日本地球惑星科学連合2015年大会

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セッション記号 A (大気水圏科学) » A-HW 水文・陸水・地下水学・水環境

[A-HW25] 都市域の地下水・環境地質

2015年5月27日(水) 18:15 〜 19:30 コンベンションホール (2F)

コンビーナ:*安原 正也(独立行政法人 産業技術総合研究所)、林 武司(秋田大学教育文化学部)、浅田 素之(清水建設株式会社)、滝沢 智(東京大学大学院工学系研究科都市工学専攻)、鈴木 弘明(日本工営株式会社 中央研究所 総合技術開発部)、西田 継(山梨大学大学院医学工学総合研究部)

18:15 〜 19:30

[AHW25-P05] 東京・石神井川流域の浅層地下水中の硝酸ならびに硫酸イオンの起源について

*安原 正也1稲村 明彦1中村 高志2林 武司3浅井 和由4 (1.(独)産業技術総合研究所地質調査総合センター、2.山梨大学、3.秋田大学、4.(株)地球科学研究所)

キーワード:都市の地下水, 硝酸イオン, 硫酸イオン, 起源, 同位体

東京都小平市に源を発し武蔵野台地を東流する石神井川は,その流域に小平市,西東京市,練馬区,板橋区,豊島区,北区を含む典型的な都市河川である.石神井川流域の市街地面積率は1993年時点ですでに87%であり(東京都,2006),特に下流部に位置する板橋区,豊島区,北区ではいち早く都市化が進行し,現在はその大部分が不透水性の地表面によって覆われている.また,下水道普及率は約20年前に流域全体で100%に達している.同流域の浅層地下水は段丘礫層もしくはその上位の関東ローム層中に存在しており,CFCsやSF6に基づく推定によると水の平均滞留時間は数年以内,最大でも15年程度である.
 このような石神井川流域の現在の浅層地下水中には,関東平野の畑作地域の地下水と同程度,あるいはそれ以上の多量の硝酸イオンと硫酸イオンが含まれていることが明らかになっている(安原ほか,2011;2013).また,両イオンの濃度は下流域にあたる都区部で高く,上流に向かって値が低下する傾向が認められる.さらに,小平市や西東京市では地域内で濃度が比較的均一であるのに対して,下流域に位置する板橋区,豊島区,北区では濃度に著しい地域性(mg/L単位で2オーダーの差)が認められる.
 浅層地下水中に含まれる高濃度の硝酸イオンと硫酸イオンの起源としては,1)現在の農業活動や公園等の緑地管理に伴う施肥,2)過去の農業活動や家庭雑排水処理の影響(過去の汚染物質が現在も地中に残存),3)下水漏水,4)水道漏水(硫酸イオンについてのみ),5)関東ローム層からの溶出(硫酸イオンについてのみ)などが考えられる.石神井川流域における硝酸イオンと硫酸イオンの起源と地下水汚染プロセスを明らかにするために,今回は練馬区の畑作農家が一般的に使用している化学肥料3種と有機肥料1種を含む肥料10銘柄,洗濯洗剤10銘柄,食器用洗剤2銘柄,シャンプー・浴室用洗剤2銘柄について,それぞれの同位体比delta-15N・delta-18O(硝酸イオン)とdelta-34S(硫酸イオン)を測定した.同位体比の測定値を地下水と比較・検討した結果,石神井川流域の硝酸イオンと硫酸イオンの起源として,高いdelta-15N・delta-18O,delta-34S値を有するエンドメンバー(たとえば,下水漏水,現在の畑地等で使用されている有機肥料,過去に地中浸透処理され現在も土壌中に残存している家庭汚水)の役割が重要であることが明らかとなった.一部測定は現在進行中であるが,発表当日にはこれらの測定結果を提示するとともに,石神井川流域の地下水汚染プロセスについて同位体的に検討した結果をさらに詳しく紹介する予定である.