10:15 〜 10:45
★ [U04-03] 月と火星の縦孔・地下空洞探査
キーワード:月, 火星, 縦孔, 地下空洞, 生命探査, うずめ
月には、通常の隕石衝突痕クレータより、直径に比して深い縦孔が存在する。月においては、2007年に日本が打ち上げた月探査機SELENE(かぐや)に搭載された地形カメラが、数10m直径・深さを持つ縦孔を初めて発見し、その後、米国LRO搭載カメラで新たにも発見されている火星においても、月の縦孔に類似した縦孔が、アルシア山の麓などに見られる。これらの多くは溶岩チューブか、マグマ溜まりなどの火成活動に起因する地下空洞に開いた孔だと考えられる。
地球惑星生命科学研究にとって、月火星の縦孔・地下空洞構造探査は、多くの情報をもたらす。直接的に言えば、まずは、火星地下空洞探査における生命発見の可能性である。現在の火星表面は、太陽紫外線照射量が多く、生命が生存を図るには非常に困難な環境である。しかしながら、火星地下空洞内は、紫外線・放射線照射から免れており、生命前駆体分子が成長をとげることができる環境を与えている。火山性地域であることから地熱もおおいに期待出来る。溶岩チューブ形成終焉期においては、チューブ内部を通る溶岩流の終了とともにチューブ内部は急冷し、ガラス質皮膜が覆う。そのため、チューブ内は密閉性の高い空間となる。このことから、火星の溶岩チューブ内に過去において水が選択的に流れたことは容易に想像される。アルシア山を含むタルシス山々の東には、マリネリス峡谷が在り、その西端、アルシア山から見れば東端には、現代においても水が流れたとおぼしきRSLが見られる。すなわち、この地域の地下には現在でも地下における水の存在が期待される。この地域の水が溶岩チューブ内に、常に、とは言えずとも、突発的に供給されている可能性は高いだろう。こうした環境から考えて、火星の溶岩チューブ内には、生命が、現在はともかく、少なくとも過去において、発現し、進化を遂げたことが期待される。チューブには幸い孔が開いている箇所をもつものがあり、そこを通して、そうした地下空洞へとアクセスが可能である。
月の縦孔・地下空洞の探査は、火星の縦孔・地下空洞内における生命探査のための科学的知見(実際に溶岩チューブなのか、どのような形状、環境なのか)を得、また、技術を高めることに資される。一方で、月の縦孔・地下空洞の探査は、他にも地球惑星生命科学研究に大いに資するデータをもたらす。それは、月の縦孔・地下空洞が特異な環境であることに関係する。月の縦孔・地下空洞は、地球生命の発現と進化にとって重要な因子であったであろう月-地球系への物質供給を知ることができる特異な場所なのである。天体の衝突は、月、そして地球の進化における、最大級の影響因子である。月は過去の衝突履歴を残すことで、その探査の意義は大きいわけだが、月の縦孔の壁に見られる露頭、地下の空洞内の壁や床は、新鮮なままであり、そこに、月-地球系への物質の供給(水等揮発性物質の存在、同位体調査)や、過去の太陽活動(捕獲太陽風物質調査)の情報を得ることができる。また、月の縦孔・地下空洞は、月の内部構造の調査に最適な場所という点で、地球生命科学の研究に重要な情報を与える。月のような大型衛星は、主惑星に強い潮汐力を働かせ、主惑星の進化、生命の発現に大きな影響を与えた可能性がある。この観点から、潮汐力がどの時点でどのように働いたかを知ることが重要だが、それには、月の内部構造、その形成初期から今日に至るまでの進化の過程を知る必要がある。縦孔底や、地下空洞内は、熱的に静謐な環境であり、そこにおいて、秤動・月震観測、温度、熱流量観測等を行えば、内部層構造、地下の放射線物質量を制約できる譲歩を得ることができよう。更に、縦孔壁露頭における磁場の計測は、過去のダイナモ磁場発生の有無の証拠を与え、内部進化に対しての強い制約を与えるであろう。SELENEが発見した3つの縦孔のうち、表側の1つは、マリウス丘にあり、PKT領域の研究として最適な場所の一つであろう。また、静の海は、PKT領域の外縁部であるが、PKT中央部と同様にチタンに富む場所であり、内部構造の進化の理解に、研究が欠かせない場所である。 このように、月と火星の縦孔・地下空洞は、地球惑星生命科学の研究を大いに進展させる情報を秘めていると考えられる。我々は、現在、月と火星の縦孔・地下空洞を探査することを目指し、UZUME(Unprecedented Zipangu Underworld of the Moon/Mars Exploration:古今未曾有の日本の月/火星地下世界探査)計画と名付けた活動を開始している。平成26年度は、宇宙工学委員会のもとのリサーチグループとして、ミッション構想、探査システム構想を検討してきている。今後、更に、研究・検討を進め、プロジェクト化へと進もうとしている。
