日本地球惑星科学連合2015年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-AS 大気科学・気象学・大気環境

[A-AS21] 大気化学

2015年5月27日(水) 15:15 〜 16:00 201B (2F)

コンビーナ:*澤 庸介(気象研究所海洋・地球化学研究部)、竹川 暢之(首都大学東京 大学院理工学研究科)、金谷 有剛(独立行政法人海洋研究開発機構地球環境変動領域)、高橋 けんし(京都大学生存圏研究所)、谷本 浩志(国立環境研究所)、座長:大畑 祥(東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻)

15:45 〜 16:00

[AAS21-03] 東京におけるブラックカーボン含有粒子の吸湿特性と湿性除去の測定

*大畑 祥1茂木 信宏1森 樹大1小池 真1高見 昭憲2近藤 豊1 (1.東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻、2.国立環境研究所 地域環境研究センター)

キーワード:ブラックカーボン, 吸湿特性, 湿性除去

大都市域は、人為起源ブラックカーボン(BC)の大きな排出源である。都市域で放出されたBCはローカルな大気質に影響を及ぼすだけでなく、長距離輸送されることにより地域的・全球的規模で気候に影響を及ぼし得る。BCの雲・降水過程による大気からの除去効率は、各BC粒子の微物理量(粒径・非BC成分による被覆量とその吸湿特性)に強く依存すると考えられるため、都市域でこれらの微物理量を詳細に測定することは重要である。また、BCは化学的に安定な固体粒子であり、他の多くのエアロゾルとは異なり、雲・降水過程の途中で粒子生成や雲水への溶解が起こらない。そのため、雨水に含まれるBCの数粒径分布を測定することにより、湿性除去を受けたBCの粒径の情報を得ることができる。本研究では東京において、大気中のBCの微物理量と、雲・降水過程を経て雨水に取り込まれたBCの粒径分布を測定・比較することにより、どのようなBCが湿性除去を受けたか定量的に明らかにすることを目的とした大気・降水同時観測を行った。観測場所は東京大学本郷キャンパス、観測期間は2014年7月28日から8月15日である。大気中のBC含有粒子の吸湿特性の測定と、降水イベント時の雨水中のBCの数粒径分布の測定には、BC分析装置SP2に独自の改造を加えた新しい測定システムをそれぞれ用いた。
BC被覆成分を含めた粒子全体の乾燥粒径が約200nmのBC含有粒子の内、BC含有量の小さい粒子ほど吸湿特性が高く、観測期間を通じて吸湿特性の低い(相対湿度85%における吸湿成長率GF が 1.2未満)粒子の占める数割合が70%以上であった。また、観測期間中の降水イベントにおける雨水中のBCの数粒径分布は、降水開始前1時間の地表付近の大気中のBCの数粒径分布より平均的に大きく、BC粒径の大きな粒子ほど効率良く湿性除去を受けたと推定された。この湿性除去効率のBC粒径依存性は、降水開始前の大気中のBCの微物理量の測定値から、粒子が大気中で経験した最大過飽和度の中央値が0.1%程度であったと仮定することにより説明可能であることが分かった。これらの観測データにより、東京近傍の粒径の小さなBC(臨界過飽和度の高いエアロゾル)の多くが降水イベント時に除去を受けずに鉛直輸送されたことが示唆された。