17:42 〜 17:45
[BAO01-P06] 粒子線照射により模擬星間物質から生成するアミノ酸前駆体の分析
ポスター講演3分口頭発表枠
[緒言] 生命の誕生のためにアミノ酸などの有機物は必要不可欠である。1953年にミラーは還元型の原始地球大気を模擬したCH4, NH3, H2, H2Oの混合ガスに真空放電を行い, アミノ酸が生成することを発見した。しかし, 現在では原始地球大気はCO, CO2, N2, H2Oなどからなる弱還元型大気であると考えられており, 放電や紫外線によるエネルギーが与えられても生体関連有機物の生成は困難であると考えられている。そこで地球圏外から有機物が導入された可能性が検討されている。現在,隕石や彗星中には多様な有機物の存在が示唆されている。これらの有機物の起源は,分子雲中のH2O, CO, CH3OH, CH4, NH3などの種々の分子を含む星間塵アイスマントルに宇宙線や紫外線などが作用して生成したと考えられている。我々は模擬星間物質に粒子線を照射した場合,アミノ酸前駆体が生成することを報告している。しかし生成する有機物の生成機構や,構造の詳細は解明されていない。本研究では出発物の組成を変化させたときの生成物やエネルギー収率を調べることでアミノ酸前駆体の生成機構について検討を行った。
[実験] 陽子線照射:容積約400 mLのPyrex製容器にCOとCH4の混合ガス(350 Torr, CO:CH4 = 1:0, 6:1, 2:1, 1:1, 1:2 ), NH3 (350 Torr)を入れたものを作製し,超純水5.0 mLをそれぞれ加えた。COのみを用いたものは, そのほかに水を入れないもの, 13COを原料に用いたものも作製した。これらに対し東工大のタンデム加速器から2.5 MeVの陽子線を2 mC照射した(総吸収エネルギーは3.16 kJ)。生成物は原料にメタンを含まず水を含むものをCAW, 水を含まないものをCA, メタンを含むものをCMAW x:yと呼ぶ。CAWとCMAW 1:1は酸加水分解前後のアミノ酸を, その他は酸加水分解後のアミノ酸を陽イオン交換HPLCで分析した。またCA, CAW, CMAW1:1に対しては構造解析のためFT-IRを用いた分析を行った。
重粒子線照射:Pyrex製容器にCH3OH, NH3, H2Oをモル比1:1:2.8になるように入れて封管し,放医研のHIMAC重粒子線加速器からの重粒子線を様々な線種 (290 MeV/u 炭素線など), 照射線量で照射した。また, CH3OHの濃度を統一してNH3の濃度を変化させたもの(C:N = 1:1, 2:1, 4:1, 10:1)を作製し, 炭素線を照射した。照射生成物は酸加水分解後,陽イオン交換HPLCでアミノ酸を分析した。
[結果と考察] 陽子線照射:酸加水分解前のCAW, CMAW1:1からは微量のアミノ酸しか検出されなかったが,酸加水分解後はどのサンプルにおいても様々なアミノ酸が高収率で検出された。CAW(加水分解後)からはGlyが76 pmolと他のアミノ酸と比較して極めて多く検出された。CMAW(加水分解後)ではどの組成においてもGlyの収量は3.5 〜 10.9 μmolとCAWの1/10程度となったが, Alaの生成量が8.2 〜 25.1 μmolとGlyよりも多く生成し,アミノ酪酸類やValなどのより炭素数の多いアミノ酸の収量が増加した。GlyとAlaの生成量はCOの量が多いほど多くなった。一方でCH4が入っていればCH4の量が変化してもGlyとAlaの生成量の比は1:2〜2.5と大きな差がみられなかった。以上からCOがアミノ酸骨格の生成に大きく寄与したことが分かり, CH4がアミノ酸側鎖の伸長に寄与したことが考えられる。
