14:45 〜 15:00
[SMP43-03] 四国中央部秩父帯北帯のユニット区分と変成条件
キーワード:秩父帯北帯, 弱変成作用, 温度ー圧力履歴, ひすい輝石, ローソン石
秩父帯北帯の一部が三波川変成作用(白亜紀高圧型変成作用)を被っていることはよく知られているが,その範囲は確定していない.また,三波川帯プロパーは主に白亜紀後期付加体であり,より古い御荷鉾‐秩父帯北帯の高圧型変成作用のテクトニックな意味を再考する必要がある.そのために,まず弱変成付加体のユニット区分と各ユニットの変成履歴の解明が重要である.四国中央部「本山」地域は,三波川帯‐御荷鉾帯‐秩父帯北帯が東西走向の帯状配列を示し,相互の構造関係解明に適したフィールドである.同地域の御荷鉾‐秩父帯北帯のマッピングおよび,苦鉄質岩約200試料の変成鉱物の観察を行った結果を報告する.
「本山」地域の秩父帯北帯は岩相をもとに3つのユニットに区分でき,松岡ほか(1998 地質雑)の,柏木,上吉田,住居附ユニットに対比できる.見かけ下位から上位に向かって,柏木,上吉田,住居附ユニットの順に南傾斜の境界で重なり,御荷鉾緑色岩類は柏木ユニットのチャート卓越層に折り込まれている.これまでの年代・岩石学的研究から,少なくとも御荷鉾‐柏木ユニットは三波川変成作用を受けていることは明らかである.また同ユニットから,変成アラゴナイトも報告されており(Suzuki & Ishizuka, 1998 JMG),ピーク圧力は300 ℃で0.7 GPa以上に達したと考えられる.しかし石英と共存するアルカリ輝石の比較的低いひすい輝石成分量や,緑簾石と共存するNa角閃石が藍閃石成分に乏しいマグネシオリーベック閃石でありアクチノ閃石に被覆成長されること,などから主要な変成再結晶はより低圧条件で起こったことを示す.
変成反応進行度や変形構造から,変成度は見かけ上位(南方)ユニットほど低くなることは推察できるが,上吉田および住居附ユニットの変成条件はこれまで明らかでなかった.上吉田ユニットはマグネシオリーベック閃石+方解石+スティルプノメレンを変成鉱物として含むアルカリ玄武岩質の火山角礫岩によって特徴づけられる.御荷鉾‐柏木ユニットと異なり,マグネシオリーベック閃石は緑簾石を伴わず,アクチノ閃石リムも認められない.また,マグネシオリーベック閃石を含まない試料中に,石英と共存しない組成的に純粋なひすい輝石を見出した.ひすい輝石からエジリンに移行する組成累帯構造が観察され,0.6-0.7 GPa, 300 ℃から0.4 GPa, 210-260 ℃の減圧時に主要な変成再結晶が起こったことを示す(Endo, 2015 JMPS).
住居附ユニットの苦鉄質岩(塊状玄武岩溶岩,ドレライト)には,ぶどう石‐パンペリー石‐緑簾石‐石英脈が頻繁に見られ,アルカリ輝石やNa角閃石は認められない.従って高圧型変成作用を受けていないようにみえるが,同ユニットから新たにローソン石‐パンペリー石‐石英脈を見出した.また,濁沸石仮像と考えられるローソン石‐石英集合体がみられ,200-250 ℃で0.3 GPa以上への昇圧が示唆される.含ぶどう石脈の形成時期は明らかでないが,減圧期の可能性がある.
秩父帯北帯はジュラ紀~白亜紀最前期の付加以降も沈み込み帯上盤での長期間にわたる履歴をもち,秩父帯北帯の漸移的に見える三波川変成作用は白亜紀沈み込み帯上盤で新しい付加ユニットの底付に伴う上昇時に起こったと考えられる.
「本山」地域の秩父帯北帯は岩相をもとに3つのユニットに区分でき,松岡ほか(1998 地質雑)の,柏木,上吉田,住居附ユニットに対比できる.見かけ下位から上位に向かって,柏木,上吉田,住居附ユニットの順に南傾斜の境界で重なり,御荷鉾緑色岩類は柏木ユニットのチャート卓越層に折り込まれている.これまでの年代・岩石学的研究から,少なくとも御荷鉾‐柏木ユニットは三波川変成作用を受けていることは明らかである.また同ユニットから,変成アラゴナイトも報告されており(Suzuki & Ishizuka, 1998 JMG),ピーク圧力は300 ℃で0.7 GPa以上に達したと考えられる.しかし石英と共存するアルカリ輝石の比較的低いひすい輝石成分量や,緑簾石と共存するNa角閃石が藍閃石成分に乏しいマグネシオリーベック閃石でありアクチノ閃石に被覆成長されること,などから主要な変成再結晶はより低圧条件で起こったことを示す.
変成反応進行度や変形構造から,変成度は見かけ上位(南方)ユニットほど低くなることは推察できるが,上吉田および住居附ユニットの変成条件はこれまで明らかでなかった.上吉田ユニットはマグネシオリーベック閃石+方解石+スティルプノメレンを変成鉱物として含むアルカリ玄武岩質の火山角礫岩によって特徴づけられる.御荷鉾‐柏木ユニットと異なり,マグネシオリーベック閃石は緑簾石を伴わず,アクチノ閃石リムも認められない.また,マグネシオリーベック閃石を含まない試料中に,石英と共存しない組成的に純粋なひすい輝石を見出した.ひすい輝石からエジリンに移行する組成累帯構造が観察され,0.6-0.7 GPa, 300 ℃から0.4 GPa, 210-260 ℃の減圧時に主要な変成再結晶が起こったことを示す(Endo, 2015 JMPS).
住居附ユニットの苦鉄質岩(塊状玄武岩溶岩,ドレライト)には,ぶどう石‐パンペリー石‐緑簾石‐石英脈が頻繁に見られ,アルカリ輝石やNa角閃石は認められない.従って高圧型変成作用を受けていないようにみえるが,同ユニットから新たにローソン石‐パンペリー石‐石英脈を見出した.また,濁沸石仮像と考えられるローソン石‐石英集合体がみられ,200-250 ℃で0.3 GPa以上への昇圧が示唆される.含ぶどう石脈の形成時期は明らかでないが,減圧期の可能性がある.
秩父帯北帯はジュラ紀~白亜紀最前期の付加以降も沈み込み帯上盤での長期間にわたる履歴をもち,秩父帯北帯の漸移的に見える三波川変成作用は白亜紀沈み込み帯上盤で新しい付加ユニットの底付に伴う上昇時に起こったと考えられる.