17:30 〜 17:45
[MTT40-06] 海洋玄武岩全岩組成への主成分分析の適用とその定量的理解: ココスプレート海洋底変質玄武岩の例
キーワード:主成分分析, 海洋底玄武岩, 元素分別, コスタリカ
岩石の全岩化学組成は数十元素ものデータからなり,その定量的な解釈には,高次元データの解析が不可欠である.従来の研究では,経験的に選ばれた特定の元素比に着目して,プロセスが評価されてきた.このような岩石の化学組成に対して,先見的知識に頼らないプロセスの抽出法として,主成分分析(PCA)の適用が試みられてきた(桑谷ら, 2014; 上木, 2014).例えば,島弧火山岩へのPCAの適用により,火山毎に主成分が異なり,ミクシングや結晶分化などのプロセスが区別されることが明らかになっている(上木, 2014).このように,岩石組成へのPCAの適用は一定の成果を収めているが,さらなる発展には,PCAの結果(寄与率や主成分負荷量)の定量的な解釈の手法開発が必要である.そこで本研究では,主成分負荷量の定量的評価を目的として,比較的単純なプロセスから形成されている,海洋玄武岩を対象として主成分分析を行い,理論的な分別作用との定量的な関係性を検証した.
対象試料は,IODP Exp. 334で採取されたコスタリカ沖の海洋底玄武岩である.試料は海洋底からの深度99-164 mの一連の玄武岩質の層序から採取されたものであり,比較的単純なプロセスで形成されていると期待される.先見的な指標である,Nb/Zr比やCr/Zr比から,溶融度の違いや,結晶分化作用の違いから組成バリエーションが作られていることが示唆されている(Uno et al., in prep.).
深度99-164 mから採取された43試料について,主要10元素(Si, Ti, Al, Fe, Mg, Mn, Ca, Na, K, P), 微量33元素(Li, Sc, V, Cr, Co, Ni, Cu, Sr, Rb, Y, Zr, Nb, Cs, Ba, La, Ce, Pr, Nd, Sm, Eu, Gd, Tb, Dy, Ho, Er, Tm, Yb, Lu, Hf, Ta, Pb, Th, U)に関して,主成分分析を行った.
主な主成分は第1-3主成分で,データのバリエーションの約80%を説明する.第1主成分は寄与率52%で,Middle REEの負荷量が高く,Rb, Baなどの不適合元素(岩石に分配しにくく,メルトに入りやすい元素)は低い.第2主成分は寄与率19%で,Ni, Co, Heavy REEなどの適合元素の負荷量が高い一方,Rb, Ba, Thなどの不適合元素は負の負荷量を示し,岩石-メルト間の分配を示唆する.第3主成分は寄与率8%で,Cs, Li, Uなど水溶液への分配の高い元素と全岩含水量(LOI)の負荷量が高く,水溶液による変質を示唆する.
これらの第1-3主成分の深度分布は,それぞれ先見的な指標であるNb/Zr比やCr/Zr比,変質鉱物の量と調和的である.このように,ココスプレートの玄武岩の全岩化学組成は,定性的には,鉱物分別・溶融度・熱水変質の3プロセスで解釈することができる.
主成分の定量的評価のために,各種分配係数と主成分負荷量の比較を行った.PC2の主成分負荷量パターンは,玄武岩質メルト-かんらん岩の分配係数で定量的に説明出来る.一方,PC1については,単純なメルト?鉱物の分配係数では説明ができないが,かんらん石/輝石の分配係数で定量的に説明できることがわかった.
本発表では,主成負荷量とこのような分化プロセスの定量的な関係性について議論を行う.
引用文献:
桑谷立,中村謙吾,渡邊隆弘,小川泰正,駒井武(2014)主成分分析を用いた次元圧縮に基づく東北地方太平洋沖地震による津波堆積物の地球化学的特性評価,地学雑誌,123, 923-935.
上木賢太(2014)微量元素の主成分分析を用いた島弧マグマの分化プロセスの解析,日本地球惑星科学連合2014年大会,SVC54-P02,横浜.
Uno, M., Stipp, M., Vannuchii, P., Ujiie, K. (in prep.) Fluid flow in the oceanic crust of the Cocos plate offshore Costa Rica trench: petrological and geochemical investigations on IODP Expedition 334 samples.
対象試料は,IODP Exp. 334で採取されたコスタリカ沖の海洋底玄武岩である.試料は海洋底からの深度99-164 mの一連の玄武岩質の層序から採取されたものであり,比較的単純なプロセスで形成されていると期待される.先見的な指標である,Nb/Zr比やCr/Zr比から,溶融度の違いや,結晶分化作用の違いから組成バリエーションが作られていることが示唆されている(Uno et al., in prep.).
深度99-164 mから採取された43試料について,主要10元素(Si, Ti, Al, Fe, Mg, Mn, Ca, Na, K, P), 微量33元素(Li, Sc, V, Cr, Co, Ni, Cu, Sr, Rb, Y, Zr, Nb, Cs, Ba, La, Ce, Pr, Nd, Sm, Eu, Gd, Tb, Dy, Ho, Er, Tm, Yb, Lu, Hf, Ta, Pb, Th, U)に関して,主成分分析を行った.
主な主成分は第1-3主成分で,データのバリエーションの約80%を説明する.第1主成分は寄与率52%で,Middle REEの負荷量が高く,Rb, Baなどの不適合元素(岩石に分配しにくく,メルトに入りやすい元素)は低い.第2主成分は寄与率19%で,Ni, Co, Heavy REEなどの適合元素の負荷量が高い一方,Rb, Ba, Thなどの不適合元素は負の負荷量を示し,岩石-メルト間の分配を示唆する.第3主成分は寄与率8%で,Cs, Li, Uなど水溶液への分配の高い元素と全岩含水量(LOI)の負荷量が高く,水溶液による変質を示唆する.
これらの第1-3主成分の深度分布は,それぞれ先見的な指標であるNb/Zr比やCr/Zr比,変質鉱物の量と調和的である.このように,ココスプレートの玄武岩の全岩化学組成は,定性的には,鉱物分別・溶融度・熱水変質の3プロセスで解釈することができる.
主成分の定量的評価のために,各種分配係数と主成分負荷量の比較を行った.PC2の主成分負荷量パターンは,玄武岩質メルト-かんらん岩の分配係数で定量的に説明出来る.一方,PC1については,単純なメルト?鉱物の分配係数では説明ができないが,かんらん石/輝石の分配係数で定量的に説明できることがわかった.
本発表では,主成負荷量とこのような分化プロセスの定量的な関係性について議論を行う.
引用文献:
桑谷立,中村謙吾,渡邊隆弘,小川泰正,駒井武(2014)主成分分析を用いた次元圧縮に基づく東北地方太平洋沖地震による津波堆積物の地球化学的特性評価,地学雑誌,123, 923-935.
上木賢太(2014)微量元素の主成分分析を用いた島弧マグマの分化プロセスの解析,日本地球惑星科学連合2014年大会,SVC54-P02,横浜.
Uno, M., Stipp, M., Vannuchii, P., Ujiie, K. (in prep.) Fluid flow in the oceanic crust of the Cocos plate offshore Costa Rica trench: petrological and geochemical investigations on IODP Expedition 334 samples.