FT-IRでの測定の結果, CMAWは炭化水素鎖を持つ化合物ができやすいと考えられる。またCA, CAWにも見られるアミド基のC=Oのピークに加え, CMAWにはカルボン酸, エステルのC=Oに対するピークも確認でき, Nを含まない化合物も多く生成していることが推測される。
重粒子線照射:重粒子線照射試料(加水分解後)からもグリシンを主としたアミノ酸が検出されたが,グリシンのG値は10-4〜10-3オーダーで,陽子線照射実験よりも低かった。サンプル中のアンモニアの比が小さくなるほどアミノ酸の収率は低下した。
[今後の展望] 現在,照射条件を実際の星間環境に近づけた照射実験を計画中である。また, LC-MSでのアミノ酸前駆体の構造調査を行う予定である。
[実験] 陽子線照射:容積約400 mLのPyrex製容器にCOとCH4の混合ガス(350 Torr, CO:CH4 = 1:0, 6:1, 2:1, 1:1, 1:2 ), NH3 (350 Torr)を入れたものを作製し,超純水5.0 mLをそれぞれ加えた。COのみを用いたものは, そのほかに水を入れないもの, 13COを原料に用いたものも作製した。これらに対し東工大のタンデム加速器から2.5 MeVの陽子線を2 mC照射した(総吸収エネルギーは3.16 kJ)。生成物は原料にメタンを含まず水を含むものをCAW, 水を含まないものをCA, メタンを含むものをCMAW x:yと呼ぶ。CAWとCMAW 1:1は酸加水分解前後のアミノ酸を, その他は酸加水分解後のアミノ酸を陽イオン交換HPLCで分析した。またCA, CAW, CMAW1:1に対しては構造解析のためFT-IRを用いた分析を行った。
重粒子線照射:Pyrex製容器にCH3OH, NH3, H2Oをモル比1:1:2.8になるように入れて封管し,放医研のHIMAC重粒子線加速器からの重粒子線を様々な線種 (290 MeV/u 炭素線など), 照射線量で照射した。また, CH3OHの濃度を統一してNH3の濃度を変化させたもの(C:N = 1:1, 2:1, 4:1, 10:1)を作製し, 炭素線を照射した。照射生成物は酸加水分解後,陽イオン交換HPLCでアミノ酸を分析した。
[結果と考察] 陽子線照射:酸加水分解前のCAW, CMAW1:1からは微量のアミノ酸しか検出されなかったが,酸加水分解後はどのサンプルにおいても様々なアミノ酸が高収率で検出された。CAW(加水分解後)からはGlyが76 pmolと他のアミノ酸と比較して極めて多く検出された。CMAW(加水分解後)ではどの組成においてもGlyの収量は3.5 〜 10.9 μmolとCAWの1/10程度となったが, Alaの生成量が8.2 〜 25.1 μmolとGlyよりも多く生成し,アミノ酪酸類やValなどのより炭素数の多いアミノ酸の収量が増加した。GlyとAlaの生成量はCOの量が多いほど多くなった。一方でCH4が入っていればCH4の量が変化してもGlyとAlaの生成量の比は1:2〜2.5と大きな差がみられなかった。以上からCOがアミノ酸骨格の生成に大きく寄与したことが分かり, CH4がアミノ酸側鎖の伸長に寄与したことが考えられる。
FT-IRでの測定の結果, CMAWは炭化水素鎖を持つ化合物ができやすいと考えられる。またCA, CAWにも見られるアミド基のC=Oのピークに加え, CMAWにはカルボン酸, エステルのC=Oに対するピークも確認でき, Nを含まない化合物も多く生成していることが推測される。
重粒子線照射:重粒子線照射試料(加水分解後)からもグリシンを主としたアミノ酸が検出されたが,グリシンのG値は10-4〜10-3オーダーで,陽子線照射実験よりも低かった。サンプル中のアンモニアの比が小さくなるほどアミノ酸の収率は低下した。
[今後の展望] 現在,照射条件を実際の星間環境に近づけた照射実験を計画中である。また, LC-MSでのアミノ酸前駆体の構造調査を行う予定である。