区大出においては約40cmの上下変位があり(廣内ほか,2014),これらの地域では比較的直線状に分布しているのに対し,白馬村南部の神城地区飯田,神城地区堀之内周辺では水平短縮変形が顕著で,地形に沿って屈曲して分布している.これは,地表地震断層の傾斜角が,北部では高角であるのに対し,南部では低角であるためと考えられる.白馬村南部の神城地区堀之内近辺では,過去にトレンチ調査が実施されており,断層面はほぼ水平であることが確認されている(奥村ほか,1998).これらを確認するために,白馬村北城地区大出と神城地区飯田において地中レーダ探査を実施し,地表地震断層の地下浅部構造の把握を試みた.
探査は,2014年12月2日に実施した.北城地区大出では,国道406号線上に地表地震断層を横断する東西方向の測線(LineOi-1)と,国道から10mほど南側の耕作地内に同様の測線(LineOi-2)を設けて探査を実施した.神城地区飯田では,水田内を通る南北方向の砂利道に沿った測線(LineId-1)を設けて探査を実施した.探査装置は,カナダ国Sensors & Software社製Noggin plusを用い,アンテナ中心周波数は250MHzとした.
探査の結果,LineOi-1では,深さ0.5m付近の明瞭な水平の反射面が,地表地震断層出現位置付近で東上がりの変位を呈した.また,同地点の深さ1m付近でも反射面が東上がりの屈曲を示した.これらの変位量は20~30cm程度であり,地表での上下変位量よりは小さいが,それと調和的な結果である.地表地震断層出現位置より西へ1~2mの地点においては,地表付近から深さ2m付近にかけて,縦方向に伸びる線状の反射空白域が確認でき,その両側で反射面の変位も確認できた.これは,中埜・酒井(2007)が報告している活断層における反射の特徴と一致する.探査プロファイル全体を見ると,地表地震断層出現位置付近を境に,その西側では全体的に反射が強く,東側では反射が弱いことから,断層を境に誘電特性の異なる媒質(地質等)が分布していると考えられる.以上から,本地区の活断層は高角と考えられるが,LineOi-2では明瞭な断層構造は確認できなかった.LineId-1においても,部分的な層構造は確認できるものの,地表地震断層出現位置付近において,明瞭な断層構造を確認することはできなかった.同地点近くの過去のトレンチ調査(奥村ほか,1998)では,深さ4m付近に水平に近い断層面が確認されており,その上盤側の深さ2m以深に明瞭な地層の褶曲構造が確認されているが,今回の地中レーダ探査のプロファイル深度は2m程度であり,明瞭な層構造まで達していない可能性がある.
以上より,地中レーダ探査により,北城地区大出では高角の活断層を捉えることができたと考えられるが,神城地区飯田の低角の活断層は検出することができなかった.今後,他測線や他アンテナ周波数での調査や簡易ボーリング等を実施することで,探査結果の解釈の信頼性を高めたいと考えている.
謝辞
地中レーダ探査装置は,名古屋大学鈴木康弘教授からお借りした.ここに記して感謝申し上げます.
引用文献
廣内ほか(2014):2014 年 11 月 22 日長野県神城断層地震における地表変位について(速報).
http://danso.env.nagoya-u.ac.jp/jsafr/jishin/20141122_kamishiro/20141122_nagano_report_hirouchi_etal.pdf
(2015年1月14日閲覧)
近藤ほか(2014):2014年11月22日長野県北部の地震 第二報地表地震断層緊急調査報告(1).
https://www.gsj.jp/hazards/earthquake/naganokenhokubu2014/naganokenhokubu20141126.html(2015年1月14日閲覧)
中埜・酒井(2007):阿寺断層系中北部における極浅層構造のレーダ探査による研究.活断層研究,27,191-200.
岡田ほか(2014):長野県北部の地震にともなう地表地震断層.
http://irides.tohoku.ac.jp/media/files/topics/20141209_report_nagano.pdf(2015年1月14日閲覧)
奥村ほか(1998):糸魚川-静岡構造線活断層系北部の最近の断層活動-神城断層・松本盆地東縁断層トレンチ発掘
調査-.地震,50別冊,35-51.
探査は,2014年12月2日に実施した.北城地区大出では,国道406号線上に地表地震断層を横断する東西方向の測線(LineOi-1)と,国道から10mほど南側の耕作地内に同様の測線(LineOi-2)を設けて探査を実施した.神城地区飯田では,水田内を通る南北方向の砂利道に沿った測線(LineId-1)を設けて探査を実施した.探査装置は,カナダ国Sensors & Software社製Noggin plusを用い,アンテナ中心周波数は250MHzとした.
探査の結果,LineOi-1では,深さ0.5m付近の明瞭な水平の反射面が,地表地震断層出現位置付近で東上がりの変位を呈した.また,同地点の深さ1m付近でも反射面が東上がりの屈曲を示した.これらの変位量は20~30cm程度であり,地表での上下変位量よりは小さいが,それと調和的な結果である.地表地震断層出現位置より西へ1~2mの地点においては,地表付近から深さ2m付近にかけて,縦方向に伸びる線状の反射空白域が確認でき,その両側で反射面の変位も確認できた.これは,中埜・酒井(2007)が報告している活断層における反射の特徴と一致する.探査プロファイル全体を見ると,地表地震断層出現位置付近を境に,その西側では全体的に反射が強く,東側では反射が弱いことから,断層を境に誘電特性の異なる媒質(地質等)が分布していると考えられる.以上から,本地区の活断層は高角と考えられるが,LineOi-2では明瞭な断層構造は確認できなかった.LineId-1においても,部分的な層構造は確認できるものの,地表地震断層出現位置付近において,明瞭な断層構造を確認することはできなかった.同地点近くの過去のトレンチ調査(奥村ほか,1998)では,深さ4m付近に水平に近い断層面が確認されており,その上盤側の深さ2m以深に明瞭な地層の褶曲構造が確認されているが,今回の地中レーダ探査のプロファイル深度は2m程度であり,明瞭な層構造まで達していない可能性がある.
以上より,地中レーダ探査により,北城地区大出では高角の活断層を捉えることができたと考えられるが,神城地区飯田の低角の活断層は検出することができなかった.今後,他測線や他アンテナ周波数での調査や簡易ボーリング等を実施することで,探査結果の解釈の信頼性を高めたいと考えている.
謝辞
地中レーダ探査装置は,名古屋大学鈴木康弘教授からお借りした.ここに記して感謝申し上げます.
引用文献
廣内ほか(2014):2014 年 11 月 22 日長野県神城断層地震における地表変位について(速報).
http://danso.env.nagoya-u.ac.jp/jsafr/jishin/20141122_kamishiro/20141122_nagano_report_hirouchi_etal.pdf
(2015年1月14日閲覧)
近藤ほか(2014):2014年11月22日長野県北部の地震 第二報地表地震断層緊急調査報告(1).
https://www.gsj.jp/hazards/earthquake/naganokenhokubu2014/naganokenhokubu20141126.html(2015年1月14日閲覧)
中埜・酒井(2007):阿寺断層系中北部における極浅層構造のレーダ探査による研究.活断層研究,27,191-200.
岡田ほか(2014):長野県北部の地震にともなう地表地震断層.
http://irides.tohoku.ac.jp/media/files/topics/20141209_report_nagano.pdf(2015年1月14日閲覧)
奥村ほか(1998):糸魚川-静岡構造線活断層系北部の最近の断層活動-神城断層・松本盆地東縁断層トレンチ発掘
調査-.地震,50別冊,35-51.