18:15 〜 19:30
[SSS27-P03] 繰り返し回数が非常に少ない地震系列に対する長期発生予測の成績
キーワード:繰り返し地震, 発生予測, ベイズ定理, 小標本論, 平均対数尤度, Brierスコア
1.はじめに
相似地震(小繰り返し地震)は、プレート境界の小さな固着域の破壊で発生すると考えられている(Igarashi et al., 2003; Uchida et al., 2003)。他の地震との識別が容易で、比較的短期間に繰り返すことから、予測実験にも使用されてきた(Okada et al., 2012)。一方、地震調査委員会が長期評価の対象としている大規模地震や、気象研究所(2014)などが調査した中規模地震では、発生間隔が長く、観測回数が非常に少ないケースが多い。繰り返し回数が非常に少ない地震系列に対する長期的発生確率予測の信頼度を見るために、相似地震を用いて、Bayes統計などで予測した成績がデータ数によってどのように変化するかを調査・検討する。
2.データと予測方法
相似地震のカタログは、東北大学で作成したもので、筆者達が2008年に事前予測の実験に使用したものである。この“2008年予測実験”は、127系列を対象とし、各系列は1993年~予測時点(2008.1.1)に5個以上の相似地震を含み、平均マグニチュードは2.75以上であった。今回は、この実験結果に加え、予測時点(2008.1.1)に近い地震を2個、3個、4個、または5個を抽出したものを用いて、2008年の発生確率を計算し、データ数による成績変化を調べる。
予測方法は、ベイズ統計対数正規分布モデル(LN-Bayes)、小標本論対数正規分布モデル(LN-SST)及び指数分布モデル(Exp-Pin)である(Okada et al., 2012)。指数分布モデルは、データから得られた平均発生間隔をそのまま発生間隔分布のパラメータとして使用するPlug-in方式である。
3.予測成績
予測成績は、2008年に観測された相似地震と比較して求める。平均対数尤度(Mean log-likelihood)およびBrierスコアは表のとおりである。平均対数尤度は大きい方が、Brierスコアは小さい方が優れた予測である。表中の“all”は2008年予測実験の結果であり、他は予測(2008.1.1)直前のイベント(2~5個)のみから発生確率を計算した場合である。LN-SSTでは、発生間隔のデータが1個(イベント2個)のみの場合に発生確率の計算ができない。
いずれの予測方法でも 、予測に使用する地震が少なくなるにつれて、両方のスコア(成績)が悪くなる。しかし、成績悪化はさほど急速ではない。予測方法を成績のよいものから並べると、LN-SST、LN-Bayes、Exp-Pinである。一方、2006年から2010年に実施した4実験全体(528予測)の成績では、LN-SSTとLN-Bayesは同程度であり、優劣はほとんどないと考えられる。Exp-Pinは、成績が最も劣るのが通例である。
なお、データ期間、予測期間、及び平均マグニチュードなどの条件を変更した場合の成績変化についても調査を進めており、連合大会当日にはそれらの結果も紹介する予定である。
Table 1. Number of events and the forecast scores for 2008.
