17:27 〜 17:30
[SSS31-P05] 基本基準点測量および街区基本調査の成果を援用した都市域での野外調査 ―基準点上での稠密重力測定例―
ポスター講演3分口頭発表枠
キーワード:重力構造, 数値地理情報, 上町断層, 三国ヶ丘地下山体, 高密度貫入岩, 測定効率
1.概要
地震や斜面崩壊などの自然災害を軽減するためには野外調査を伴う地球科学研究が不可欠である。その調査地点に関する地理位置情報の取得は必須のものであり、都市域での稠密な調査においてもこれを省略することはできない。一方、数値化された地理情報のWeb上での公開が近年進んできており、以下に述べる基準点の緯径度および標高値も入手することが可能となっている。これらは「測量記録の写しの一般の閲覧」として参照できる基準点成果等閲覧サービス(国土地理院情報サービス館,2015)より得られる基本基準点成果や、国土交通省都市再生街区基本調査の成果(国土交通省,2010)、各市町村が管理する公共基準点の測量成果(国土地理院情報サービス館,2015)である。これらは、例えば地理院タイル利用規約(国土地理院,2013)に規定される学術研究においてこのサービスを活用できることとされており、調査研究におけるフィールドワークでの利用が可能である。
筆者は長年地震発生時の地盤挙動予測に資すべく都市部での基盤構造の解明にかかわってきた(例えば、領木・他(2009),領木(2011))。このうち、重力調査では各種の補正を行う上で測定点の緯経度および標高値の地理情報が必要である。従来これらの情報取得は現地での測地測量やGNSS測量(GPS測量やGLONASS測量など)によって得られており、その補完として大縮尺の地形図も用いられてきた。ここでは、重力測定を行う上で上述した各種測量基準点を測定点として利用する過程について報告する。
2.対象地域
対象とする重力測定測線は大阪府堺市堺区三条通から同市北区遠野町に至る約5.8Kmで、上町断層に交差している。測線中央部には重力異常の高まりがあり、その成因について議論のある地域である。
3.地理情報の取得
重力の測定は基準点上で行い、その緯経度および標高値には上述のwebサイト上で提供される数値情報を使用した。これらの取得は各サイト固有の利用制限(例えば、アクセス毎の最大取得点数や標高値の別途アクセスの必要性など)があるものの、比較的容易に数値情報を入手できる。得られた数値位置情報は測定点の図示と重力値の補正に使用された。
4.結果
測定点の数値情報を取得する際に、地形図からデジタイザで緯度経度を入力し、かつ、標高値を読図する場合(例えば、領木・西谷(2013)、領木((2014)など)に比べ、基準点の情報を使用すれば当然緯径度および標高値の精度が良く、データ集約作業にかかる時間が大幅に短縮できた。特に、標高値を読み取る際の誤差の精度が不均一であったものが各基準点の等級によって定められた精度内に収まることとなり、データの均質性が確保できた。
5.まとめ
基準点のうち都市再生街区基本調査による基準点および市町村が管理する公共測量の基準点は、現地において比較的容易にその点を示す金属標等が確認でき、その点上で重力等の測定も可能であるため、野外での調査研究遂行上の利便性が高いことがわかった。今回の事例を通じ、基準点情報の活用は地球科学を始めとする各種野外調査における調査効率の改善および地理情報にかかる精度の均一性保障に有効であることが示された。
参考文献
国土地理院(2013):地理院タイル規約,地理院地図,http://portal.cyberjapan.jp/help/termsofuse.html.
国土地理院情報サービス館(2015):基準点成果等閲覧サービス,http://http://sokuseikagis1.gsi.go.jp/.
領木邦浩・他(2009):和泉いぶき野における自然電位測定, 日本応用地質学会関西支部平成21年度研究発表会論文集,p.20-23.
領木邦浩(2011):和泉市西北部-中央部での都市地盤構造解析のための重力測定,近畿職業能力開発大学校紀要, vol. 19, p. 18 - 19.
領木邦浩・西谷忠師(2013):大阪湾岸中南部での重力測定,日本地球惑星科学連合2013年大会予稿集,SSS32 - P23.
領木邦浩(2014):地理院地図を活用した重力測定値の補正と上町断層南部測線データの再検討,日本地球惑星科学連合2014年大会予稿集,SSS26-P02.