地球惑星生命科学研究にとって、月火星の縦孔・地下空洞構造探査は、多くの情報をもたらす。直接的に言えば、まずは、火星地下空洞探査における生命発見の可能性である。現在の火星表面は、太陽紫外線照射量が多く、生命が生存を図るには非常に困難な環境である。しかしながら、火星地下空洞内は、紫外線・放射線照射から免れており、生命前駆体分子が成長をとげることができる環境を与えている。火山性地域であることから地熱もおおいに期待出来る。溶岩チューブ形成終焉期においては、チューブ内部を通る溶岩流の終了とともにチューブ内部は急冷し、ガラス質皮膜が覆う。そのため、チューブ内は密閉性の高い空間となる。このことから、火星の溶岩チューブ内に過去において水が選択的に流れたことは容易に想像される。アルシア山を含むタルシス山々の東には、マリネリス峡谷が在り、その西端、アルシア山から見れば東端には、現代においても水が流れたとおぼしきRSLが見られる。すなわち、この地域の地下には現在でも地下における水の存在が期待される。この地域の水が溶岩チューブ内に、常に、とは言えずとも、突発的に供給されている可能性は高いだろう。こうした環境から考えて、火星の溶岩チューブ内には、生命が、現在はともかく、少なくとも過去において、発現し、進化を遂げたことが期待される。チューブには幸い孔が開いている箇所をもつものがあり、そこを通して、そうした地下空洞へとアクセスが可能である。
月の縦孔・地下空洞の探査は、火星の縦孔・地下空洞内における生命探査のための科学的知見(実際に溶岩チューブなのか、どのような形状、環境なのか)を得、また、技術を高めることに資される。一方で、月の縦孔・地下空洞の探査は、他にも地球惑星生命科学研究に大いに資するデータをもたらす。それは、月の縦孔・地下空洞が特異な環境であることに関係する。月の縦孔・地下空洞は、地球生命の発現と進化にとって重要な因子であったであろう月-地球系への物質供給を知ることができる特異な場所なのである。天体の衝突は、月、そして地球の進化における、最大級の影響因子である。月は過去の衝突履歴を残すことで、その探査の意義は大きいわけだが、月の縦孔の壁に見られる露頭、地下の空洞内の壁や床は、新鮮なままであり、そこに、月-地球系への物質の供給(水等揮発性物質の存在、同位体調査)や、過去の太陽活動(捕獲太陽風物質調査)の情報を得ることができる。また、月の縦孔・地下空洞は、月の内部構造の調査に最適な場所という点で、地球生命科学の研究に重要な情報を与える。月のような大型衛星は、主惑星に強い潮汐力を働かせ、主惑星の進化、生命の発現に大きな影響を与えた可能性がある。この観点から、潮汐力がどの時点でどのように働いたかを知ることが重要だが、それには、月の内部構造、その形成初期から今日に至るまでの進化の過程を知る必要がある。縦孔底や、地下空洞内は、熱的に静謐な環境であり、そこにおいて、秤動・月震観測、温度、熱流量観測等を行えば、内部層構造、地下の放射線物質量を制約できる譲歩を得ることができよう。更に、縦孔壁露頭における磁場の計測は、過去のダイナモ磁場発生の有無の証拠を与え、内部進化に対しての強い制約を与えるであろう。SELENEが発見した3つの縦孔のうち、表側の1つは、マリウス丘にあり、PKT領域の研究として最適な場所の一つであろう。また、静の海は、PKT領域の外縁部であるが、PKT中央部と同様にチタンに富む場所であり、内部構造の進化の理解に、研究が欠かせない場所である。 このように、月と火星の縦孔・地下空洞は、地球惑星生命科学の研究を大いに進展させる情報を秘めていると考えられる。我々は、現在、月と火星の縦孔・地下空洞を探査することを目指し、UZUME(Unprecedented Zipangu Underworld of the Moon/Mars Exploration:古今未曾有の日本の月/火星地下世界探査)計画と名付けた活動を開始している。平成26年度は、宇宙工学委員会のもとのリサーチグループとして、ミッション構想、探査システム構想を検討してきている。今後、更に、研究・検討を進め、プロジェクト化へと進もうとしている。