17:48 〜 17:51
★ [MIS34-P20] 安房層群安野層上部における年代層序学的研究
ポスター講演3分口頭発表枠
キーワード:古地磁気層序, 酸素同位体層序, 年代層序
房総半島中部に分布する安房層群は層序的に連続性が良く,微化石を多産すること,また広い範囲で追跡可能な凝灰岩層を多数挟在することいった特徴から多くの層序学的研究(亀尾ほか, 2002; 中島・渡辺, 2005)が行われてきた.岡田ほか (2013)では千葉県富津市における湊川及び志駒川に露出する安野層上部において古地磁気層序の構築を行い,凝灰岩鍵層An155-An157で見られた逆磁極帯をMammoth逆磁極亜帯(3.207-3.330Ma)に,An127付近の極性反転境界をGilbert/Gauss境界(3.596Ma)に対比している.しかし,岡田ほか (2013)の志駒川ルートにおけるサンプリング間隔は約10mと解像度が十分ではなく,確認された逆磁極帯がMammoth逆磁極亜帯ではなくそれより上位のKaena逆磁極亜帯(3.116-3.032Ma)である可能性が否定できなかった.そこで本研究では志駒川ルートにおいてサンプリング間隔を狭め,より時間解像度の高い層序の確立することを目的に行った.
本研究では志駒川ルートで確認できる安野層の最上部から層厚約123mにわたって約1~3m間隔で117サイトから古地磁気測定用ミニコアを1サイトあたり1~5本,また同じ層準から酸素同位体測定用に有孔虫化石を抽出するための岩石試料を乾燥重量にして1サイトあたり約300gを採取した.
古地磁気測定用試片には古地磁気方位を抽出するため,段階交流消磁(以後AFD)と段階熱消磁(以後ThD)を施した.また,岩石磁気学的特性を見るため,代表的な試片に対して磁気ヒステリシス測定および熱磁気分析を行った.その結果,磁性粒子はほぼ全ての試片で疑似単磁区サイズであり,磁性鉱物はマグネタイトであることが分かった.また,AFD及びThDから得られた結果に対して主成分分析を行い,固有磁化成分(ChRM)を抽出し,それらの偏角・伏角データを用いて逆転テストを行った.その結果,AFD,ThD共に不合格であり,二次磁化が消磁しきれていないと考えられる.しかし,二次磁化成分の寄与は低く極性判断には問題ないとして,ThDの偏角・伏角データを用いて極性判断を行った.その結果,極性反転境界が深度96~98.4m,22.5~26.6m,11.4~14.7mで確認できた.最も深い層準の磁気反転境界は岡田ほか (2013)と同じく凝灰岩鍵層An127付近であることからGilbert/Gauss境界に対比した.それより上位の磁気反転境界(深度22.5~26.6m)までは磁気反転が確認できないことから深度22.5~26.6m,11.4~14.7mの磁気反転境界をそれぞれMammoth逆磁極亜帯下部境界(3.330Ma),Mammoth逆磁極亜帯上部境界(3.207Ma)に対比させた.これらの年代を用いてGilbert/Gauss境界からMammoth逆磁極亜帯下部境界とMammoth逆磁極亜帯の堆積速度を見積もるとそれぞれ約27cm,約9cmとなり,Mammoth逆磁極亜期における堆積速度の大幅な低下が見られた.Mammoth逆磁極亜帯はAn155-An157の層準で確認することができ,中島・渡辺 (2005)によると本研究地ではスランプによってAn155-2からAn156-4の層準が浸食され欠如していると報告されている.堆積速度の低下はこれに起因すると考えられる.
今後は,古地磁気測定用サンプルと同層準で採取した岩石試料から有孔虫化石を抽出し,酸素同位体測定から酸素同位体層序を構築,現在までの古地磁気層序と合わせて年代層序の議論を行う予定である.
引用文献
岡田 誠・海鉾匠摩・吉川卓寿, 2013, 安房層群安野層上部における古地磁気層序. 日本地質学会第120年学術大会講演要旨.
中島輝允・渡辺真人, 2005, 富津地域の地質. 地域地質研究報告(5万分の1地質図幅), 産総研地質調査総合センター, 102p.
本研究では志駒川ルートで確認できる安野層の最上部から層厚約123mにわたって約1~3m間隔で117サイトから古地磁気測定用ミニコアを1サイトあたり1~5本,また同じ層準から酸素同位体測定用に有孔虫化石を抽出するための岩石試料を乾燥重量にして1サイトあたり約300gを採取した.
古地磁気測定用試片には古地磁気方位を抽出するため,段階交流消磁(以後AFD)と段階熱消磁(以後ThD)を施した.また,岩石磁気学的特性を見るため,代表的な試片に対して磁気ヒステリシス測定および熱磁気分析を行った.その結果,磁性粒子はほぼ全ての試片で疑似単磁区サイズであり,磁性鉱物はマグネタイトであることが分かった.また,AFD及びThDから得られた結果に対して主成分分析を行い,固有磁化成分(ChRM)を抽出し,それらの偏角・伏角データを用いて逆転テストを行った.その結果,AFD,ThD共に不合格であり,二次磁化が消磁しきれていないと考えられる.しかし,二次磁化成分の寄与は低く極性判断には問題ないとして,ThDの偏角・伏角データを用いて極性判断を行った.その結果,極性反転境界が深度96~98.4m,22.5~26.6m,11.4~14.7mで確認できた.最も深い層準の磁気反転境界は岡田ほか (2013)と同じく凝灰岩鍵層An127付近であることからGilbert/Gauss境界に対比した.それより上位の磁気反転境界(深度22.5~26.6m)までは磁気反転が確認できないことから深度22.5~26.6m,11.4~14.7mの磁気反転境界をそれぞれMammoth逆磁極亜帯下部境界(3.330Ma),Mammoth逆磁極亜帯上部境界(3.207Ma)に対比させた.これらの年代を用いてGilbert/Gauss境界からMammoth逆磁極亜帯下部境界とMammoth逆磁極亜帯の堆積速度を見積もるとそれぞれ約27cm,約9cmとなり,Mammoth逆磁極亜期における堆積速度の大幅な低下が見られた.Mammoth逆磁極亜帯はAn155-An157の層準で確認することができ,中島・渡辺 (2005)によると本研究地ではスランプによってAn155-2からAn156-4の層準が浸食され欠如していると報告されている.堆積速度の低下はこれに起因すると考えられる.
今後は,古地磁気測定用サンプルと同層準で採取した岩石試料から有孔虫化石を抽出し,酸素同位体測定から酸素同位体層序を構築,現在までの古地磁気層序と合わせて年代層序の議論を行う予定である.
引用文献
岡田 誠・海鉾匠摩・吉川卓寿, 2013, 安房層群安野層上部における古地磁気層序. 日本地質学会第120年学術大会講演要旨.
中島輝允・渡辺真人, 2005, 富津地域の地質. 地域地質研究報告(5万分の1地質図幅), 産総研地質調査総合センター, 102p.