国土交通省(2010):都市再生街区基本調査成果の提供サービス(β版)について,http://gaikuchosa.mlit.go.jp/gaiku/.
地震や斜面崩壊などの自然災害を軽減するためには野外調査を伴う地球科学研究が不可欠である。その調査地点に関する地理位置情報の取得は必須のものであり、都市域での稠密な調査においてもこれを省略することはできない。一方、数値化された地理情報のWeb上での公開が近年進んできており、以下に述べる基準点の緯径度および標高値も入手することが可能となっている。これらは「測量記録の写しの一般の閲覧」として参照できる基準点成果等閲覧サービス(国土地理院情報サービス館,2015)より得られる基本基準点成果や、国土交通省都市再生街区基本調査の成果(国土交通省,2010)、各市町村が管理する公共基準点の測量成果(国土地理院情報サービス館,2015)である。これらは、例えば地理院タイル利用規約(国土地理院,2013)に規定される学術研究においてこのサービスを活用できることとされており、調査研究におけるフィールドワークでの利用が可能である。
筆者は長年地震発生時の地盤挙動予測に資すべく都市部での基盤構造の解明にかかわってきた(例えば、領木・他(2009),領木(2011))。このうち、重力調査では各種の補正を行う上で測定点の緯経度および標高値の地理情報が必要である。従来これらの情報取得は現地での測地測量やGNSS測量(GPS測量やGLONASS測量など)によって得られており、その補完として大縮尺の地形図も用いられてきた。ここでは、重力測定を行う上で上述した各種測量基準点を測定点として利用する過程について報告する。
2.対象地域
対象とする重力測定測線は大阪府堺市堺区三条通から同市北区遠野町に至る約5.8Kmで、上町断層に交差している。測線中央部には重力異常の高まりがあり、その成因について議論のある地域である。
3.地理情報の取得
重力の測定は基準点上で行い、その緯経度および標高値には上述のwebサイト上で提供される数値情報を使用した。これらの取得は各サイト固有の利用制限(例えば、アクセス毎の最大取得点数や標高値の別途アクセスの必要性など)があるものの、比較的容易に数値情報を入手できる。得られた数値位置情報は測定点の図示と重力値の補正に使用された。
4.結果
測定点の数値情報を取得する際に、地形図からデジタイザで緯度経度を入力し、かつ、標高値を読図する場合(例えば、領木・西谷(2013)、領木((2014)など)に比べ、基準点の情報を使用すれば当然緯径度および標高値の精度が良く、データ集約作業にかかる時間が大幅に短縮できた。特に、標高値を読み取る際の誤差の精度が不均一であったものが各基準点の等級によって定められた精度内に収まることとなり、データの均質性が確保できた。
5.まとめ
基準点のうち都市再生街区基本調査による基準点および市町村が管理する公共測量の基準点は、現地において比較的容易にその点を示す金属標等が確認でき、その点上で重力等の測定も可能であるため、野外での調査研究遂行上の利便性が高いことがわかった。今回の事例を通じ、基準点情報の活用は地球科学を始めとする各種野外調査における調査効率の改善および地理情報にかかる精度の均一性保障に有効であることが示された。
参考文献
国土地理院(2013):地理院タイル規約,地理院地図,http://portal.cyberjapan.jp/help/termsofuse.html.
国土地理院情報サービス館(2015):基準点成果等閲覧サービス,http://http://sokuseikagis1.gsi.go.jp/.
領木邦浩・他(2009):和泉いぶき野における自然電位測定, 日本応用地質学会関西支部平成21年度研究発表会論文集,p.20-23.
領木邦浩(2011):和泉市西北部-中央部での都市地盤構造解析のための重力測定,近畿職業能力開発大学校紀要, vol. 19, p. 18 - 19.
領木邦浩・西谷忠師(2013):大阪湾岸中南部での重力測定,日本地球惑星科学連合2013年大会予稿集,SSS32 - P23.
領木邦浩(2014):地理院地図を活用した重力測定値の補正と上町断層南部測線データの再検討,日本地球惑星科学連合2014年大会予稿集,SSS26-P02.
国土交通省(2010):都市再生街区基本調査成果の提供サービス(β版)について,http://gaikuchosa.mlit.go.jp/gaiku/.