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[SVC48-05] 水蒸気噴火に伴い発生する現象に関するレビュー
キーワード:水蒸気噴火, 噴石, 火砕流, 火口噴出型泥流, ハザードマップ
御嶽山2014年噴火では,水蒸気噴火に伴い噴石、降灰、火砕流、火口噴出型泥流が発生した.噴火前に作成された御嶽山火山防災マップには,大規模噴火(マグマ噴火)と小規模噴火(水蒸気爆発)の2種類のハザードマップがある.小規模噴火(水蒸気爆発)のハザードマップには,想定火口範囲、噴石予想到達範囲、降灰予想到達範囲が掲載されているが,火砕流や火口噴出型泥流の記載はなかった.本研究では,わが国で発生した水蒸気噴火を対象として,噴石・降灰以外の現象の発生履歴および火山防災マップの現状について文献調査を行った.
水蒸気噴火で発生した火砕流は,安達太良山1900年噴火,樽前山1978年噴火,阿蘇山1979年9月6日噴火,三宅島2000年8月29日噴火,御嶽山2014年噴火などで確認されている.到達距離は数100~3km程度と幅がある.温度は安達太良山1900年噴火で100℃以上400℃以下,樽前山1978年噴火で220±10℃との報告がある.また,阿蘇山1979年9月6日噴火では50℃くらいの熱気があったことが報告されている.
水蒸気噴火で発生した火口噴出型泥流については,焼岳1915年噴火,新潟焼山1974年噴火,秋田焼山1997年噴火,雌阿寒岳2006年噴火,御嶽山2014年噴火等で確認されている.泥流の到達距離は数100m程度が多いが,2km以上流下したケースもある.火口噴出型泥流に関する噴出量や継続時間の記載は少ない.雌阿寒岳2006年噴火では噴出量が400?,継続時間が約10時間,秋田焼山1997年噴火では噴出量が2000?と報告されている.降灰後の土石流の土砂量は数万~数10万?であることから,火口噴出型泥流で移動する土砂量は非常に少ないことが特徴である.
水蒸気噴火で発生するその他の現象には,山体崩壊があげられる.内閣府・他(2013)による「火山防災マップ指針」では水蒸気噴火の事例として磐梯山の1888年噴火が示されている.山体崩壊に伴い発生した泥流としては,十勝岳1926年噴火の事例がある.上澤(2008)によると,多量の熱水が噴火とともに噴出し,大正泥流を形成する重要な水源になった可能性が高いことが示されている.
わが国の火山防災マップにおける水蒸気噴火の記載状況について,常時観測火山である47火山を対象として調査した.マグマ噴火・水蒸気噴火の現象別ではなく,小規模噴火・大規模噴火など規模別で作成されている火山もあるため,記載内容から水蒸気噴火・水蒸気爆発・小規模噴火と記載されている事例を整理した.その結果,47火山のうち,18火山で水蒸気噴火の火山防災マップが作成されていた.想定されている現象は,噴石,降灰および降灰後の土石流が表示されている事例が多い.安達太良山,浅間山,箱根山では火砕流・火砕サージの影響範囲が示されている.火口噴出型泥流と記載された火山は,雌阿寒岳のみであり,箱根山では熱泥流と記載されている.伽藍岳では泥流とのみ記されており,成因の記載はない.なお,吾妻山・安達太良山・磐梯山では,融雪による火山泥流が想定されている.全般的に水蒸気噴火に伴う火砕流や泥流の記述は不足している傾向にある.
御嶽山2014年噴火では,火山学的には小規模な噴火であったにもかかわらず,人的被害が大きくなった.水蒸気噴火は前兆現象が乏しく事前に避難行動をとることが難しい.マグマ噴火よりも発生規模が小さいが,たとえ規模が小さい現象であっても,防災対策上,想定しておく必要がある.今後,水蒸気噴火による影響が大きい活火山については火山防災マップや防災計画等の見直しが必要であろう.
<参考文献>
藤縄明彦・他(2006)安達太良火山,1900年爆発的噴火の再検討.火山,51, 311-325.
勝井義雄・他(1979)樽前山1978 年5 月の噴火.火山,24,31-40.
