18:15 〜 19:30
[MIS31-P03] 原子間力顕微鏡によるbariteの結晶成長その場観察
キーワード:結晶成長, バライト, 原子間力顕微鏡, 二次元核, スパイラル成長
bariteは様々な地質学的環境に分布する最も豊富なBa鉱物で、その溶解と沈殿作用は地球の表層水におけるBaの地球化学的サイクルをコントロールする。また、bariteの成長・溶解は、Baイオンとイオン半径および電気陰性度の類似性を持つ放射性元素であるRaイオンの挙動にも影響を及ぼす。bariteは、また、主要なスケール鉱物であり、水に対するその著しい低溶解度(Ksp = 10-9.99 at 25℃)のため、石油、ガス、水などの生産システムにとってやっかいな鉱物である。このようにbarite溶解と結晶成長に関する反応過程や機構、あるいは諸問題を明らかにすることは最新の重要課題の一つである。これらの重要性を踏まえて、我々はこれまで、原子間力顕微鏡(AFM)その場観察法を用いたbariteの”溶解”現象に関する研究を進めてきた。これに対し、bariteの“結晶成長”に関する研究は、我々を含め世界的に見ても報告例が極めて少ない。AFMその場観察法を用いる際、反応速度が比較的遅い“溶解”実験に比べより速い“結晶成長”実験の方が難しいということも、これらに関する研究が進んでいない理由の一つに挙げられるだろう。そこで、我々は、barite(001)表面で起こる結晶成長のAFMその場観察を試みた。ここでは、これまでに得られた結果を報告する
barite試料は、アメリカ・コロラド州ストーンヘム鉱床産で、やや青みがかった透明の結晶である。AFM実験開始直前にナイフで新たな(001)劈開面を露出させ、AFM試料台に固定した。BaSO4過飽和溶液もまた、AFM観察直前に、分析用高純度Na2SO4 およびBa(NO3)2 試薬と純水により調整した。過飽和度とイオン強度は、プログロムソフトPHREEQCにより計算した。 AFM観察は、Digital Instruments社製のMultimode SPMユニットを搭載したNanoscope IIIで行った。結晶成長実験は Bruker AXS社製のair/fluid heater (Bio-Heater)を搭載した液中セルを用いてフロースルー法で行い、溶液をシリンジポンプで約0.6 ml/hの流速で流した。実験温度は25℃で、温度制御はBio-HeaterとThermal Applications Controllerで行い、また、液中セル内にセットした熱電対温度計(Cole Parmer社製)で溶液温度を監視した。走査法はコンタクト・モードを用い、カンチレバーはSi3N4製、スキャナーはJ-headを用い、走査速度は2?4 Hzを選択した。なお、安定したAFM走査環境を確保し信頼性のあるAFM像を得るために、まず、液中セルに純水を注入しbarite結晶と反応させながら観察を開始し、その後、液中セル中の純水をBaSO4溶液と入れ替え結晶成長の観察を行った。
過飽和度S = 3.5でのbarite(001)表面の結晶成長現象は、初期ステップの前進とBaSO4過飽和溶液を注入する前の純水との反応で形成されたエッチピットを埋めることによって始まるが、二次元核形成などその他の現象は観察されなかった。ステップの前線は、やや不規則で湾曲状の形状を示す。より高い過飽和度(> S = 13.2)の実験では、同様に、まず、初期ステップの前進とエッチピットを埋めることによって始まる。その後僅かに遅れて、扇形状の二次元核が形成され始める。その扇形状二次元核は、[120]と[1-20]方向に平衡な半層ステップと[010]方向に湾曲したステップで形作られる。湾曲ステップは[120]ステップの約5倍の前進速度を示した。barite(001)表面上で観察されるその他の成長現象には、剣状の成長棚、成長丘、および、成長スパイラルの形成があげられる。剣状の成長棚は、複数層からなるステップのキンクあるいはフォールト部で、[010]方向に伸びるように形成される。成長丘と成長スパイラルもまた、弓状の形態を示しながら[010]方向に伸びる。今回観察された成長丘と成長スパイラルの形態は、(成長と溶解の違いはあるが)室温でのNaCl溶液中、あるいは、60℃での純水中で形成されたエッチピットの形態と類似していた。
barite試料は、アメリカ・コロラド州ストーンヘム鉱床産で、やや青みがかった透明の結晶である。AFM実験開始直前にナイフで新たな(001)劈開面を露出させ、AFM試料台に固定した。BaSO4過飽和溶液もまた、AFM観察直前に、分析用高純度Na2SO4 およびBa(NO3)2 試薬と純水により調整した。過飽和度とイオン強度は、プログロムソフトPHREEQCにより計算した。 AFM観察は、Digital Instruments社製のMultimode SPMユニットを搭載したNanoscope IIIで行った。結晶成長実験は Bruker AXS社製のair/fluid heater (Bio-Heater)を搭載した液中セルを用いてフロースルー法で行い、溶液をシリンジポンプで約0.6 ml/hの流速で流した。実験温度は25℃で、温度制御はBio-HeaterとThermal Applications Controllerで行い、また、液中セル内にセットした熱電対温度計(Cole Parmer社製)で溶液温度を監視した。走査法はコンタクト・モードを用い、カンチレバーはSi3N4製、スキャナーはJ-headを用い、走査速度は2?4 Hzを選択した。なお、安定したAFM走査環境を確保し信頼性のあるAFM像を得るために、まず、液中セルに純水を注入しbarite結晶と反応させながら観察を開始し、その後、液中セル中の純水をBaSO4溶液と入れ替え結晶成長の観察を行った。
過飽和度S = 3.5でのbarite(001)表面の結晶成長現象は、初期ステップの前進とBaSO4過飽和溶液を注入する前の純水との反応で形成されたエッチピットを埋めることによって始まるが、二次元核形成などその他の現象は観察されなかった。ステップの前線は、やや不規則で湾曲状の形状を示す。より高い過飽和度(> S = 13.2)の実験では、同様に、まず、初期ステップの前進とエッチピットを埋めることによって始まる。その後僅かに遅れて、扇形状の二次元核が形成され始める。その扇形状二次元核は、[120]と[1-20]方向に平衡な半層ステップと[010]方向に湾曲したステップで形作られる。湾曲ステップは[120]ステップの約5倍の前進速度を示した。barite(001)表面上で観察されるその他の成長現象には、剣状の成長棚、成長丘、および、成長スパイラルの形成があげられる。剣状の成長棚は、複数層からなるステップのキンクあるいはフォールト部で、[010]方向に伸びるように形成される。成長丘と成長スパイラルもまた、弓状の形態を示しながら[010]方向に伸びる。今回観察された成長丘と成長スパイラルの形態は、(成長と溶解の違いはあるが)室温でのNaCl溶液中、あるいは、60℃での純水中で形成されたエッチピットの形態と類似していた。