12:00 〜 12:15
[AHW24-10] 鳥海山朱ノ又川流域の酸性湧水の同位体的特徴
キーワード:酸性湧水, 環境同位体, 褐鉄鉱鉱床, 鳥海山
鳥海山の東斜面の山腹には,河床が酸化鉄の沈殿によって褐色を呈する河川がいくつか見られる.その1つである朱ノ又川の支流の標高900m付近には,沈殿性褐鉄鉱鉱床が分布する.鉱床は山腹斜面を開析する河川の谷底に分布しており,55%程度の鉄を含有して100万トン程度の鉱量が見積もられたことから,1956年に開発が始められた.しかし,立地条件や、最大2.0%程度と高濃度の燐を含有することから,短期間で廃鉱となった.鉱床は,60万年前以降の火山活動によって排出された鳥海火山噴出物の末端部から湧出する地下水によって形成されたと考えられている.この湧水群は,20℃を超える水温と3~5程度の低いpHによって特徴づけられ,1974年の鳥海山の火山活動以降に酸性度が進行したことが指摘されている.しかしこれまで,湧水群の起源や水質形成機構に関する研究は僅かである.そこで本研究では,これらの点を明らかにすることを目的として,鉱床の上流側に位置する酸性湧水群を対象として水文調査を行っている.本発表では,水質組成および環境同位体(δ18O・δD)の調査結果について報告する.
酸性湧水群の水温およびpHは,それぞれ15.5~19.5℃,2.8~3.0であった.鳥海山の北側斜面には,同じく酸性湧水として著名な出壺湧水があるが,酸性湧水群の水温やpHは,出壺湧水のそれ(水温:7℃程度,pH:4.5程度)とは大きく異なっている.水質組成については,高いSO42-・Cl-濃度(117~181mg/L・66~106mg/L)で特徴づけられ,どちらも出壺湧水より著しく高い値を示した.酸性湧水群のδ18O・δDは,それぞれ,およそ-11.5‰・-68~-69‰であった.これらの値から,小笠原(2005)の同位体比-涵養標高直線に基づいて涵養標高を求めた結果,1,600m以上と推定された.
本研究の結果は,鳥海山には,複数の酸性湧水の水質形成機構があることを示すものである.
酸性湧水群の水温およびpHは,それぞれ15.5~19.5℃,2.8~3.0であった.鳥海山の北側斜面には,同じく酸性湧水として著名な出壺湧水があるが,酸性湧水群の水温やpHは,出壺湧水のそれ(水温:7℃程度,pH:4.5程度)とは大きく異なっている.水質組成については,高いSO42-・Cl-濃度(117~181mg/L・66~106mg/L)で特徴づけられ,どちらも出壺湧水より著しく高い値を示した.酸性湧水群のδ18O・δDは,それぞれ,およそ-11.5‰・-68~-69‰であった.これらの値から,小笠原(2005)の同位体比-涵養標高直線に基づいて涵養標高を求めた結果,1,600m以上と推定された.
本研究の結果は,鳥海山には,複数の酸性湧水の水質形成機構があることを示すものである.