内閣府・他(2013)火山防災マップ指針.108p.
小野晃司・他(1979)阿蘇火山の爆発1979年9月6日.地質ニュース,304,54-59.
佐々木寿・他(2006)雌阿寒岳2006年3月21 日噴火.火山,51,347-350.
上澤真平 (2008) 北海道十勝岳火山1926年噴火大正泥流堆積物層序の再検討と古地磁気特性.火山,53,171-191.
水蒸気噴火で発生した火砕流は,安達太良山1900年噴火,樽前山1978年噴火,阿蘇山1979年9月6日噴火,三宅島2000年8月29日噴火,御嶽山2014年噴火などで確認されている.到達距離は数100~3km程度と幅がある.温度は安達太良山1900年噴火で100℃以上400℃以下,樽前山1978年噴火で220±10℃との報告がある.また,阿蘇山1979年9月6日噴火では50℃くらいの熱気があったことが報告されている.
水蒸気噴火で発生した火口噴出型泥流については,焼岳1915年噴火,新潟焼山1974年噴火,秋田焼山1997年噴火,雌阿寒岳2006年噴火,御嶽山2014年噴火等で確認されている.泥流の到達距離は数100m程度が多いが,2km以上流下したケースもある.火口噴出型泥流に関する噴出量や継続時間の記載は少ない.雌阿寒岳2006年噴火では噴出量が400?,継続時間が約10時間,秋田焼山1997年噴火では噴出量が2000?と報告されている.降灰後の土石流の土砂量は数万~数10万?であることから,火口噴出型泥流で移動する土砂量は非常に少ないことが特徴である.
水蒸気噴火で発生するその他の現象には,山体崩壊があげられる.内閣府・他(2013)による「火山防災マップ指針」では水蒸気噴火の事例として磐梯山の1888年噴火が示されている.山体崩壊に伴い発生した泥流としては,十勝岳1926年噴火の事例がある.上澤(2008)によると,多量の熱水が噴火とともに噴出し,大正泥流を形成する重要な水源になった可能性が高いことが示されている.
わが国の火山防災マップにおける水蒸気噴火の記載状況について,常時観測火山である47火山を対象として調査した.マグマ噴火・水蒸気噴火の現象別ではなく,小規模噴火・大規模噴火など規模別で作成されている火山もあるため,記載内容から水蒸気噴火・水蒸気爆発・小規模噴火と記載されている事例を整理した.その結果,47火山のうち,18火山で水蒸気噴火の火山防災マップが作成されていた.想定されている現象は,噴石,降灰および降灰後の土石流が表示されている事例が多い.安達太良山,浅間山,箱根山では火砕流・火砕サージの影響範囲が示されている.火口噴出型泥流と記載された火山は,雌阿寒岳のみであり,箱根山では熱泥流と記載されている.伽藍岳では泥流とのみ記されており,成因の記載はない.なお,吾妻山・安達太良山・磐梯山では,融雪による火山泥流が想定されている.全般的に水蒸気噴火に伴う火砕流や泥流の記述は不足している傾向にある.
御嶽山2014年噴火では,火山学的には小規模な噴火であったにもかかわらず,人的被害が大きくなった.水蒸気噴火は前兆現象が乏しく事前に避難行動をとることが難しい.マグマ噴火よりも発生規模が小さいが,たとえ規模が小さい現象であっても,防災対策上,想定しておく必要がある.今後,水蒸気噴火による影響が大きい活火山については火山防災マップや防災計画等の見直しが必要であろう.
<参考文献>
藤縄明彦・他(2006)安達太良火山,1900年爆発的噴火の再検討.火山,51, 311-325.
勝井義雄・他(1979)樽前山1978 年5 月の噴火.火山,24,31-40.
内閣府・他(2013)火山防災マップ指針.108p.
小野晃司・他(1979)阿蘇火山の爆発1979年9月6日.地質ニュース,304,54-59.
佐々木寿・他(2006)雌阿寒岳2006年3月21 日噴火.火山,51,347-350.
上澤真平 (2008) 北海道十勝岳火山1926年噴火大正泥流堆積物層序の再検討と古地磁気特性.火山,53,171-191.