日本地球惑星科学連合2015年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-HW 水文・陸水・地下水学・水環境

[A-HW26] 水循環・水環境

2015年5月27日(水) 09:00 〜 10:45 301A (3F)

コンビーナ:*内田 洋平((独)産業技術総合研究所地質調査総合センター)、樋口 篤志(千葉大学環境リモートセンシング研究センター)、長尾 誠也(金沢大学環日本海域環境研究センター)、林 武司(秋田大学教育文化学部)、座長:内田 洋平((独)産業技術総合研究所地質調査総合センター)、長尾 誠也(金沢大学環日本海域環境研究センター)、樋口 篤志(千葉大学環境リモートセンシング研究センター)、林 武司(秋田大学教育文化学部)

09:15 〜 09:30

[AHW26-02] ゆざわジオパークにみられる強アルカリ性湧水の起源の検討

*林 武司1林 信太郎1安原 正也2高橋 浩2森川 徳敏2浅井 和由3 (1.秋田大学教育文化学部、2.独立行政法人産業技術総合研究所、3.株式会社 地球科学研究所)

キーワード:強アルカリ性湧水, マルチトレーサー, 環境同位体, ゆざわジオパーク

ゆざわジオパークは秋田県の南東部に位置し,栗駒山の山腹から横手盆地までの湯沢市の全域がジオパーク地域となっている.ゆざわジオパークは地熱地帯や多様な泉質の温泉やがあることで知られるが,大量の降雪によって涵養される湧水が各地にあることでも知られ,中でも力水は環境省の名水百選に選出されている.これらの湧水の中で,湯沢市市街地の近傍に位置する標高300~500m程度の丘陵地に,pH9以上の強アルカリ性湧水が存在する.これまで,この強アルカリ性湧水について学術的な研究はほとんど行われておらず,湧水の起源や水質形成機構については明らかでない.本研究では,これらの点を明らかにすることを目的として調査を行っている.発表では,2014年9月ならびに11月に実施した調査の結果から,主要溶存成分や環境同位体の性状に基づいて起源を検討した結果を報告する.
現地調査の結果,湧水は第三紀中新世の粘土層中の節理から湧出していることが確認され,湧出口周辺の節理に沿ってcalciteと思われる白色の沈殿物が見られた.湧水のpHは9.7~9.9を示した.ECは460~480μS/cmであり,水質組成はNa-HCO3型を呈した.湧水のδ18O・δDは,δダイアグラムではd=20の天水線の近傍に位置しており,降水を起源とすると考えられたが,同じ丘陵を涵養域とする周辺の湧水と比較して,軽い同位体比を示した.栗駒山の山腹の高標高域から横手盆地の低標高域にかけて分布する湧水のδ18O・δDを把握して同位体比-涵養標高の関係を整理し,強アルカリ性湧水の涵養標高を検討した.この結果,涵養標高は400m以上と推定された.しかし,この値は地形上の涵養域の最高標高よりも高い.この結果から,強アルカリ性湧水湧水が,より高標高域で涵養された地下水が広域的な地下水流動によって流出している可能性や,地下での滞留時間が長い可能性が示唆された.