日本地球惑星科学連合2015年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS30] 遠洋域の進化

2015年5月26日(火) 09:00 〜 10:45 304 (3F)

コンビーナ:*松岡 篤(新潟大学理学部地質科学科)、栗原 敏之(新潟大学大学院自然科学研究科)、加藤 泰浩(東京大学大学院工学系研究科システム創成学専攻)、尾上 哲治(熊本大学大学院自然科学研究科)、木元 克典(独立行政法人海洋研究開発機構)、野崎 達生(海洋研究開発機構地球内部ダイナミクス領域)、植田 勇人(新潟大学理学部地質科学科)、小林 健太(新潟大学理学部地質科学科)、長谷川 卓(金沢大学自然システム学系)、座長:植田 勇人(新潟大学理学部地質科学科)、高橋 聡(東京大学理学系研究科地球惑星科学専攻)

09:30 〜 09:45

[MIS30-03] 秩父帯に産出する層状マンガン堆積物の層序と年代

*冨松 由希1尾上 哲治1 (1.熊本大学大学院自然科学研究科)

キーワード:秩父帯, 放散虫化石層序, マンガン堆積物, 後期三畳紀, 前期ジュラ紀, 大規模火成活動

日本における層状マンガン堆積物(層状マンガン鉱床)は,チャートまたはチャート-緑色岩を母岩としてジュラ紀付加体中に産出する.とくに秩父帯に分布する三畳系-ジュラ系チャート中には多数の層状マンガン堆積物が胚胎されていることが知られている.しかし,これまで広域にわたる個々の層状マンガン堆積物の産状・堆積年代についての詳しい検討は行われていない.そこで本研究では,東九州の秩父帯に分布する7つのマンガン鉱床(田浦・千怒・高浜・久保泊・高平・垣尾・秋元)について,岩相層序および放散虫化石層序に基づいて,層状マンガン堆積物の産状・層序および堆積年代の検討を行った.
調査対象は,東九州秩父帯に分布するチャート中に産する層状マンガン堆積物である. 7つのマンガン鉱床において地質調査を行い,岩相層序を記載した.フッ酸処理によって,層状マンガン堆積物に付随する層状チャートから放散虫化石を抽出し,同定を行った.また,XRFによって,層状マンガン堆積物の化学組成を検討し,その起源の推定を行った.
本研究の結果,層状マンガン堆積物は高平鉱山と高浜鉱山・秋元鉱山において,それぞれ特徴的な産状が認められ,堆積年代が2つの時代に集中してみられることが放散虫化石年代から明らかになった.高平鉱山では,マンガン層準付近の岩相層序は下位から,赤白珪石を伴う塊状チャート,マンガン層準,層状赤色チャートの順に累重することが明らかになった.(本研究では,層状チャート中の特にマンガンが多く含まれる層準を「マンガン層準」と呼ぶことにする.)最上位の層状赤色チャートからはPoulpus carcharus帯に属する放散虫化石が産出し,後期三畳紀の前期にあたる後期Carnianに相当した.一方高浜鉱山,秋元鉱山では,マンガン層準は灰色の層状チャートに挟まれることが明らかになった.高浜鉱山および秋元鉱山のマンガン層準の直上および上位の層状灰色チャートからは,Trillus elkhornensis帯および,Tricolocapsa Plicarum帯に属する放散虫化石が産出し,それぞれ前期ジュラ紀の後期にあたる後期Pliensbachian~Toarcianと,中期ジュラ紀の中期を後期にあたるBajocian~前期Bathonianに相当した.XRFの結果からは,層状マンガン堆積物は,現代の深海底にみられる鉄マンガンクラストのような海成起源のマンガン堆積物と比較すると,熱水起源のマンガン堆積物に近い組成であることが分かった.
以上のことから,東九州に産出する層状マンガン堆積物は,後期Carnianおよび前期ジュラ紀付近に堆積し,その起源はおそらく熱水起源であると考えられる.後期三畳紀(Carnian)にはパンサラサ海において大規模火成活動が起こったこと,そして前期ジュラ紀にはゴンドワナ大陸の分裂に伴う大規模火成活動が起こったことが報告されており,それぞれの活動年代と層状マンガン堆積物の堆積年代が一致する可能性がある.