---------------------------------------------------------------------------------------------------------------
Mean log-likelihood Brier score
--------------- --------------------------------------------- ---------------------------------------------
events LN-Bayes LN-SST Exp-Pin LN-Bayes LN-SST Exp-Pin
--------------- --------------------------------------------- ---------------------------------------------
all -0.531 -0.497 -0.638 0.178 0.167 0.223
5 -0.546 -0.511 -0.644 0.182 0.174 0.226
4 -0.566 -0.521 -0.658 0.190 0.176 0.233
3 -0.611 -0.556 -0.675 0.204 0.184 0.240
2 -0.671 - -0.809 0.228 - 0.254
---------------------------------------------------------------------------------------------------------------
・平均対数尤度とBrierスコア
予測発生確率をPとし、該当するイベントが発生したときはEv=1、発生しなかったときはEv=0とする。平均対数尤度は“Ev*log(P)+(1-Ev)*log(1-P) の平均”で、Brierスコアは“(P-Ev)^2 の平均”である。“log”は自然対数。
相似地震(小繰り返し地震)は、プレート境界の小さな固着域の破壊で発生すると考えられている(Igarashi et al., 2003; Uchida et al., 2003)。他の地震との識別が容易で、比較的短期間に繰り返すことから、予測実験にも使用されてきた(Okada et al., 2012)。一方、地震調査委員会が長期評価の対象としている大規模地震や、気象研究所(2014)などが調査した中規模地震では、発生間隔が長く、観測回数が非常に少ないケースが多い。繰り返し回数が非常に少ない地震系列に対する長期的発生確率予測の信頼度を見るために、相似地震を用いて、Bayes統計などで予測した成績がデータ数によってどのように変化するかを調査・検討する。
2.データと予測方法
相似地震のカタログは、東北大学で作成したもので、筆者達が2008年に事前予測の実験に使用したものである。この“2008年予測実験”は、127系列を対象とし、各系列は1993年~予測時点(2008.1.1)に5個以上の相似地震を含み、平均マグニチュードは2.75以上であった。今回は、この実験結果に加え、予測時点(2008.1.1)に近い地震を2個、3個、4個、または5個を抽出したものを用いて、2008年の発生確率を計算し、データ数による成績変化を調べる。
予測方法は、ベイズ統計対数正規分布モデル(LN-Bayes)、小標本論対数正規分布モデル(LN-SST)及び指数分布モデル(Exp-Pin)である(Okada et al., 2012)。指数分布モデルは、データから得られた平均発生間隔をそのまま発生間隔分布のパラメータとして使用するPlug-in方式である。
3.予測成績
予測成績は、2008年に観測された相似地震と比較して求める。平均対数尤度(Mean log-likelihood)およびBrierスコアは表のとおりである。平均対数尤度は大きい方が、Brierスコアは小さい方が優れた予測である。表中の“all”は2008年予測実験の結果であり、他は予測(2008.1.1)直前のイベント(2~5個)のみから発生確率を計算した場合である。LN-SSTでは、発生間隔のデータが1個(イベント2個)のみの場合に発生確率の計算ができない。
いずれの予測方法でも 、予測に使用する地震が少なくなるにつれて、両方のスコア(成績)が悪くなる。しかし、成績悪化はさほど急速ではない。予測方法を成績のよいものから並べると、LN-SST、LN-Bayes、Exp-Pinである。一方、2006年から2010年に実施した4実験全体(528予測)の成績では、LN-SSTとLN-Bayesは同程度であり、優劣はほとんどないと考えられる。Exp-Pinは、成績が最も劣るのが通例である。
なお、データ期間、予測期間、及び平均マグニチュードなどの条件を変更した場合の成績変化についても調査を進めており、連合大会当日にはそれらの結果も紹介する予定である。
Table 1. Number of events and the forecast scores for 2008.
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Mean log-likelihood Brier score
--------------- --------------------------------------------- ---------------------------------------------
events LN-Bayes LN-SST Exp-Pin LN-Bayes LN-SST Exp-Pin
--------------- --------------------------------------------- ---------------------------------------------
all -0.531 -0.497 -0.638 0.178 0.167 0.223
5 -0.546 -0.511 -0.644 0.182 0.174 0.226
4 -0.566 -0.521 -0.658 0.190 0.176 0.233
3 -0.611 -0.556 -0.675 0.204 0.184 0.240
2 -0.671 - -0.809 0.228 - 0.254
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・平均対数尤度とBrierスコア
予測発生確率をPとし、該当するイベントが発生したときはEv=1、発生しなかったときはEv=0とする。平均対数尤度は“Ev*log(P)+(1-Ev)*log(1-P) の平均”で、Brierスコアは“(P-Ev)^2 の平均”である。“log”は自然対数。